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19800217さんのDUNAMIS15の長文感想

ユーザー
19800217
ゲーム
DUNAMIS15
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
90
参照数
251

一言コメント

隠れた名作だと思うのですが・・・・

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

骨格はひぐらしの鳴く頃に、そのまま。
ざっくりとした特徴は下記。

●類似点
・ループ物
・各章でキャラクター視点が変わる、ザッピングシステム採用
・ループを繰り返す毎に少しづつ伏線回収
・最終ループでループ脱出

●相違点
・SF設定は結構緻密

結構前、2-3年前にプレイしたので、曖昧な点や不正確な記述があるかもしれません、その点は申し訳ないです。

この作品で特質すべきは、SF設定:生物関連・ヒトクローンの設定や世界観の設定がかなり整合性あるように練り込まれている点です。私はSF好きですが、現実世界の生物学・遺伝子工学等を反映したしっかりと整合性のある世界観・SF設定はとても感心しました。

SFって現実世界の科学+α(シナリオライターが考えた科学設定)が有り、そこの部分の実現可能性とかを考察したりするのが楽しいと思うのですが、この作品は+αの部分はほぼ無いです。その点はSFと呼んでいいのか疑問は残りますね。

上記した、特質事項は結構この作品では重要な位置を占めています。シリアスなテーマを取り扱っている作品なので、整合性がガタガタだととても内容がチープになってしまうのですが、しっかりシリアスさを保持できています。

1章 東吾視点

 1章は、全く何が起きているか意味不明なまま終わりました。所謂、主要キャラ紹介ループですね。最後に東吾君発狂してバットブン回すw ひぐらしかな? 

2章 一花視点

 この2章は、女性キャラの視点をADV形式でプレイするのはかなり新鮮味がありましたね。
一花は東吾に好意を寄せているのですが、もう内面がドロドロ過ぎて笑えます(笑)
友達の菓には、笑顔で接しながら結構「ウザい子ね」とか思ってたり、東吾にベタベタする眞波には敵意むき出しの感情を抱いていたり。一花の心理描写はシナリオ担当が元々女性だからなのか、かなり現実の女性っぽい生なましさが有ります。うひー

3章 眞波視点

 3章辺りからでしょうか、ようやく物語が動きだすのは。毎回ノモスとして選ばれる白 大輔が、実は臓器摘出の為に殺されていましたー的な展開が始まります。
 こういう実は、生きていたと思ってたキャラが殺されていた系は目新しくない設定で、最近だと7seeedsや少年ジャンプの約束のネバーランドなどがありますね。この設定はかなりプレイヤーを引き込む為、出来るだけシリアスに残虐性を描けないとチープになってしまいます。その点、本作は上記二作品よりここら辺の描写はリアル系キャラデザと相まってしっかりグロくて、残虐さを感じる事が出来ます。
 眞波は物語のキーマンなのですが、視点ギミックを使って実在するかのようにしていたのは良かったと思いますね。それに付け加え、最後に教会でナンバー15マイナーと会話しながら終わるシーンは、良かったです。

4章 七生視点

 4章は結構好みが分かれるかもしれません。この七生は、兎に角プチ哲学みたいな(ニーチェかな?)を引用してウダウダ考えますw 七生ウゼー!って人も結構いたのではないでしょうか。ただ、この章辺りで、主要登場人物全員が「ループしている。毎回全滅している。どうしたら回避できる?」と、密かに問題を共有できたシーンはやはり嬉しかったですね。この章(じゃなかったらすみまん 汗)では、毎回ノモスとして居なくなる白 大輔の残したメモリーカードの謎が解けるのもなかなか面白かったです。因みに私は、謎はノーヒントでは全くわからなかったクチです(笑)

この章辺りになってくると、俄然話が盛り上がってきます。教員の香藤先生や工藤も重要キャラである事が分かってきます。みんなで一致団結して、生き延びる!と目的が明確になります。しかしながら、折角研究塔へ乗り込み、後一歩での所で宿敵妹尾女史にやられてしまいます。ひぐらしでいう、皆殺し編みたいな感じ。

