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1610さんのゆのはなの長文感想

ユーザー
1610
ゲーム
ゆのはな
ブランド
PULLTOP
得点
90
参照数
533

一言コメント

たぶん、これはおとぎ話。でも、おとぎ話より少し先を描いた、本当のお話・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この物語はおとぎ話。でも、やっぱり本当の話。
誰もが救いを求めて止まない、町の、ちいさな神様、ゆのは。

いつも食い意地が張っていて、お金に目がなくて、どうしようもなく騒がしい。
そんな女の子が、幸せでないはずが、ない。

これは、そんなおとぎ話。



わかば・椿ルートでは、ゆのはは今までと同じように人との別れを繰り返す。
ゆのははいつもこうして、人を見送りながら存在してきた。

「だって、神様ですから」

・・・・・



穂波ルートではその繰り返しは途絶える。
ゆのはの背負う過去が明らかとなり、このルートに於いてゆのはは、ひとまず過去から開放される。
ゆのはは、曖昧な書き方ではあるが、何かを受け入れ、何かを決心してゆく。





最後に現れるルート・・・ゆのはな。

このルートで、今までのゆのはが何一つ救われていないことを、ようやく、はっきりと知ることが出来る。

ゆのははまだ、本当の自分を受け入れていない。
ゆのははまだ、本当の自分を受け入れてもらっては・・・いない。

過去の自分を切り離し、半身として在り続けた、千年にも及ぶ時間。

過去を思い出すことが怖くて、どうしようもなく恐ろしくて、過去を切り離していたはずだった。しかし、そうすることで過去は千年間、付き纏った。
一時も離れることはなかった。

なぜなら、この時ゆのはは、過去にしか生きていないから。


そんなゆのはを、唯一助けられる物。

それは

・・・おとぎ話・・・。




おとぎ話の中で、ゆのははある青年と出会う。

ゆのはは、未来に望みを、持った。

それは同時に、過去を受け入れること。
そして、神様としての自分を、否定すること。


ちいさな神様は全てを受け入れ、この世を去ってゆく。


たぶん、それはおとぎ話。


でも、これは、おとぎ話より幸せな、本当の話。

話しを語る人が、本当だと信じているなら、
話しを聞く人が、本当だと信じられるなら、

やっぱりそれは、本当の話。


ちいさな女の子は、今、何をしているだろう。

語り尽くすから・・・
・・・どこから話すとしようか。