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69gogoさんのマガツバライの長文感想

ユーザー
69gogo
ゲーム
マガツバライ
ブランド
light
得点
30
参照数
636

一言コメント

色々な意味でlightなシルヴァリオ呪術廻戦

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

light完全新作と銘打ってお出しされたビジュアルや紹介文を見て、まず受けた印象は「既視感の塊」というのが偽らざる感想だった。
元ネタは言うまでもなく、今をときめく劇場版も大ヒット中なあの人気少年漫画。
ただ蓋を開けてみた内容はあちらほど尖ったキャラもおらず、ダークな絶望感やおどろおどろしさもない明るくライトなもの。なるほどlightなだけに原点回帰か(やかましいわ)というわけでもないのだろうが。

個人的に残念な点は、まず世界観だ。和風伝奇の深みを期待させる神道や仏教をモチーフに使いながら、能力の設定を過去作であるシルヴァリオシリーズと使い回すというハリボテ具合にがっかり。そしてそうでありながら、劇中でその過去作のパロディを作中人気ゲームとして大々的に扱ってしまっている節度の無さ(ため息)。これでは主人公とラスボスがゲーム由来の技で闘うというコロコロコミックや遊戯王なんかのホビー系バトルマンガのような珍図式になってしまう。
三部作で完結した前シリーズの設定を未練がましく引きずるのもどうかとは思うが、それをやるならお寒いソシャゲパロディはやるべきではなかったのではないだろうか(戦神館で激寒なディエス格ゲーパロをやった正田崇も、その線引きはしっかりわきまえていた)。

もう一点の残念ポイントは主人公。晴れ渡った青空のようなマガツバライの体現者たるこの石動隼人なのだが、特に理由もなくいいヤツというだけで、言動を下支えするバックボーンとなるべきエピソードや掘り下げが最後までない。前作シルヴァリオラグナロクのラグナもそうだったが、そのため吠える綺麗事に説得力がなく勝つことに対してご都合主義が感じられてしまう。このラインで過去一薄っぺらい主人公なのではないだろうか。作風をライトにした割を一番食っているという印象。対するラスボスである土御門羅睺も、これまた特に理由なき絶対悪という感じでお似合いのカップルではある。

NSというハードで出した裏事情については、服部氏のインタビューを読んでも当初エロゲープラットフォームで作りながら全年齢コンシューマに変えた理由はよくわからなかった。まさか月姫が売れたのにあやかって、とかだったら一周回って面白すぎるのだが。
そもそもジャンル自体が限られた層しか買わないマニアックなものなのに、その中で万人向けの軽さを目指すことにどれほどの意味があるのだろうか。あるいは、そういう本質の見えてなさもこのブランドらしいと言えばらしいのか。知らんけど。