終盤からの「今まで溜まった全てのマイナス要素を消し飛ばす神展開」で一気に傑作となる作品。だから「途中で投げないで!」
なんか… 評判悪くないっ!?!?
俺的には、確かにダレるところはあったけど、一言感想に書いたように最終的にはマイナスだったのがプラスに転じて神ゲーだなって感じなんだが。
他の人は微妙に感じたんすかねえ…。
なんでなんだろー?と思って色々調べると、よく批判されてるポイントがいくつかあって。
たぶん、
・退屈なシナリオ
・唯依じゃなくて、まさかのクリスカ√!?
・謎のラトロワ神格化が腑に落ちない
・何故ラストバトルの描写を省いたのか
よく槍玉に挙がるのはこのあたりかな?
ちょっと個別に思うところを書いてみよう。
・退屈なシナリオ
物語の舞台はBETAとの戦いの最前線…ではなく後方のアラスカ、国連軍のユーコン基地ってことでBETAとの戦闘は少なめ。基本的に戦闘があっても対人類。
シナリオは戦術機に関する蘊蓄やら政治的な駆け引きに内容の多くが割かれているから、そっち方面が好きな人以外は、やはりオルタと比べると終盤までは退屈に感じるかもね。
実際俺も、リアルが忙しかったって理由もあったけど数ヶ月プレイ中断してたんで。
ただまあ、前線で戦う衛士のみが、人類がBETAに掲げる剣を構成しているのではなくて、直接戦闘に参加しない後方の開発衛士たちや機体の整備をする整備兵たちの積み重ねも間違いなくその一部であることを理解するには、描かれなければならない側面だったはず。
だから、マブラヴというシリーズとしての総合的な完成度を高める意味で必要な作品だというのに関しては異論はないでしょう。
でもそれと話が退屈〜ってのは別の話で…
こればっかりは好みだし仕方ないが。
戦闘は対人類が多めと書いたけど、ここは俺的に嬉しいポイントだったりする。BETAとの戦闘の場合、攻略法もある程度決まってるし、オルタの後だと少し食傷気味の感もあって微妙かもしれない。生死の懸かった緊張感は対BETA戦特有のものだけど…。
でも今作のようにAH戦の場合は相手の心理だったり、チームワークだったり、BETAとの戦闘では無い駆け引きが生まれて、そこがワクワクするのよね。
特にブルーフラッグではBETAを相手にする時とは全く異なる戦術を用いて戦う。ルールという制限の中戦うから、前線を経験してきた者からすれば、遊びも同然なのかもしれない。けどXFJ計画の有用性を証明するため何としてでも勝利しなければならないアルゴス…。米国からインフィニティーズが参戦したり、それぞれの思惑の中始まるブルーフラッグ…熱すぎんだろう。何気に戦闘BGMもカッコいいし。「True 4 Eyes」が個人的には好きだったな…。
一番お気に入りのバトルはブルーフラッグでのアルゴスVSバオフェンズ。ユウヤとイーフェイのサシはイーフェイじゃなくても、乳首立ちますね。
あと他に気に入ったポイントとしては、所属組織によって機体が違って、その性能の差異は何に由来してるのかとか、「なるほど〜」と思えるような理由がしっかりとあって、リアリティ満点なところ。素晴らしかったね。
けどこれに関して1個欠点だと思ったのは、キャラや機体の名称が統一されてないことか。
不知火弐型=94セカンドとか?
ちょっと最初別名が一致しなくて大変だった。
人名もそうなんだよな。さすがにメインはすぐに覚えたけども。
タリサとかヴァレリオは渾名があって、基本チョビ、VGて呼ばれてるし…。
まあ親しい仲なら渾名で呼ぶのは普通のことだし、リアリティのある表現ということで理解できるんだけど… 軍のお偉いさん方のはちょっときつかったw
マジで何が何だか分からなくて、軽くドストエフスキーの「罪と罰」みたいになってたよ。
あとさっき書いたけど機体もな。
ストライク・イーグル? アクティヴ・イーグル? ん?
