フリーノベル。しっかりとした物語に加えて音韻や歯切れの良い読みやすいテキスト、そして手作り感あふれる優しいイラスト…とスキがなさすぎる出来。同人フリーノベルの中でも相当に完成度が高い部類だと思う。ガチガチのロリが出てくるため一見大きなお友達向けにも見えるけど、しかし逆にローティーン少女向けという見方もできる、二面性がある作品だった。ネタバレは後半から
超イケメンで大金持ちだけど人間不信なマクビー君の豪邸にガチロリが転がり込んできて一言
「スーパーマンのおじさんを探して!」とかお願いされたんですけど、というお話。
そこから訳ありイケメンと訳ありロリのちぐはぐなコミュニケーションをメインに話が進んでいく。
読了まで大体3~4時間くらいかな。
一言でも述べている通り、何から何までソツがない。
それは物語の構成もそうだし、テキストだって一文一文が読みやすい。
加えて適度にコミカルなシーンを挟み緩急がつけてあって飽きさせない。
更に染み入るような優しいイラストもついてるときてる。
実は物語としては結構重いところがあるんだけど、そういった色々な部分に気が利いているおかげで
読んでてだれたり、あるいは息が詰まったりすることがない。
ノベル初制作ということらしいんだけど、なんかすごく手馴れている感じがする。
このロリが訳ありだというのは早い内から判るんだけど、それが追い風になってることもあってか
懐いていく描写が正直オッサンにはキツい。良い意味で。
なんというか、父性みたいなものをガシガシと突つかれてしまう。
パンツ丸だし絵やお風呂に入れてあげたりする絵もあるんだけど、
エロい気持ちが毛の先ほどにも起こらないんだよね。
とにかくメシ喰わせて暖かい布団で寝かせたくなる。
いや勃起してないですよ。これで勃起できたら大したもんだよ。
とまあそんな感じで人間不信のマクビー君も少しずつほだされていく訳だ。
その気持ちの移り変わりが見事に俺自身の気持ちとリンクしていたんだよね。
自然と感情移入度が高くなってしまう。二人のやりとりを見ているだけで何かを得られてしまう。
個人的に好みだった女A、他にも探偵やらダンディなじいさんやら色々でてきて
なんやかやとしながらお話は進む。
そして物語が佳境に入る頃、最期に選択肢が一つだけでてくる。
それによって結末が二つに分かれるんだけど… どちらも物語の結末としては文句なしだった。
言うなればハッピーEndとノーマルEndと呼ばれるものになるんだろうけど
俺は正直ノーマルEndの方が好き。
内容は全然違うけど、TRUE REMEMBRANCEや茜街奇譚 、郷愁花屋の作品とか
ああいうフリー大好きな層なら皆知っていて、
いつかふっとした時に思い出してしまうような、
それでいてなんとなく、当時を思い返して寂しさを覚えてしまうような…
そんなところへと立てるような作品だと個人的には思う。 本当によく出来てる。
という訳で、以下はネタバレ全開の感想。
もしこの作品に興味を持ってくれた場合はここで戻ってね。
いやあ、籠の中Endはホント良かった。
こういう「周りからは不幸に見えても当人にとっては幸せ」みたいなやつ
なんて言うのかなと調べてみたんだけど、メリーバッドエンドと言うんだそうな。
語源は不明らしいけども。
最期の絵とシャロンのモノローグが実に効いてね…一日中ぽやーっとしてたよ。
つっても俺がメガネとおさげと白パンが似合う文学少女だったら
憂い帯びても格好つくけど、実際はただのオッサンだしな。
ぽやーってしてたら気持ち悪いだけっていうね。
でも少女向けともとれる、と形容した理由はここらへんにある。
メリバ(と略すらしい)は元々女の方に好まれる傾向があるそうで。
実際どうだかは知らないが、確かにそんなイメージはある。
二人だけの世界、とかそういう感じの。
加えて、振り返って見てみるとこれ、幸薄い少女がイケメンで金持ちでナイーブだけど
自分にだけは心を開いてくれるという王子様と出会う話でもある訳で。
いやまあこう書くと一気に俗っぽくなっちゃうけどもw
個人的には少女向けの童話あるいはジュブナイルと形容するのがしっくりくるね。
しかし大抵のオッサンはロマンを食べて生きていくものなので、
もちろんこの作品もそうだし少女マンガなんかもそうだけど
少女趣味ってのは 案外美味しく頂けるもんだ。形は違えどそこにはロマンがあるからな。
とまあ、これはシャロンの視点から見た感想。
マクビー君の視点から見た場合はまた異なる。
マクビー君から見ると…やっぱり父性かなあ。相互補完関係でもあるんだろうけど。
恐らく多くがこのガチロリに庇護欲を感じてしまうんじゃないかな、と思う。
最後の最後になって「いっしょにごはんをたべて、テレビみて、いっしょにねたい…」なんて
とつとつと言われた日にゃもう、奮い立たずにはいられないってもんだ。
そんで「んあ”あ”あ”あああ俺がずっと面倒見たるわあ”あ”あ”あ”あ!!!!!!」と
もう勢いだけで"男に知らせない"を選んだら逃避行することになってしまった。
そうだシャロンは世間じゃ誘拐された子だってのをすっかり忘れていた。
うん…いいお父さんになるためには冷静さも必要ということだね。
でもそうやって行き着いたところには、なんとも退廃的な甘美さとでもいうのかな。そんなものがあった。
逃げ続ける人生に疲れを感じさせながらも、しかし保護する者として少女をさらった男。
じゃあ成長した少女は彼の事をどう見ているのだろう?とか考えるともうね…
いくつかの言葉から察せられはするけども、とても一言じゃ言い表せないものを抱えているのが見て取れる。
いや逆か、一言でいいのか。「この時間以外には、ほかに何もいらない」か。
なんだこれ恥ずかしいくらいにキレイな結末だなおい。こういうのホント大好き。
しかし実際のところ、作品タイトルや開始時のモノローグからしても
本当のエンディングはこっちなんじゃないかと俺は思ってる、んだけど…どうですかね。
いやハッピーEndの方も好きだけどさ。スタッフロールの絵がもうなんていうか、ずるいわw
まあそんな感じで、捻くれ者の俺にしては珍しくベタ褒めしてるけど、
正直ケチをつけたくなるようなところが思いつかないんだよね。
あ、一つだけあった。ロリ拾ったのを「酔ってたから覚えてなかった」で押すのは
ちょっと無理があったかなと思った。でもほんとそれくらい。
派手さはないけど、年食ったせいなのか逆にやたらと感じ入る部分が多かった。
こんなの年に一本出会えれば御の字というくらいのお気に入りになった作品だったね。
でさあ、いつだったか、ロリをただ可愛がって面倒みるだけのエロなしロリコンゲームってアリじゃねの、
みたいな感想を書いた覚えがあるんだけど、いやマジでホントどこか出してくれ。 同人でもいいから。
この作品やってはっきり判った。
二次元少女にちやほやされて癒してもらうのがエロゲーだけどさ、
逆に二次元少女を癒すことによって自分自身も癒されるってのもあるぞ、というね。
うーん、相手が二次元でなければきっとステキな言葉だったんだろうなあ。
俺は一体どこまで気持ち悪くなっていくのか判らんが、まあとにかくそういうのがやりてえ。
絶対イケるから出そうよ!売れないとは思うけどさ!!信者絶対つくから!!!!俺とか!!!!