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2c26さんの君と彼女と彼女の恋。の長文感想

ユーザー
2c26
ゲーム
君と彼女と彼女の恋。
ブランド
NitroPlus
得点
95
参照数
2791

一言コメント

ゲームにしか表現できない物語の極北という感じ。ちょっと追記。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

体験版時点で、主人公を排して直接プレイヤーが物語に介入する展開って、どう表現するんだろうと気になってたけど、
選択肢というゲームならではの方法に、なるほどと思わされた。
特に攻略サイトもセーブ&ロードも許さない、枠を超えた地点にプレイヤーを引きずり込む演出の数々には、
クリックする指先一つに魂を込めるような独特の感覚にまで強制的に持っていかれた感じがする。

こういうメタ的な発想って、ちょっと奇を衒えば誰でも思いつくようなものであって、ともすれば陳腐になりかねないけど、
全体を貫くコンセプトとして主軸に置いたうえで、きっちり説得力を持たせられるのは稀有なことだと思う。
並々ならぬセンスとゲームにしかできない周到なギミックのおかげ、
と言うと内容よりも小手先の仕掛け先行のように聞こえるかもしれないが、
事この作品に限ってはギミック自体が作品の本質と不可分と言えるので、貶したことにはならない。

思うに下倉バイオって人はスマガという高い壁を超える為に思い悩んだ挙句、
まるで修行僧みたいにストイックに、物語とは、エロゲーとは何ぞやという思考を突き詰めていったんじゃないだろうか。
モノ作る人にはそういう気質は珍しくなさそうだけど、
そういうのをきちんと形にして世に産み落とすニトロプラスの懐の深さには感嘆する。

まあそんな勝手な憶測は置いておくとしても、
誰でも思いつきそうだけど誰にもは作れない、ゲームでしか表現しきれず、一度っきりしか通用しない、
そんな、ある意味で不世出の作品であるのは確かだと思う。



気になった部分について追記。

さらっとプレイした感じでは美雪がプレイヤーに入れ込んでる理由がいまいちピンとこなかったけど、
深く考えるならたぶんこういう事じゃないだろうか。

彼女が心一を操り人形とかただのアバターとか言っていたように
彼女自身、自分が虚構の存在だと気付いた事で自我崩壊の危機に立たされた。
けれどもカミサマと同じ次元から自分たちの運命に干渉している超越者の存在に気付いたことによって、
その気持ちを勝ち得ることに心の拠り所を見出した。
そう考えると一種、神の愛に救いを求める宗教者みたいな心境というか、
選択肢という神託で実際に繋がっている分、それ以上に恍惚とした感情を抱いたとしても納得できる気がする。