チェルミナートルって全部複座型ってわけじゃないのか?
ブラックウィドウ? 初耳ですけど…
ジュラーブリク? ビェールクト? ぶっちゃけソ連の機体はどれがどれだか…
正直、かなりマニアックな領域に踏み込んでしまっていると思うのです…
このシリーズはバックグラウンドの作り込みが異常なレベルなんで、そういうのが好きな人(ミリオタとか)は最後まで熱中できたのではないだろうか!
話は変わって、
一つ気になっているのが指導者とは何だったのか問題。
最後までプレイしたけど不透明なままだった。
なんかシュヴァルツェスマーケンと関係が…みたいな話を小耳に挟んだので、いつか自分の目で確かめたいと思いまする。
積みゲーが解消されれば今すぐにでもプレイしたいんだけど、
積みゲーがあるからな… 積みゲーが…
・唯依じゃなくて、まさかのクリスカ√!?
ユウヤがクリスカを好きになる起点はクリスカに対する同情に似た感情、クリスカがユウヤを好きになる起点はプラーフカによるイーニァからの記憶・感情の転写。
どちらもゲームで描かれる恋愛感情のきっかけとしては一般的ではないから分かりづらい。
俺もユウヤがクリスカを選んだ時に「ん?あれ?唯依どしたん?」となりましたよ…。
けど深く考えずに進めてたからか、篁唯依(何かフルネームを書きたかった)は負けヒロインかーと思って、さっさとクリスカに思考を切り替えたんで、終盤ユウヤ&クリスカにしっかりと感情移入出来て感動しました。が、唯依の存在を引きずってしまって感動できなかったプレイヤーも中にはいるわけだ。
確かに、ね。わかるよ。
ぶっちゃけ俺も唯依の方が好みではあったし、今までの展開からして勝ちヒロインぽかったのは唯依。実際ヒロインの魅力的にも、ユウヤ陣営の唯依の方が描写時間も長かったから魅力的だった。だから唯依と結ばれないのかと思う気持ちは分かるし、ユウヤがクリスカを好きになった過程も分かりづらくて、終盤の流れが唐突に感じてしまう部分も確かにあると思う。
ヒロイン候補として考えられる唯依との絡み(対立から恋愛感情へ)の方がよく見る形で、かつ声優さんの演技であったり、ビジュアル、性格設定といった唯依の持つヒロイン力的なものが日本人好みというか…間違いなくプレイヤーに愛されるキャラクターだろうなと(主語拡大しててすみません)。
唯依との絡み、日本を毛嫌いしていたユウヤが、嫌いな日本の象徴たる唯依と恋に落ちていくってのが多くの恋愛ゲームを経験しているプレイヤーからすると物語のテーマ的にも自然な経緯に感じる。
機体の出自(日本製)という部分に引っかかりを覚えているユウヤの目を覚ますため、唯依が武御雷で乱入して切り結ぶとか、印象的なシーンもあることだし。
他に2人の対照性も印象的。ユウヤと唯依、それぞれ欠けているものと持っているものが対照的で、お互いに自分の持っていないものを見て成長していく節がある。
序盤のユウヤは信念が歪んでいて、XFJ計画を果たす公人ではなく、自らの感情を発露させる私人の立場をとっている。対して序盤の唯依は、自分の役職や責任に縛られて個我が出せていないため、固くとっつきにくいと思われがち。すなわち公人の立場をとっている。
これって一長一短。どっちが駄目とかじゃないな…。
2人は物語を通して交流し、欠けているものを埋め成長していく。
こーれが美しい流れで…もう唯依とくっつけー!て思ってしまうよねぇ。
そうなると結ばれるのは自然と唯依と考えてしまうね。
しかも、トータル・イクリプスには若かりし(今でも十分若いけど)唯依が主人公の「帝都燃ゆ」という作品が同梱されている。時系列を考えたら先にプレイする人が大半だと思うんだけど、「帝都燃ゆ」からやったら唯依を気に入ってしまうよね普通に。武家出身の誇りや使命感を持ち、直向きに頑張る唯依。そして実戦で味わった地獄。嫌いになる方が難しいキャラクターだよ。トータル・イクリプス本編では唯依の毅然としていながらも乙女全開な部分が描写されて、ユウヤとの恋を応援してあげたくなるのは確実っ。
