ErogameScape -エロゲー批評空間-

114514LOVEさんの智代アフター ~it’s a Wonderful Life~ Memorial Editionの長文感想

ユーザー
114514LOVE
ゲーム
智代アフター ~it’s a Wonderful Life~ Memorial Edition
ブランド
Key
得点
95
参照数
88

一言コメント

シナリオ39/40 音楽30/30 絵20/20 システム8/10

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は約1年前に読み終え、それから1ヶ月強の間は頭を擡げたほどに衝撃を受けた。
前作「CLANNAD」とはまた違ったテーマで、keyにおける全盛期のそのバイタリティに改めて畏敬の念を覚える。

シナリオ;前編では信念や思い出を基に各々が様々な心で動いていく。生きる糧のなかった団体までを持ち前の真摯さと技術で奮い立たせたりと前作とどこか似た展開となっているが、求め合ったり食い違ったりする夫婦の営みが笑いあるシーンや憂鬱なシーンと溶けて、品よく描かれている。
本編は後編からだ。OPを見て期待で胸を震わせたのは間違っていなかった。
結論から言うと、この作品では前作のように光る玉を集めていないためか慣例となっているような奇跡は起こらなかった。
けれど、朋也が目を覚まし指輪が嵌った自分の手を見つめるシーン。そこで、私はそれら以上の奇跡を感じざるを得なかった。
そこまでの過程には智代の不退転の気持ちが絡まっているが、ここで書くのは最早失礼にも感じてしまうので割愛する。

往々にして読者は、発生している諸事実を追うだけで、その過程にある心のダイナミックな動きをバッサリと切って物語を評価することがある。しかし、結局こうしたストーリーは何を得て何を失い、何が残ったのかが分かれば良いのだと私は考えている。
だから、本作の結末までの軌跡は非常に分かりやすく美しかったと思う。

音楽;季節や場面、作品自体の骨組みに準えていて非常に聞き心地が良かった。
特にEDはシナリオとこの上なく相性が良く、感動を何倍にも高めてきた。

絵柄;全体的に優しい雰囲気が滲んでいて素敵だったが、神々しい絵柄もある。良い意味で作品を象徴する画が多数見受けられる。

システム;欲を言えばもう少しセーブが出来るようになってほしかった。というのも、好きなシーンを見返すたびに重ねているとすぐに空きが消えていくのだ。
また、文章自体は前作ほど長大ではないものの選択肢がやや多く、不要とも取れる部分もあったため減点した。