多彩な味わいのカケラを楽しめる短編アソート
Story1
愛とは幻想、勘違い。
相思相愛とは、互いに愛されているという相互の勘違い。
そして婚約とは、その勘違いから生涯目覚めないことの誓いである。
――Ronove
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Story1
彼の部屋から色々なものが見付かった。
それらの証拠から、私はあなたに愛されていると推論できる。
私の部屋から色々なものが見付かった。
それらの証拠から、私もあなたを愛していると推論できる。
彼女の部屋からは何も見つけられなかった。
しかし未発見の浮気の証拠Xの存在を、私は否定できない。
――Frederica Bernkastel
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Story11
人は、理想には、耳を貸さない。
人は、他人には、耳を貸さない。
人は、友人には、耳を貸さないこともない。
そして友人が理想を語ったなら、力を貸さないこともない、かもしれない。
どんな大層な理想も、誰の心にも届かなければ大言壮語。
心に届くには、どうすればいい……?
心と心が、交流していなくてはならない。
どんな理想も、その前に。
……コミュニケーションがなければ、伝わるわけもないのだ。
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Story15
「はい。私は、みんなに感謝しています。……でもそれを、誰にも伝えず、わかってもらえず、二度と会えない関係になってしまったら。その相手は、私に感謝されたことはなかったと生涯思ってしまうでしょう。私が本当は感謝しているとしても。」
「私たちはシエスタ姉妹近衛隊の兵士です。……いえ、命ある限り誰であっても。ある日、突然、人は二度と会話が出来なくなる関係になります。」
「突然訪れたその日に、慌ててそれまでの感謝を伝えようと思っても、もう、それを伝えることは出来ない。………その時、相手は私のことをどう思うのでしょうね。 ……私はそれを思うと、……悲しいのです。」
大勢の数え切れないほどの人たちに、常に感謝しているつもりでした。
でも、それを誰にも伝えませんでした。
だから彼らは、私が感謝していないと思ったとしても、罪はないのです。
「そして、その誤解を解く機会が、ある日突然、永遠に失われたとしたら。………その人に私は、感謝されたことがない冷たい女の子だと、永遠に思われ続けるでしょう。」
「そして私も、どうしてその時が訪れるまで、それを一度も伝えることが出来なかったのかと、永遠に後悔するでしょう。……きっといつか想いが伝わる? 言葉で伝えるのは野暮? 互いは通じ合ってるから、今さら言葉なんて必要ない……?
私、そういうのが嫌いになったんです。」
「だから。………私は全ての人との出会いに、常に次の機会が唐突に失われるかもしれないことを、常に怯えています。……こうして00と話している今日でさえ、最後の日かもしれない。明日のあなたに、私は出会える幸運を賜れないかもしれない。」
「……だから私は二度と。…………相手に感謝を伝える機会を逃したくなくて、常にありがとうと、……相手に言い添えるのです。……だから、こんな話を聞いてくれて、ありがとう。」