が、最終的に結ばれるのはクリスカだからな。
きっかけの部分が言われて初めて分かる類のものだから、自力で気づくのが難しい。クリスカが惹かれていく様も描写されているけど、なんか負けヒロインぽい感じだったからなぁ。イーフェイとかもユウヤに対する好意を直球に表現してるけど勝つとは思えなかった。それと同じでクリスカも負けるだろうなというのは思っていた。対して唯依がユウヤを好きになっていく部分はシンプルに描写されていて分かりやすい上、結ばれろ!と言いたくなる程、唯依のユウヤへの態度は見ていて悶えるものだった。
セオリー通りというか。
何の疑いも持っていなかった。
だから唯依が途中で撃たれて死んじゃった!?シーンはめちゃくちゃ驚いたし、クリスカの方にいったのも「あ、そっち行くんだ」みたいなツッコミは入れていたわけなんだ。
でも終盤になってユウヤとクリスカの心情や葛藤がしっかりと描写されていく中で納得はできたから文句はない。ただやっぱり唯依と結ばれて欲しかったという気持ちは残っていて、IFを考えてしまう人の気持ちもわかる。これは唯依が可愛すぎた弊害なんだろうな。ほんとうに良いヒロイン…ではなくキャラクターだった。
――――――――――
「東京皇帝☆北条恋歌4」191p
「『愛情の始まりが何であっても別にいいじゃないか。憐憫、尊敬、庇護欲、獣欲、神聖視、一目惚れ……そんなものは、きっかけでしかない。大事なのは……今の自分の気持ちなのじゃないかな?』」
――――――――――
「異能バトルは日常系のなかで7」285p
「人が別れたいと願うとき、そして逆に人が一緒にいたいと願うとき。
そこに明確な理由なんて存在しない。
他人が聞いて納得できるような綺麗で収まりのいい理由なんて、あるはずもない。
どうして好きなのかも、いつから好きなのかも、上手く説明できない。
サンタクロースをいつから信じていなかったのかを覚えていないように――いつから恋に落ちていたのか、正確に明言することができない。」
――――――――――
昔読んだ本から、ちょっと引用してみました。
ユウヤがクリスカを好きになった理由や諸々が気に食わないって人は、これで納得いくだろうか。
きっかけは始まりに過ぎなくて、大事なのは今持っている気持ち。
そしてぶっちゃけ好きになるってこと自体に納得できるロジックは存在しない。
まあでも、クリアしてから振り返るとPC版のタイトル画面もパッケージも、どう考えても唯依と結ばれるような話じゃないって推測できるよな…
なんかクリアするまで全然気にしてなかったが。
つーか、ユウヤもずっと唯依の本心に関しては、いくら鈍感とはいえ甚だしいレベルで誤解してたし脈なしなんだって判断できそうではある。
まあ結果論か。
・謎のラトロワ神格化が腑に落ちない
火垂るの墓。子供の頃に見ると、叔母さんは嫌なやつだなと思う。大人になってから見ると、主人公にも非があると思う。全員が全員同じ感想を抱くかはわからないけど、少なくとも俺はそんな感想を抱いた。
子供の頃と大人になってからの感想の差異はひとえに、自分の立場や目線が変わった故に見えるものが変わったからなんだろう。
ユウヤ視点で物語が進行していき、プレイヤーはユウヤの気持ちに共感しシンクロしていく。そんな中の、ラトロワの不可解とも言える言動の数々。
自分の隊のメンバーがクリスカとイーニァへ恫喝したことを注意しないとか。
ジャール大隊のやつらが作戦前にオープン回線でユウヤを煽るようなことをペチャクチャしてても注意しないとか。
正直、
「”普通”あんなことしねぇだろ!どんだけ性格悪いねん!中佐も中佐だよな!ちゃんと注意しろカス!」
と思う。
ユウヤもここまであからさまではないけど、同じようなことを思ったはず。
けど自分の思う”普通”が、どこに行っても”普通”とは限らないわけで。むしろそうじゃないことのほうが多い。
ジャール大隊のやつらがどのような扱いを受けてきたのか。
ソ連という国の歴史。
