これはジグソーパズルみたいに完成するのではなく、何かを得るために何かを選択し何かを失う厳しい話。穴は決してなくならない。
絵馬が最後に選択した未来。得たもの、失ったもの。
主人公である兄恭介への恋愛感情、それを選んで周囲との仲が崩壊する結末でもなく、自殺を図って恭介の心の中に永遠に生き続ける未来でもなく、自分が病気で亡くなってしまう本来の未来でもなく、恭介への想いを封印して、みんなが幸せになれる未来を選びとった。それは恭介もその一人のうちで、絵馬が想いを叶える未来に、恭介が幸せになることがなかったのが大きな要因だろう。一つの自己犠牲の形になるが、そこに至るまでの過程とその結論がこの物語である。
では、その世界は真なのか、偽なのか?
絵馬が生き、千尋が存在する世界は通常であれば偽だが、それを絵馬の想いの力で真にしてしまったようなテキストはあったような気がする。うん、あまり覚えていません(´・ω・`)
まぁともあれ、そうである以上は真ということでいいんじゃないカナ。何か引っかかるものがあったような気はするんだけど、あまり覚えていません(´・ω・`)
印象的だったのは絵馬が自殺した未来。珍しい二人称スタイルのテキストで、生きてる人は死んだ人に敵わないを実現した世界。
これや本来の未来を序盤から絡めることで、不思議さを演出できていたと思う。
全体的に対比的なものが多かったような気がする。以下で例をてきとーにあげていく。
まずはマージと絵馬。
マージは過去の可能性を探るもので、絵馬は未来の可能性を探る。
物語の主軸になるのはマージによる過去散策だが、実は後になって全ての世界が絵馬が見る未来視によるものだったという多重構造になっている。
次にメインキャラには兄弟がいる。
絵馬と主人公。桐季とキチガイマザコン兄。一葉と二葉とレイプ魔兄。青井と親友弟。千尋は存在が特殊なので例外だが。
その兄弟関係は絵馬が未来を探る為の指針の一つになっている。
桐季の兄の自殺からは、自分が自殺して主人公を縛る未来を得たし、一葉兄妹には近親相姦が齎す結末を得て、青井姉弟はおまけのようなもんだろうけど、弟が事故死する未来を絵馬が最後に選んだ未来では回避している。
後は……後は何かあったっけ?
結局のとこ、内容は複雑怪奇だったけど、単純な想いが底にあったりして、非常に面白かった。印象。