人は皆、少なからず「トルンガ」の部分を持っているのではないだろうか。これ程までにゲーム者本人を参加させる「物語」を私は知らない。
人は皆、他人の物語を聞いたり、他人から聞いた物語や自分の体験を語ったり、自分で物語を新たに創り出したりする「トルンガ」な部分を持ってはいないだろうか。
このゲームほどわくわくしながら、また、想像しながら、また、解釈を懸命にしながら遊んだ「物語」なゲームはない。確かに、RPG、カードゲーム、シューティングなどのゲームがある作品は多い。しかし、あくまでそれはお話とは切り離されたものである。その点、この作品はノベライズゲームという物語でありながら、その物語自体がゲームのように積極的な参加を求めているのだ。積極的に考え、想像し、一つ一つの物語の葉を自身が組み立てなければこの作品は魅力が薄いといえる。とにかく、自分で物語を組み立て想像する楽しさを味わってほしい。
絵もこの作品にあった絵本のような絵であるし、音楽もケルト的な雰囲気を持つ作品にふさわしいもので全てが一体となって作品の重要な、欠けては成り立たない要素となっているといってもいいだろう。また、声優さんもこの作品には絶対不可欠である。朗読劇のようなものがあるのも見逃せない。聞いていてとても楽しいものである。演技もそれぞれの魅力的なキャラクターにピッタシである。とにかく素晴らしい。また、哲学ちっくなところもあるがそれも奥深い。文学におけるテクストの問題についてもさりげなくだが語られていて、興味深かった。登場人物のそれぞれの物語には悲しいものもあり、ただ笑えるだけやわくわくするだけの作品ではない。イギリス文学の要素がいっぱい詰まっていてそれを読み解くのもまた楽しい。
いろんな要素がいっぱい詰まったエロゲーを超えた最高傑作であるといっても言い過ぎではない。ただし、注意すべきは、最初はなぞが多くてわけがわからないところが多いことだ。一度始めたら放棄せず最後までやってみるべきだと思う。
きっとやり終えた後には心に素敵な贈り物が贈られていることに気づくはずである。