最前線で命がけの戦いを強いられ、それを顧みられることなく上の言いなりになるしかない彼らは、今回の作戦に参加したユウヤやエリートであるクリスカ、イーニァにどのような気持ちを抱くか。
結局は立脚点なんだよな。
最初に書いた、火垂るの墓の話もそう。
見えているものが違えば感じ方も違う。
彼らが取った行動の裏――背景にあるものが何なのか理解すると少しは納得できるのかもしれない。
ユウヤは物語の中でそれを理解して、ラトロワを尊敬したんだろう。
結構長い作品だから、そういうシーンの存在を忘れちゃうと、ラトロワしゃしゃんなよ! と思っちゃうよね。
・何故ラストバトルの描写を省いたのか
あれはねー。俺は省いて良かったと思うけどねー。
もう、クリスカ軍団味方につけた時点で勝利確定演出でしょうよ。
だから態々戦闘の過程を描写する必要はないのかなぁなんて。あえて表現しないことで表現する。言わぬが花…描写せぬが花的なね。
てか冷静に考えて、
クリスカ軍団出てきてその感動的なシーン、バックで「星彩 〜asterism〜」流れてるところにバトル入れたらなんか違うしw
倒した後流すのも、それは感動のピーク過ぎてると思うし…。
最後にボロボロの不知火と、その背後にメタメタにされたг標的を映して「あぁ、死闘が繰り広げられて、その末に勝利したんだな」って自然と理解する。それで十分よ。
中々オシャレな表現で個人的に気に入ってるんだけど、省くんじゃねーよ!って人もいるわけね。
これは…好みやんね。
この作品、確かに惜しい部分はある。だから点数低めにつけるのも、文句を言いたくなる気持ちもわかる。
けどきっと、「帝都燃ゆ」→「トータル・イクリプス」。この一連の物語が今の形だったから最終的にあの新種のBETAに勝てたんじゃないかと思うんだよね。
自身のアイデンティティに苦しめられ、人間関係の不和に悩まされてきたユウヤ。
そんな彼がユーコン基地で出逢った仲間たちと様々な出来事を経て、共に成長していく。
そして成長したユウヤが恩送りをする相手として選んだのがクリスカだった。
ユウヤはクリスカと接していくうちに彼女に惹かれ、クリスカの身の上を知った時にユウヤは選択を迫られる。
そこでユウヤは… 自らの積み重ねてきた全てをなげうってクリスカへの愛に殉じる…
クリスカが亡くなる最後まで、彼女のことを思いやり続け、クリスカの故郷をBETAの支配から必ず取り戻すと誓ったユウヤ。
それから時系列は人類史上最大のBETAへの反攻作戦である桜花作戦へ。
場面は桜花作戦のフォローとしてエヴェンスクハイヴの陽動を行う黎明作戦。
そこにはユウヤとイーニァの姿も。
最初は順調に思われた作戦も、新種のBETAの登場で一気にピンチに。
その戦況を巻き返したのがユウヤとクリスカの愛。
もちろん、戦場にいた者たちの命懸けの挺身がなければ作戦の成功はなかっただろう。だが必要条件としてクリスカ軍団があって…それはユウヤとクリスカの愛がもたらした結末なんだと。
この結末を迎えるために、各々の選択を振り返る。
ミラの選択、祐唯の選択。二人の選択は苦悩の末だった。
しかし、その二人の選択がユウヤを苦しめ続けた。
ユウヤは自分と母を捨てた父を許せず、悲惨な子供時代を過ごし、ユウヤの心は暗い輝きを湛えることになる。苦しみ続けながら、ゆがんだ形で成長したユウヤがXFJ計画に参加、ユーコン基地へ。そこで出会ったイーニァはユウヤの心の暗い輝きに惹かれた。そして、プラーフカによる転写でイーニァの感情がクリスカに流れ込み、クリスカはユウヤに恋愛感情を抱く。ユウヤはクリスカに過去の自分を見て、関わっていくうちに恋をする。
最終的に、ユウヤは自分の築いてきたものを捨ててでもクリスカを守る選択をし、
実はそれが黎明作戦成功につながる。
――――――――――
【クリスカ】「なあ、ユウヤ……。
私、やっとわかった……」
「ユウヤの心にある負の輝きは、ユウヤが生きた証……。
ユウヤが選んできたすべての輝き……」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「その最も美しい輝きにイーニァが惹かれ……受け取った私がユウヤに……恋した……」
