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4getaさんのできない私が、くり返す。の長文感想

ユーザー
4geta
ゲーム
できない私が、くり返す。
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
81
参照数
760

一言コメント

本当にいいお話

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【得点詳細】
シナリオ:40/50
キャラクター:12/20
雰囲気・世界観:8/10
グラフィック・BGM:8/10
エロ:3/5
システム・環境:2/5 
その他加点(+α):8/10
合計:81点

予備知識無しの状態から、店頭にて購入してプレイ。
未喜→ゆめ→藍里→詩乃の順に攻略した。
基本的に本筋である詩乃ルートはオマケのような位置づけであり、
当の詩乃ルート以外では、詩乃の死というのもかなり軽い感じの描写で終わる(藍里ルートだけは多少その表現はされていたが)。
ゆえ、作品としての本筋とは大きく乖離し、特にゆめルートは超展開(悪い意味で)。
ついでに、キャラの個別ルートに入ったとたん、その他のキャラがほぼ全員フェードアウトしていくという、
ある意味古き良きエロゲ特有とも言えるお決まりの展開も、登場キャラクターが少ない仕様により際立っていたように感じた。

ということで、
詩乃ルートをプレイする前は、ごくありふれたエロゲという印象だったが、
プレイしてみるとさすがメインヒロインとだけあって、他の3人とはシナリオに対する力の入れ方が明らかに違うことがよくわかった。
ただヒロインを死なせて終わり、という形であれば、他の3人と同様の評価となっただろう。

まず、1回目の詩乃ルート。
7つの願いを叶えるために行動する二人は、切なくとも微笑ましい展開のもとで物語が進むも、
ここぞとない場面で、詩乃は陸が「自分自身を見ていないこと」、「漣の影ばかりを追っていること」を指摘する。
結局詩乃は何一つ救われず、陸自身もただの自己満足のためでしかなかったことに深く傷つく、という最悪のエンディングは見事であり鳥肌が立った。

2回目Re:Call、てっきり医療の道を目指し、超・ご都合主義的ハッピーエンドの展開の持っていくかと思えば、そうはならなかった。
過去に戻って明かされたのは、漣が経験していた理不尽と、巻き戻しても変えようのない現実だけ。
結果は変わらなくても、過程を変えることはできる。
詩乃がガンで死ぬという現実は代えられなくても、死を迎えるまでの道筋は変えることができる。
Re:Callでの詩乃は未来を口にするようなり、本当の「7つめの願い」も明かされ、陸は変えようのない現実が待ち構えていても必死に闘い、気がつけばラストまで通しプレイをしていた。
変わらなかった現実でも、確かにそれは「ハッピーエンド」だった。

細部で見れば、いろいろと謎な部分(特に時間の巻き戻しに関して)は確かにある。
何をもって「変わらない」とするかについても人それぞれで考え方は違うだろうし、「現実変わってるだろwww」とかいうツッコミをしていたらきりがない。
ただ、詩乃が迎える死という現実を一貫して“変えなかった”ことはこの作品のテーマ性を明確化し、凡作から名作に昇華させた要素であったと思う。

素晴らしい作品をありがとうございました。