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4Dさんの片道勇者の長文感想

ユーザー
4D
ゲーム
片道勇者
ブランド
SilverSecond
得点
80
参照数
1074

一言コメント

待ちに待ったフリーゲームの本命。シルフェイド作ったサークルと言えばピンとくる人も少なくなさそう。内容を判りやすく言えば「シレン+強制スクロール」という感じで、一風変わったローグライクになってるね。同人RPGで一番欠けやすいバランスの調整に抜かりがなく、また初心者でも理解しやすい設計になっているので「ローグライクってよく聞くけどなんなんだよ」「なんかめんどくさそうだし難しそうだし」という人にはかなりオススメできる。加えて微妙にネット対応しており、そのちょっとしたギミックも面白いという完成度の高い優良作。

長文感想

フリー/シェアゲーム「シルフェイドシリーズ」の完成度の高さで有名なサークルの最新作。
WOLF RPGエディタの作者って事でも有名かな。
今作はローグライクなRPGとなっていて、古典的ながらも中毒性の高い内容になっている。



まずは自分のキャラを作成することから始まる。
最大8種類となる職業の中から好きなものを選び、特性(力が上がるとか特殊な技能とか)を付加して名前をつけたら完成。
最初は職業も特性も種類が少ないけど、プレイ実績によって後々開放されていくという仕組み。

次に自分が旅立つ世界を決定するんだけど、この「世界」そのものに決まった名前は存在しない。
どういう事かっていうと、自分でキーボード入力する事により好きな名前の世界を旅する事ができるようになっており
またその名前によってマップの構成も変化する。
例えば「アアアア」という世界にしたら街や仲間が多くて楽だったとか
「ウウウウ」にしたら逆にキツい地形が多かった、といったように名前を元にして中身が生成されるという訳だね。
毎回違う世界に飛んでもいいし、お気に入りの世界を何度もやってじっくり攻略する、といった遊び方も可能。
更に日替わりでキャンペーンワールドが常設されており、ここでは特殊なルールで遊べるようにもなっている。

旅する世界を決定したら、難易度から好きなものを選べば冒険の始まり。
ターン制(自分が一歩動けば敵も一歩動く)を用いて2D見下ろし型のフィールドを突き進んでいく。
目的はいくつかあるけど、当面は「特定の位置に出現する魔王を倒す」というものになる。
つまりそれまでに自キャラを鍛えておかないといけない訳で、その為には道中出てくる敵を倒してレベルを上げつつ
ランダムで落ちてるアイテムに一喜一憂しながら拾い集めていけばいい。
積極的にダンジョンへ突撃したり、街や神殿などの施設も有効に使ったりしてね。
戦闘やアイテムのバランス感覚も良好で、難しすぎずカンタンでもないという絶妙なラインを保てているんじゃないかな。

また道中のTipsが優秀で、何も知らない初心者がやっても詰まるような事が無い点は凄く評価できると思う。
30分もやっていれば殆どの事が自然と理解できる。初心者にオススメしやすいポイントの一つだね。



そして特筆すべきは片道勇者の名前が示すとおり、一方向の横スクロールとなっている部分かな。
画面端から世界を飲み込む「闇」が迫ってくるという設定で、次々とマップが飲み込まれるという強制スクロールさながらの様相になってる。
要するにデッドラインそのものであり、このラインに飲み込まれてしまうとゲームオーバーとなるので
「どのルートを通るか…山越えで回り道しないといけないからうかうかでけんな」
「北にあるダンジョン行きたいけど行くと南の街に寄るのは難しそうだ」
「こんなところで強敵かよ、付き合ってたら飲み込まれそうマジどうしよう」
といったような、その場その場の判断力を問われるようなシステムとなっている。
ゲームの面白さっていうのはどれだけ優れたルールでプレイヤーを縛るかって事に尽きると思うんだけど、
個人的にこの試みは悪くなかったと思う。っていうか正直面白かった。

WizでもRogueでもそうなんだけど、結局のところ「悩んで判断を下す」のが楽しいんだよね。
進むべきか戻るべきか、敵と戦うべきか逃げるべきか、どちらのアイテムを持っていくか…っていう。手に汗握りながらさ。
この「闇」の存在はそういった個々の要素全てに絡んで、より一層楽しいものへと押し上げているように俺は思ったな。



微妙にネットワーク対応しているのも面白い。
というのは、同じ世界、例えば「エロスケ」という世界を同時にプレイしてる誰かが存在すると
画面端に進行具合のメッセージがでるようになってる。
「ホゲホゲさんが○○を入手しました!」とか「ぴよぴよさんが○○に殺されました!」とかそんなの。
チャットのように好きなメッセージを流せる訳じゃないんだけど、なんていうの、一体感っていうの?そういうものを感じるんだよね。
ちょっとした事なんだけど、そのちょっとした事が面白い。

更に面白い仕組みとして、死亡してしまうとその世界に限り自身の亡霊がうろつくようになる、というものがある。
「う、うう……」とか言いながらうろついてるんだけど、話しかけるか倒すかすれば
死んだ時に持っていたアイテムを何か一つだけくれるという心憎いシステム。
コンシューマほど手の込んだものじゃないけど、これを同人、しかもフリーでやるのって素直にすごいと思うな。
とりあえず世界「エロスケ」には4Dの亡霊がたぶんうろついてると思うので、見つけたらブチ殺してアイテム奪って
「なんだこいつゴミよこしやがって死ね」の一言と共にアイテムを地面に叩きつけてあげてね!

そして目的を果たしゲームをクリアあるいは死亡すると、自身のプレイ内容に対しての評価画面へと移る。
この評価内容によって「伝説ポイント」というものを獲得する事ができ、これを使う事により
次元倉庫(いくつかのアイテムを次週に引き継げるようになる)の拡張や、職業またはスキルなどを取得できるようになってる。
何度も何度も周回しながら、ゲームに対する理解を深め倉庫にアイテムを溜め込み、
各種イベントや仲間を探しながら楽しんでいればあっという間に10~20時間は経っていると思うよ。
周回前提のゲームだけど、ちゃんと周回が面白くなるように作られている。うん、素晴らしいね。

あっそうそう、クリアすると世界個別にクリアレコード(名前とか装備とか)がサーバのDBに保存され回覧できるようになるので
世界「エロスケ」をエロスケユーザーで埋めようずwww
ただし「エロスケ」は道中に侵食地帯(高難易度)があるから多少は慣れてからじゃないと厳しいかも…



と、こんな感じで月並みな言い方になっちゃうけど、フリーでここまで作られているとかちょっと信じられないレベルの優良作。
まあ100時間↑のプレイに耐えうる程ではないと思うし、セーブ/ロードもこれといった制限がないので
ローグライク上級者からするとヌルいかもしれないけどね。後半は作業感もチラホラ見えてくるし。

でも、だからと言って底が浅い訳じゃあない。
プレイヤーに対するイージーさや違和感のないバランス、そして途切れることなく迫られる判断に「やって覚える」面白さ。
更にフリーである事を考えると、ローグライクの初心者から上級者まで広くオススメできると思う。
相変わらずテキストセンスも素晴らしいしね。短いテキストながらもシリアスなところではしっかりその気にさせてくれるし
笑いのセンスも磨きがかかってる。腐女子のくだりは最高だったw

精力的にFixが行われており大きなバグも粗方潰されたみたいだし
1プレイ30分~と気軽に遊べるので、気になった人はちょいっと冒険の旅に出てみるのもいいんじゃないかな?
きっと楽しいと思うよ。