救いの無い世界の中で、力の限り生きるという事
マブラヴ、マブラヴオルタネイティブをプレイした方ならこの世界のドイツがどうなるのかはとっくの昔に既知。
だけど、国が滅びるということが個々の人間にとってどれだけ大きなインパクトを持つのかに焦点を当て、一つの滅びと向かい合う人々の生き様をさまざまな立場から描き出すことで、オチを知っている事なんて関係ないほどに先の展開が気になって仕方が無いと思わせてくれる。
主人公であるテオドール、リィズ、アイリスディーナ。
この物語に登場するほぼ全ての人間がそれぞれに、掛け替えの無いたった一つの何かを守る為、筆舌に尽くしがたい現実という名の生き地獄に嵌まり込んでいく。
正しさ故に悪意に染まり、正常故に狂気に染まり、愛故に罪を犯し。
極限状態に追い込まれた人間が、純白のままで事を成すことはできないのだと、ただただ痛烈にこの作品は描き出している。
そしてこの作品を最後まで見届けた多くのプレイヤーが気づくはずだ。
こんなにも救いが無い世界の中で、自ら手を汚し、罪を背負い、狂気に落ちてなお、それぞれが大切にするたった一つだけは守り抜こうと足掻き苦しむその血染めの生き様が、どうしようもなく美しいということに。
間違いだろうが罪だろうが、それを尊いと思ってしまう感情を、否定することができない自分自身に。