「そして……マーティカも……」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「私たちの想いは……作り物なのかもしれない。
……紛い物なのかも知れない」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「それでも私たちのユウヤへの想いが……確定しているはずの未来を……凌駕したんだな……」
【ユウヤ】「ああ……。
そうだな……」
ああ……そうか……。
そういうことか……。
オレの心に淀んでいた闇をイーニァが想いに変え……。
それをクリスカが愛に変えて……オレに還してくれたのか……。
結局……そういうことか……。
オレが……クリスカやイーニァを助けようとしてたのに……。
オレに関わってくれた人たちから受け取ったものを……クリスカとイーニァに返そうとしていたのに……。
オレが……助けて貰ってたんだ……。
――――――――――
【クリスカ】「それでも私たちのユウヤへの想いが……確定しているはずの未来を……凌駕したんだな……」
このセリフはマーティカを退けたことを言っているわけだけど、ラストの絶望的な新種のBETAを倒すことが出来たのが「私たちのユウヤへの想い」のおかげだったとも、振り返ると意味が取れるかも。
また、最後にユウヤが唯依を選ばないという選択がなければ、唯依は祐唯の選択の意味を理解することができない…よな。祐唯に選ばれた唯依とその母。
唯依がユウヤに選ばれなかったことで、唯依は初めて選ばれなかった側の立場に立って、選択の意味を知るというか…。
正直祐唯はヤリ捨て感あるが、真実を知ればこいつもこいつで苦悩の末の決断だったはずだもんな。その選択は正しさや間違いという二元論では計れないものだ…
祐唯、ユウヤの選択が、
すべてを拾えないなら、何かを棄ててでも選んで前に進むしかない…
につながるんだろう。
各々の選択の結果がもたらしたもの。
その集大成が黎明作戦成功、そして桜花作戦の成功。
マブラヴオルタネイティヴを補完する、武たちからは見えない裏の視点。
物語がこの形だったから。
そう考えると、人生は選択の連続なんだなーとしみじみ思う。
――――――――――
マブラヴの本流は直接オリジナルハイブに突入して死闘を繰り広げたA―01部隊の面々だけど、作戦成功には欠くことのできない支流として本作トータル・イクリプスがあるんだろう。
オルタで色んな人たちの頑張りがあって 今があるとは理解していたけど、やはりこの作品をプレイするまで視野が狭かったと言わざるを得ない。戦ってる人だけじゃないもんな、整備する人だって重要だ。なんだか忘れていた大切なことに気づけたよ。その意味でも傑作。マブラヴシリーズにとって欠かせない作品。
――――――――――
余談
この作品の感動シーンといえば、まあクリスカ関連が挙がると思うんだけど、俺は中でも「スノウメヰデン」流れるところね。あそこが一番泣きました。
スニグラーチカの話とクリスカの恋によって身を滅ぼしたという共通点。
短い時間ながらも幸せを享受したのも共通点か。
序盤のクリスカは非人間的な印象が濃く、党や国のため、イーニァのため、すべてを自分以外のものに依拠した行動規範を持っていて、簡潔に言えば、自分というものがなかった。
ユウヤと出会わなければ、自分の人生に何の疑問も抱くことなく、国のために生きていったのだろう。しかしユウヤと出会って、愛を知って、その末にクリスカは命を散らした。
クリスカはユウヤに恋をして破滅した。
これだけ書いたなら悲惨ではあるけど、
スニグラーチカの話と同じで、短い関わりの中でクリスカを人間的にして、彼女自身の幸せを与えてあげたのは誰でもないユウヤだった。
早く死んでしまったけど、それは不幸なのかって。
いや、間違いなく幸せだっただろうと…。
そんなことを考えながらボロボロ泣いてましたね。これは泣くだろっ!
