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(光)エロゲの罪さんのアオナツラインの長文感想

ユーザー
(光)エロゲの罪
ゲーム
アオナツライン
ブランド
戯画
得点
97
参照数
553

一言コメント

『 There is no time like the present (思い立ったが吉日)』

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『 There is no time like the present (思い立ったが吉日)』。
この言葉が全てを表していると感じました。
『夏休みに特別なことをしよう』というノリから色々なことが変わり始めていったのだから…



仲の良い同士での絡み、そこに新たな人物が入る事で変わっていくことを楽しんだりそれで悩んだりと丁寧に描かれていたし、何を描いて何を伝えたいのかがしっかりと伝わってきた。
くだらない会話で盛り上がったり、軽口をたたき合ったり、思春期特有の悩みから興味まで誰かが経験していてもおかしくないような世界が広がっていました。

年相応の悩みをそれぞれが抱えていて、時には1人で抱え込んでマイナスに考え込んでしまったり、周りと共有して一緒に悩んだり解決しようと行動したり…
そういった登場人物の掛け合いというものを第三者視点で視るのは楽しくもあり、辛くもあり、そしてとても眩しかった…。

変わっていくものと変わらないもの、相反する二つが主人公とヒロインの周りに存在していてそれらに振り回されながらも変わっていこうと変わらずにいようと藻掻く姿が一つの青春の形を作っていてとても眩しかったですね。
仲間の皆それぞれをいくつもの線が絡み合っていて…より強く絡み合ったかと思えば別の線はほどけていったり…
それは夏の日差しのようにキラキラと輝いていて…まさしく青春で…青夏でした。



主人公の達観くんもヒロインの事を大切にしてくれるし、だからこそヒロインの事で悩みもするのもよかったし、何よりいつまでも悩み続けないところが凄くよかった。
というか普通にイケメンだった。
そして榊千尋という男もまた最高に…最高に最高に最高にかっこよかった。




結√

結ちゃんは自分の中の芯をしっかりと持っていてそれを周りに良い影響を与えたりして…可愛かったしかっこよく見える場面もあったりして最高でした。
結ルートでは達観くんが自分に自信が持てなかったり、結ちゃんとの未来のことで不安になったりと悩んでいる描写が多かった。
本来なら嫌いな展開だけど結ルートに関しては普通に読み進められたし好きでした。
おそらくそれは達観くんが悩むだけじゃなく答えを見つけようともがいているのが伝わってきたからだと思います。
最終的に自分の中で「釣り合わないと言われたら、その認識を行動で変えたやればいい」「自分自身の意思で結を想い強くなっていく」「これからも一緒に居る為にまずは同棲」そんな風に答えを出して成長が見られたのも素晴らしかったです。
そんな達観くんを結ちゃんはまっすぐに見つめて応えてくれて信じてくれていて…二人の間の“線”がどんどん強くなっていってるようで見ていて応援したくなっていました。




ことね√

ことねちゃんに良い意味で振り回されながらもそれを悪くないものとして捉え始めていく達観くん…
そんな二人が互いに意識し合っていくのが伝わってきて二人を見ながらニヤニヤしてしまっていました。
ちょっとした興味から読モの審査に応募し一次通過からの夏休みを使って皆で応援していこう!という展開もまた青春っぽくて素晴らしかったです。

達観くん、結ちゃんが応援して千尋くんと海希ちゃんが時々からかって…それが本当に楽しそうに見えて同時にとても眩しかったです。
そんな中で更に縮まっていく二人の距離間も丁寧に描かれていたので好きになっていく過程というものをしっかりと楽しむ事ができました。
ことねちゃんに置いて行かれるのではないかと不安になりながらも何があってもことねちゃんを応援して支えてあげようと決意する達観君はカッコいい主人公でした。
そしてバンドのくだりで青春度が限界突破して泣いた…。




海希√

幼馴染特有のお互いを理解してる感が素晴らしかったし、
息の合ったやりとりで厨房に立って料理してるの時点でもう最高だった。
くだらないことで賭けをしたりして騒ぎあったりとかも最高に最高だったし、
海希ちゃんのかわいらしいわがままを呆れながらも聞いてあげる達観くんと千尋…
もうこの3人のやりとりを見ているだけで幸せな気持ちになってきました…。


過去編は心が辛くなったけど、同時に青春の風が物凄い勢いで吹いていて…いろんな意味で心が締め付けられていた。
だからこそ告白シーンがひときわ美しく見えて涙を流しながらプレイしていた。
達観くんから告白してくれたのもよかったし、過去編を見てるからこそ凄く嬉しく感じられた。
バカップルになっていく二人を眺めるのは本当に楽しいものだったし、それでも千尋くんを含めみんなのことをないがしろにするわけでもなくっていうのが大変に素晴らしい関係で最高でした!
過去のこととかもマイナス方面で思い出すわけでもなく、受け止めて、それを糧にして前へと進もうとするそれぞれの姿がキラキラと輝いて見えてまさに青春そのものでした。


バスケの件で千尋くんもまた千尋くんで前を向き、自分で道を切り開き進んでいく…千尋くんなりの“線”を見つけたことが嬉しかったし、何よりほんとうに…ほんとうに榊千尋という男は全てがかっこいいんだなと実感させられました。


EDまでのシーンはただただ泣いていた。嬉しくもあり、寂しくもあったから…
でも、その寂しさも一過性のもの。
これからも3人の関係は変わり続けていくのだろうが、同時に変わらずにあるものもそこにはあるのだろうから…。
変わってしまったとしても離れてしまっても“線”と“線”が再び交わることはあるに違いない。
絆が消えてしまったわけではないし、この夏休みのこと、今までのことを忘れてしまったわけでもない。

作中の言葉を借りれば、『未来は誰にも分からない』のだから…

きっとこの経験は大人になっても忘れずにいるだろうし、「そういえば子供の頃さぁ…」って感じでお酒のお供とかになってそう。



グランドまで終えてそこに残ったのは最高の青春の日々を見てしまいただただ感傷に浸っている自分だけでした。
上手く言葉が出てこないけど、やっぱり青春って最高だなという言葉は常に在る状態で…いろんな感情がごちゃ混ぜになっていました。


背景が丁寧に描かれていて青春の日々を過ごす主人公たちの周りをより彩り豊かにしてくれていたのもよかったです。ヒロインも細かい表情から笑顔までもが最高に可愛く描かれていましたし、キャラがたまに見せてくれる優しそうな表情が特に最高でした…。


OP、ED含め音楽がシーンそれぞれシーンに合っていて作品全体の雰囲気を最強のものとしてくれていました。


添い寝がCG付きだったら100点いってましたねこれは