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(光)エロゲの罪さんの-atled- everlasting songの長文感想

ユーザー
(光)エロゲの罪
ゲーム
-atled- everlasting song
ブランド
FLAT
得点
92
参照数
755

一言コメント

登場人物たちのまっすぐな想いに心を打たれ泣きました。 物語が大きく広がり、複雑に絡み合っていましたが、綺麗にまとめられていました。 あと曲が多く流れるが、どれも名曲ぞろいで流れるタイミングもよく、 それぞれの場面を盛り上げてました。 とても感動でき、同時に泣いた作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タイムリープという設定を通し、当たり前に『ある』ということの大切さ、
人同士の繋がりの大切さをしっかり描けていました。



この物語のヒロインをはじめ登場人物のほとんどが家族や大切な人を失っている。
その登場人物たちを取り巻く環境が時には厳しく時には暖かく描かれていました。
家族とは、友達とは何かを考えさせられ、
それぞれに対する想い、そこから新たな向き合い方を探していく。
そうやって登場人物たちは自分たちの本当の居場所を見つけ、
大切なものをそれぞれ見つけていってたように思います。

いろんな登場人物が出てくるのですが、その一人ひとりがどこかで繋がっていて、
複雑に物語りに絡み合っていて、
小さな繋がりが大きなより強固な繋がりへとなっていくの姿は最高の一言。

また、それぞれの視点で物語が描かれており登場人物の心理描写などもわかり、
感情移入しやすい点などもありました。




音楽

BGM・歌ともに最高の場面で流れていて、
どの曲も物語を綺麗に彩っていたように思います。
ぜひ、ボーカルコレクションも買いたいと思います。





1章

親子の物語であり、時を越えた愛の物語。

長年連れ添った友人のために過去へと飛んだあおば
しかし、飛んだ先は自分たちが生まれるよりももっと前の世界。
そこで医大に通うロックかぶれの青年松島晃司、出版社に勤める記者の鹿妻希(こいね)、
希と同じ出版社に勤める新人記者の東名信一と出会う。

両親共に医療系の仕事、何不自由の無い生活だったが、
既にレールの敷かれた道を医者を目指すことに疑問を感じ、
ロックと出会い、音楽にのめり込むようになっていた。

しかし、そんな晃司はあおばと出会い、自分の考えを改め、
自然とあおばに協力していこうと。

友人のために身一つで過去へと飛び、
何もわからない場所でとにかくひとつの目的を遂げようとする姿に、
家族に対する想いの言葉に胸を響かされ、徐々に惹かれていってたように感じました。
あおばもまたそんなロックで優しい晃司に対して、
何故自分にこんなに優しくしてくれるのかなど疑問に感じつつも、
常に協力的な晃司惹かれていってたと思います。


出会いから互いが互いを意識し合い、徐々に惹かれていく姿までが上手く描かれていました。



希さんはそんなあおばの境遇の一部を偶然知り、このことを記事にしようと近づくのだが、
生まれたときから親がいないが、それでも両親が自分を生んでくれたことに感謝し、
おかげで自分はここにいる。
だから前を向ける。
だから明日に進める。
自分とは違った考えを持つあおばと衝突してしまう。
自分の親は最低だと、親がいるからといってどこが良いのかと、
そして、記者という仕事上知りたくも無い現実を知りすぎたために
理想を持てずて…。
だからこそ現実を知らないからこそ理想を持てる正反対のあおばと衝突してしまっていた。

信一がそんな希さんに対しひとつの決意をするシーンは素晴らしかったです。

「たとえどうなろうと希さんが選んだことなら、それは最後まで希さんの意思だと胸を張るべきです。」

「今みたいに・・・迷ったり躊躇ったりしてる希さんは、希さんらしくありません」

「でも、あたしだって人間よ?また今みたいにふらつかないって保障はどこにもない」

『僕が希さんを支えます』

「たとえどうなろうと、どんな状況に立たされようと、僕は希さんの味方ですから」

「頼ってください」
 
「僕を、頼ってください」

決意し、自分の意思をはっきりと好きな女性に伝える
男らしく感じられとても好感が持てました。

あおばにもまた結婚し子供が出来たそのときは、あおばのような子が生まれてきて欲しい、
人の大切さ、『ある』ことのありがたみ、それらがわかる子供に育って欲しいと、
本人たちに親子の自覚はなくとも親から子へのメッセージとしてあおばの胸には響いていたのではないだろうか。