そういえば、
二人とも相手に抱いていた気持ちは本物じゃなくて、相手に対する不義理なのではないかと悩んでいたな。
――――――――――
【クリスカ】「だから……おまえのことを想う、この気持ちが……」
「これが……本当の私の気持ちなのかどうかも……わからない……。わからないんだ……」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「私は貴様の傍にいたかった……ただ一緒にいたかった……。でも、その想いは……何の根拠も無いかもしれないんだ……」
「許してくれ、ユウヤ――私は……私は……貴様の人生を壊してしまった! 紛い物かもしれない想いで――貴様の人生を……!!」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「それだけじゃないっ……そのせいで……マーティカも壊して――イーニァも巻き込んでしまったんだ……」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「私が……こんな確証もない想いを――抱いてしまったばかりに……」
【ユウヤ】「…………」
【クリスカ】「うぅ……っ……ぁ…………ぁ…………」
【ユウヤ】「……なあ、クリスカ」
【クリスカ】「う……っく…………ぅ……」
【ユウヤ】「切っ掛けなんて……今が本物なら……どうだっていいじゃねえか」
――――――――――
なあ、クリスカ……。
こうしていても……まだ信じられないよ。
もう……この世界に、おまえがいないなんて……。
なあ……クリスカ……。
あれから数日しか経ってないのに……なんか、何ヶ月にも感じるんだぜ。
……おかしいだろ?
勝手なもんだよな。2、3日顔を合わせないなんて、ユーコンでもざらにあったってのに。
【ユウヤ】「…………」
まあ、しかたねえよな……。
おまえは最初から、えらいインパクトがある奴だったからな……。
【ユウヤ】「ふっ……」
銃を向けられたうえに、怒鳴られまくる出会いって……ねえだろ普通、そんなの。
ああ、そういや……オレがユーコンに着いて早々、ド派手な歓迎もしてくれてたな……。
ま、おまえはオレなんか眼中なかったと思うけど。
あれのおかげで、くだらねえ国連の田舎基地も悪くねえなって、思えたんだっけ……。
それまでの苛立ちやむかっ腹……あのフライパスの一瞬で吹き飛んじまったんだ。
【ユウヤ】「…………」
こういうのを運命っていうのかな……。
何か、不思議だよな……。
オレ、運命なんて……憎んだり、抗うものとしか、考えたことなかったからさ……。
全然違う国、違う時間に生まれ、違う場所で育ったオレ達が、アラスカで出会って……。
【ユウヤ】「…………」
まさか、こんなことになるなんてな……。
半年前のオレに教えてやりたいよ。
おまえはそのキッツいソ連女と、どえらいことやらかすんだぜ――ってな。
まあ、信じねえだろうな……。
実際、自分でも信じられないんだ。
こんなオレが……あの時――
あの時、おまえを選べたこと……。
こんなオレでも……おまえを選ぶことができたってことが、自分でも嬉しいんだ。
オレはおまえに……たったひとりで悲しい想いをさせたくなかったから……。
掛け替えのない人が……たったひとりで辛い想いに耐えるなんてこと、我慢できないから……。
だから……オレを成立させていた多くのものを脱ぎ捨ててでも、おまえを選べたことが、嬉しいんだ。
オレにそれを決断させてくれたのは……おまえなんだ。
ごめんな、クリスカ……。
こんな自分勝手な話ばっかりで……。
おまえは……本当にすごい女だよ……。
いま思えば……おまえはオレの感情が見えていたのに……それでもオレを選んでくれたんだよな……。
全部見えてたんだろ……。
自分勝手でみっともないオレの心が……。
だから……わかってたんだよな……。
