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2426624さんのシークレットゲーム CODE:Reviseの長文感想

ユーザー
2426624
ゲーム
シークレットゲーム CODE:Revise
ブランド
FLAT
得点
78
参照数
777

一言コメント

近年、サブカルチャーの世界に溢れる反逆モノの作品への解毒剤になり得る物語だと思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

流行に疎くて恥ずかしいですが最近になってようやくアニメ『進撃の巨人』を見ました。感想としてはとにかく巨人を殺したいと繰り返す主人公に違和感を感じたままでした。主人公達に働いている論理は絶対の支配者である巨人と反旗を翻す人類といったひどく単純なものです。何が面白いのでしょう。

『進撃の巨人』がヒットしたからでしょうか。最近のサブカルチャー作品に反逆や復讐を謳ったものが目立ってきたように思います。私が観た中でもこの作品のリメイク作である『リベリオンズ』や森恒二先生の『デストロイアンドレボリューション』、『魔界戦記ディスガイア5』『遊戯王ARCーV』のアカデミアとレジスタンスの関係にも巨人vs人類の構図が見え隠れします。これらの作品にも追い詰められた者たちの反逆がある種のヒロイズムをもって描かれています。

私は閉口しました。主人公サイドの戦いが反逆のロマンやサバイブを免罪符に美化されているからです。自らの戦いに疑問や反省がまるでない。あるのは『虐げる相手は悪、自らはそれに抗う(肯定されるべき)存在だ』という単純な図式です。もちろん今に限らずマンガやアニメの世界は昔から正義vs悪の単純な戦いを延々と描いてきました。しかし先に挙げたように近年のマンガやアニメが自ら(主人公)の正当性に反逆というもっともらしい理屈を使っているのをみるとその視野の狭さに嫌悪感を覚えます。
 
もちろん現実の世界に正義vs悪のはっきりした戦いはないことは誰でも分かっています。そして巨大な力に抑圧された時は不当を正すために戦うべきでしょう。しかしどんな力の行いにも完璧な正当性などありません。いずれは抱える矛盾が飛び出してくるでしょう。その時どのような立場でも自らの悪を認める力学があるかどうかとても大切な事だと思います。反逆モノはそうした反省にかけています。


『シークレットゲーム code revise』も巨大な力(運営)に翻弄されるプレイヤーたちの物語です。しかし、全ての話が単純な反逆の結末に落ち着くリメイク作『リベリオンズ』とは雲泥の差があります。Bルートのラスト主人公修平と琴美は自らが生きるために瞳を撃ち殺してしまいます。その時語られる二人の言葉には極限状況のなかで生きるために弱さと醜さをさらけ出してしまった後悔とその傷を昇華させようとする決意です。そこには相手を悪と断罪し、自らの醜さを封印する視野狭窄はありません。生き残った者たちは受けた傷を力にそれぞれの道を見つけます。琴美は看護婦に、修平とまり子は運営と敵対する道を取るがそこには葛藤と自省の上で成り立っている。その点でこの作品は単純な教義に閉じがちな凡百の反逆ものを正す優れた物語を有していると思います。芳しくない評価が多いこの作品ですが、私は大きな声で良しと言いたいです。


余談
次作『atled』も過去改変の物語でありながら、逢瑠のいじめや麻智の怪我、母親の自殺といった傷を安易に無かったことにしませんでした。傷を踏まえて未来に飛翔するという物語もやはり優れたモノであると思います。次の作品も多いに期待しています。