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11921192さんのCANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース~の長文感想

ユーザー
11921192
ゲーム
CANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
100
参照数
844

一言コメント

子供の頃、夢中になって読んだり見たりした、小説、漫画、アニメ、映画は無かっただろうか?この作品はそんな子供の頃の興奮とワクワク感を思い出させてくれるものである。

長文感想

 同じライアーのゲーム「蒼天のセレナリア」でも感じたが、この作品(キャノンボール)をプレイすると子供のころ夢中になって読んだ本、1頁1頁をめくるのがもどかしい位ワクワクしながら続きが気になりながら読んだ本、の記憶が蘇ってくるのである。大人になってそんなワクワク感、興奮、子供によくある単純さ無邪気さは無くなってくるのが当たり前だろう。面白い映画を見たとしても、「ふむふむ、まあ面白かったな。」みたいな感想を言ってしまう、抱いてしまう大人になってしまってはいないだろうか。一歩引いてまるで審査員か評論家のごとく「客観的」に(と信じて)自分は小説でも映画でも音楽でも鑑賞しているのだという態度をとってしまう「大人」な自分が今内省してみるといるのではないか。この作品はそんな「客観的」な「大人」の態度をとらせることを忘れさせてしまう力、引き込む力があるのだ。

 内容は良くも悪くも漫画的なものである。そこに批判があるのもうなずける。主な批判は「中身が幼稚」であるが、その原因は中身が漫画、少年漫画的であるからだろう。王道ともいえる話の流れである。中身については詳しくは書かないが、先の批判はある意味当たってはいるが、違う部分もある。それは登場人物たちがいろいろな過去、思った以上に暗い過去もその中にはあるが、を持ち、悩み苦しむ姿がある所だ。例えば主人公のロッシやその恋人フォクシィや古き女友人トト、同じクラウン選手仲間パティ、売春婦ヘザーは会話の端々に暗い過去を覗かせている。登場人物たちの考え方はよくよく読めば、少年漫画のように一本筋ではないと言える。自分が思うに良くも悪くも「子供」な所がある大人にはこの作品は楽しめると思う。そうでない、子供のころにワクワクした経験がなかった人、完全に「大人」になってしまった人にはこの作品は合わないと思う。

 どうやらライアーはエロゲーらしくない漫画的な作品を作る会社のようである。最初にも述べたが「蒼天のセレナリア」も同じように子供心が蘇る感じがあった。しかし二つの作品は大きく違うところがある。
 
 ひとつは完成度である。「蒼天のセレナリア」は謎の部分も多く、また終わり方もまだまだ続くといった若干中途半端な感じの否めないものとなっているが、「キャノンボール」はわからない部分がほとんどなく(話の筋の上では皆無といっても過言ではない)、終わり方も満足のいくものである。とても気持ちのいい終わり方であり、さわやかである。もちろんどんなゲームにもあるものだが「キャノンボール」も細かいところでは変なところはある。しかしそれはプレイ後に冷静になって初めて感じるもので、途中では感じさせないものである。引き込む力が大きいため些細なところには眼が向かなくなる。

 もうひとつは中身である。「セレナリア」が「冒険」を大きく前面に出していて、ワクワク感、興奮は青い大空を飛び未知の世界へと行く期待から来ているものである。それに対し「キャノンボール」は「冒険」というよりも恋愛の要素が大きく、ワクワク感はレースのスピード感やレースの裏にある陰謀からくるものになっている。「未知の世界への冒険」ではなく「レースを通じて結びつきを強くする二人」と「レースの先に待ち受けているものは」といった感じ(設定、テーマ)がこの作品にはあるのだ。

 得点に100点を付けると、もしかしたら他の人(プレイヤー)から「このゲームにはおおきなバグがあってインストールに苦労するのにどうして100点なのだ?」と思われそうだが、実は自分は修正版を購入してしかもあっさりとインストールできたので、その苦労は点数に反映していない。もしバグありのを購入していたら、マイナス5点くらいして95点だろうか。中身がいいのであまりマイナスにはしないとは思うが…。

 長く書いてしまったが、子供のときのワクワク感を思い出したいならやってみて損はないと思う。最後のほうクライマックスで流れる曲「キャッツインヘル」は最高だ。これを聴くと興奮も緊張感も最高潮に達する。是非是非やってほしい。