オレがおまえ達を本気で気に掛け始めた理由……。
【ユウヤ】「…………」
最初は、米軍時代の自分におまえ達が重なって、ほっとけないって思っていたんだ。
オレは、ユーコンで出会った色んな連中のおかげで、やっと自分の時間を生き始められたんだ。
あいつらは、オレの良いも悪いもすべて受け容れ、きっちり向き合ってくれた。
オレは、なんていうか、やっと自分の居場所みたいなものを見つけた気がして……。
もう、他人を敵視しなくてもいいんだって思えたんだ。
だから……あいつらがそうしてくれたように……。
オレも、あいつらから受け取ったものを誰かに渡したい……。
その一心で、おまえとイーニァを気に掛けてた。
――そう、思っていた。
【ユウヤ】「…………」
でも、今ならわかる……。
本当はそんな立派な理由じゃなかったってことが……。
多分オレは……軍や党に縋るおまえ達に、過去の自分の姿を重ねてたんだ。
そういうおまえ達の面倒をみることで……自分の成長を確認し、安心したかったんだ。
自分でも無意識にそれに気付いていて、でも、その事実を直視するほど冷静じゃなくて……舞い上がってたんだ。
いや……直視することができなかったんだと思う。
それを自覚することで、自分が何も変わってないことに気付いてしまうのが怖かったんだ……。
くだらねえだろ……。
でも、理屈じゃないんだ……自分でも、立ち止まってしまうことが怖かったんだ……。
【ユウヤ】「ッ……」
でも……そんなのどうでもよくなった……。
オレがどうであれ、おまえは何も変わらず――いつも真っ直ぐにぶつかって来てくれたから。
おまえには、オレの心が……オレ自身すら気付けない下らねえものが見えていたのに……!
ごめんな……クリスカ……許してくれ……ッ!!
正直に不安を伝えてくれたおまえに――オレは誠実じゃなかった……ッ!
能力を失ったのを良いことに……死に行くおまえに、自分の言葉で真実を伝えられなかった……ッ!
おまえを安心させたくて……オレは……嘘をついたんだ……!!
だって……オレはッ……おまえを愛しているから……ッ!!
強いふりして――おまえをッ……少しでも安心させてやりたかったから……ッ!!
同情だろうが自己充足だろうが……記憶の転写だろうが――切っ掛けなんてどうだっていい……ッ!!
クリスカッ……オレはっ……オレはおまえを愛している……今でも……!!
くっそ……。最後まで……ちゃんと言えなくてごめんな……。
こんなろくでなしでごめんな……。
だが……約束は必ずまもる。
イーニァが、自分の道を自分で見つけるまで、オレが傍で見守る。
おまえがそうしてきたように、今度はオレが……。
当分、寂しい思いをさせちまうな。
……でも、信じていてくれ。
オレは必ず戻って来る。
そして、おまえを……おまえの故郷の街で眠らせる。
ユーラシアを取り戻して、必ず連れていくから……それまでは、ここでゆっくり休んでいてくれ……。
【ユウヤ】「…………」
ありがとう、クリスカ……。
いつまでも愛している。
【ユウヤ】「…………」
――――――――――
心配することねーよな。
終盤の二人の行動一つ一つを見れば、互いに抱いていた気持ちが「真実の愛」だったってわかるもの。
まあ色々と書いたけど、
「幾千万の名も知らぬ者達の挺身が絶望を退け勝利を手繰り寄せた」
結局これに尽きます!
黎明作戦だけじゃなく、小規模大規模関係なく、人々の命がけの戦いの末に現在があるんだってこと。
これを表現するための「帝都燃ゆ」、「トータル・イクリプス」だったんだと思う。
マジで傑作でした!プレイ出来て良かったです!!
――――――――――
だが……オレは、模範的で尊敬される米国人でいることよりも、大切なものを見つけちまったんだ。
好きな女の最期の望みを叶えてやれるような、そういう男になりたいんだよ。
――――――――――