5章 茅早視点

 最終章。茅早が遂に、仲間に加わります。東吾が「前回なんで、ベストを尽くしたのに、やられたのか?それは茅早が仲間にいなかったからだ」と気づく辺り、感心できます。
 このDUNAMIS15のいい点の一つに、登場人物はその年齢=高校生で可能な範囲での考察・推察をして行動している、点が挙げられるでしょう。決して現実の高校生では無理な超天才がいたり、チート能力があったりはしない点は、素朴ですが評価できます。
 またもや、最初の日から始まる訳なのですが、東吾が茅早を強引に連れて食堂で皆で食事するシーンは面白かったですね。茅早は典型的なロボ子な訳ですが、東吾が茅早の気持ちなんか無視してグイグイ引っ掻き回すことによって、茅早にも色々な感情が芽生え始めます。
 ナンバー15マイナーと連携しつつ、香藤先生の手を借りて内臓チップを摘出する等々、登場人物フル活動です。最終章は、全ての問題点をクリアし、日本へ帰還できます。最終局面での、アレだけヘイトを集めていた工藤が全ての感情を吐露し主人公達を守るシーン、ナンバー15マイナーが国府津を締め殺すシーンは、感動しますね。最後の、屋上にて東吾と茅早が既に亡くなっていた眞波の声を聴くシーンは良かったと思います。
 
 最終章の怒涛の展開には、厳しい方にはご都合主義だと評価されてしまうかもしれません。ただ、ひぐらしの鳴く頃に、の最終章の山犬VS主人公達程は無理がある展開ではないかな、と思っています。戦闘に関しては、プロのナンバー15マイナーが加わっていますし、脱出時に白 大輔がオリジナルの代わりを演じるのも無理なプランではないかと。

過去編 
 
 この過去編は、クリア後にプレイできるのですが、痒い所に手が届いているなーという感じ。本編をクリアした後、少し気になるのがナンバー15マイナーと眞波の過去、及び主人公達のクリア後のアフターでしょう。
 過去編では、もう本編のようなネタ隠しがないので、女性キャラ同士がノモスに選ばれるために、ドロドロに争っているシーンが描かれています。眞波とナンバー15マイナーの最後は悲劇的な結末に終わりますが、この過去があったからこそ本編での眞波の残留思念化、及びナンバー15マイナーの協力に繋がったと考えると、かなり時系列でも設定が練り込まれているなあ、と感じました。

アフター編

 アフター編まで用意してあるとは、至れりつくせりです。
しかし、何と主人公は七生です。何で東吾じゃないんだー!! と普通は思いますね 苦笑 七生と夏來のイチャラブや、白 大輔、さらに茅早が日本でどう過ごしているかが描かれています。まあ、しかし茅早がどういう環境で育ってきたのか等がこのアフターで理解することができるのはいい点だと思います。

これらの過去編・アフター編をプレイしてから、再度本編をプレイすると、茅早・眞波・ナンバー15マイナーの言動にさらに理解が深まる点も良かったです。

番外編・書籍版

 本作は、書籍版(TOブックス)も出ています。この書籍版は、明らかに原作プレイ済みを想定して書かれた内容です。158ページ程度と短いですが、第5章の東吾視点の物語が描かれています。茅早視点と東吾視点を併せると、また新たな発見があり・・・・以下略

ループ物・皆で生き残るという、鉄板設定を使いながら、世界設定・SF設定を詰め、キャラクターも練った本作は個人的には、隠れた名作だと思っています・・・・が、余り有名じゃないですね。

以下、主要キャラ雑感

高槻 東吾:快刀乱麻な性格は気持ちいい。昨今珍しいタイプか。
倭 一花 :2章プレイすると正直怖いw 何考えているのか。。。 
後藤 眞波:東吾君(どっちも)Loveな姿勢が可愛いです。声優さん丹下さん!?ぱねえっすw
陸 七生 :メンドクサイ性格だけど、必要なキャラかな
世津 茅早:純粋で可愛さ溢れるロボ子。東吾とアフターで会えたらいいですね

仁和 菓 :結構、好きなキャラです。かなり暗い性格だけど、そこがいい。
櫟井 夏來:いい子だがやや全キャラの中では、没個性か。
白 大輔 :東吾と正反対のキャラで、必須かな。自分でノモスに行く姿勢は好きです。賢い。

香藤 瑞希:重要キャラなんだけど、やや心理描写不足で不満。
宮藤 一咲:脇キャラのなかでは、一番好きですね。ヘイト集めているけど、実は良い奴。
妹尾 梓 :コイツは満足のいくヒール。しかも、最後死なないという。助手というポジの忙しさ     をかなりリアルに描いてて笑えます。
国府津 忠男:好奇心第一で非政治家タイプ、割と現実に存在しそうな科学者。
     そんなにヘイトを集めず、いい意味でリアルな科学者像を描いてくれたか。

東吾マイナー:カッコイイですね。滅茶苦茶強いですし。
 
※やや贔屓目評価です

シナリオ 25/25 
原画   25/25 
演出   15/25
BGM 25/25  阿保剛氏BGMはいいですね

toral 90 /100