(GiveUp) 凡庸すぎる展開、立ち絵の違和感に耐えきれずプレイ放棄。
とある学園の天文部を舞台にした、一夏の物語。
まずシナリオに関してだが、文章力云々というより純粋に話が面白くない。
「青春すぎて死にたくなるADV」というあざとい謳い文句を掲げるのなら、それに釣り合ったもう少し魅力的な話作りで青春の素晴らしさを感じさせてほしかった。
だがこの作品はどうやら、そうした「あざとさ」を意図的に切り離して作られているらしい。この時点で既にチグハグ感が漂っているわけなのだが・・・
「青春の悩みは当事者にとって大きな問題でも、客観的にはスケールが小さいもの」ということを言いたいらしいが、であれば拡大鏡のごとき繊細な視点やビビッドな心理描写で「小さな、しかし当事者にとっては大事な日常」の煌めくような瞬間を切り取ってみせたり、陳腐な展開でもそれを唸るような名台詞や秀逸なテキストで表現するなどの、スケールの小ささを補って余りある「工夫」が必要だったのではないだろうか。
だが「小さな問題」を魅力的に描くのに必須な、密度ある描写やリアルな世界観はなく、用意されたのは妙にテンプレなエロゲ的世界観・ノリと淡白なテキストのみ。これでは薄いだけでなんの面白みもない、ただの凡作という印象しか残るはずもない。
はっきり言って、「本当の青春ってこんなものですよ~」とでも言いたげな作り手の姿勢は、凡庸なシナリオを正当化するための免罪符としか受取れなかった。よしんばそうでなかったとしても、あまりに工夫が足りな過ぎる。公式サイトの「僕らの主張」という漫画内でライターを投影したキャラが「大ネタを使えば盛り上げるのは簡単なんだけどね~これって一種の挑戦だよね~」みたいなことをドヤ顔で言っているが、はっきり言ってお笑い草。
また絵に関してなのだが、癖の強いのはともかく立ち絵に漂いまくる違和感はどうにかならなかったのだろうか。
身体のラインに密着したエロゲ制服ではなく、胸などの起伏で布地が身体から浮いているというリアル寄りの表現を狙ったのだろうが、そもそもキャラの等身がリアル寄りではないので全然合っていない。端的に言って、服が身体から浮いた横幅でヒロインが寸胴のデブに見えてしまうだけ。
これもシナリオ同様「等身大のリアルな青春っぽさ」を狙ったのだろうが、やはり工夫が足りずただの「崩れた立ち絵」に終わってしまっている。
制作者のやりたいことは(それが面白いかどうかは別として)伝わってきたが、それを印象深い名作佳作に仕立て上げるには原画・ライターともに実力不足。
原画が姉妹ブランド(?)の「水平線まで何マイル」で人気を博した深崎暮人であるか、ライターが学生キャラの日常を面白く書くことに定評がある丸戸史明あたりであったならば、あるいは評価も違っていたかもしれない。