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1610さんのいつか、届く、あの空に。の長文感想

ユーザー
1610
ゲーム
いつか、届く、あの空に。
ブランド
Lump of Sugar
得点
90
参照数
1708

一言コメント

この作品を ― 醜きと言う者は、言葉の形を知らぬ者。素晴らしきと言う者は、言葉を知ったと驕る者。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

なんとなく某漫画に在った言葉を変えて使ってみましたw

この「いつか、届く、あの空に。」ですが、
終始、コトバ遊びで出来ていますね。

コトバを認識し、世の中を見る「人間」にとって、コトバは本当に魔法じみた影響を及ぼします。
コトバで、人は認識する世界を作り変えることが出来る。
よって、人はコトバで縛ることが出来る。

有識結界は、認識そのもの。

作中、何度も同じ「ひらがな」に違った「漢字」を当てはめるシーンがある。
作者が言いたいのはコトバによる認識と、また、それによって生まれる、魔法にでもかかったような思考の転換。
まるで自分の意志とは関係なく見方を捻じ曲げられたように感じ、戸惑う読者。

でもこれは、言ってみればコトバのお遊び。


そして、コトバは物体や生物のそのものの意味すら捻じ曲げることが出来る。

極論、信じればどうにでもなる。

ですが、少し違います。
信じること、むしろ、思い込むことにより、あたかもそうであるかのような気になり、そんな認識はいつしか変えがたい事実にまで押し上げられる。



言霊信仰。

正直、眉唾物の神より実際に力を持っていると思われる言葉。(まぁ、神も仏も言葉ありきですし)

この作品をやって、他の作品「~に似てる」と思った人は、ものすごく多いと思うんです。しかも、かなりの作品が当てはめられると思うんです。

その作品が、魔法・魔術・神秘、それらの類の現象について少しでも言及するなら、コトバの力は、決して無視しては通れないから。
そしてそんな「コトバの力」を前面に持って来た作品だから、多くのネタにかぶったような所がかなりあるはずなんです。


だから、この作品は、コトバで人を騙し、人を縛る、そんな

コトバの遊び。


だからこそ、素晴らしい!!100点!!とは言いにくい。
なぜならこれは基礎だから。

でも、だからこそ、意味不明!!キモイ!!とは口が裂けてもいえないだろう。
基礎だからこその難しさ。


この作品、絵にたとえるなら「水墨画」

派手さ、全体的な纏まりにおける完成度を捨てた。
それにより、墨一色で全てをあらわす、味・粋。

それは素晴らしい。

じゃあ、なぜこの基礎が素晴らしい!!100点!!といいにくいのか。
それは、

あなたは言葉というものを評価しつくせるのか。

というところにある。

他の色を混ぜなかったからこそ、誤魔化し無しに一色勝負。
とてもじゃないけど評価し尽せません。

そういった意味で、


この作品を ― 醜きと言う者は、言葉の形を知らぬ者。素晴らしきと言う者は、言葉を知ったと驕る者。