そんな信一の事故シーン。
ここで大きく物語は動き始めるのですが、自分はただ泣いていましたね...。
思い出の回想シーンが来た辺りでもう、ボロボロないてました。


この事故で信一を亡くし、大切な人を失ったときの悲しみを知り、あおばの亡き親に対する感謝の気持ちに改めて気づくわけですが、この辺りでもう自分があおばの親ではないかとうすうす感じていた彼女は、あおばが帰るまでに親としての言葉や思いを渡そうとする。

この辺りに彼女の親になろうという決意、そして、母親としての強さを知ることが出来たように思う。

あおばと同じベッドで眠りながら、言葉を伝えるシーンでも自然と泣いていました。

この辺りからの希さんの生き様が母親としての強さ、温かさを教えてくれるもので
最高の母親だと感じさせられた。


晃司もまたあおばとの出会いを通して短いながらも様々なことを経験し考え、
自分がいかにワガママな子供だったかというのを実感するわけです。
そして、あおばを希さんを助けたいと心から思い、医者になろうと決意する。
この決意を父親に自分の考えと共に伝えるシーンでは父親の晃司に対する愛情を感じました。


「俺は、中途半端が嫌いだ」

「何でも全力でやるつもりじゃなきゃ、何も認めない」

「だが、お前が全力で何かをするというのなら、・・・お前が全力だと俺が判断したら」

「恋愛だろうと将来への道だろうと、全力で協力してやる。それだけだ」

「お前がどうするかを自分で決めるように、俺もどうするかは自分で決める」

晃司も親と上手くいってないように言っていたので、父親からのこの言葉は感動しました。
自分の息子への愛情、信頼などが汲み取れるセリフだったように思います。


このようにそれぞれが悲しみや辛い出来事を乗り越え、次の未来への道を作り出す...。
1章は大人としての大人だからこその意見、子供としての子供だからこその意見を持ち、
それぞれの思いをぶつけ合ったり、家族の関係や想いなど、
複雑でありながらも綺麗に描かれていていました。




2章

この世界の未来のために試練を受ける2人を指名しろと言われ麻智と逢瑠を指名したあおば。
麻智に対しては昔からの友人としての信頼を感じたし、
逢瑠に対しては思うところがないわけではなさそうだったが、
新しい世界の逢瑠と出会い少なからず信頼を感じていたのだろうなと思いましたね。

しかし、新しく作られた世界の麻智は逢瑠と一緒に興味本位で本による過去への旅へと出てしまう。
そして、この過去への旅でもあおばと同じように麻智は母親を探し会いに行くという物語。


母親を探す過程で希さん、晃司、そして5歳の頃のあおばと出会い、
過去渡航に対する良識を得ていた希さんと晃司に助けられながらも麻智は母親を探しだそうとする。
しかし、その途中あおばを死なせてしまうかもしれない状況になってしまい、
自分のせいであおばが死んでしまうかもしれない、自分がいたから...と。
自分の存在価値を否定され、一人になることに恐怖を感じた麻智は、
自分が消えれば、世界も消えるのが自然などというカエラの言葉により、
過去の自分と触れてはいけないという禁忌に触れ、世界ととも消えてしまう。

この物語では彼女はただあおばと違いひとつの目的に対して進むための力が足りなかった、
決意がなかっただけだと思いました。


また父である、隼人ととの最悪の出会いのシーン。
あおば(5歳)と共に誘拐された場面で、傷が付かないなど体が強靭という意味深なシーンがあったが、
最後までやるとなるほどなと思わされました。




3章

過去へ戻れる方法が記載された本を手に入れ、麻智を突き飛ばしたことを後悔していた逢瑠は、
その前に戻り、その過去を改変しようと考える。
しかし、実際に飛んだ場所はそれよりももっと過去。
そこで、逢瑠が今は亡き大切な人である男性と出会うという物語。

ここで麻智と違うのは逢瑠は目的や決意だけは持っていた所だと思いました。
過去を変えたいと。
大切な人である、祥ちゃんにただ会いたいと...。

祥ちゃんが本当に好きなんだなという心からの気持ちはとても伝わってきた。

しかし、ありすと偽りながらふたりで過ごす中で、
本来知るつもりのなかったことを知ってしまう。
自分の家族の暗い部分、麻智の幼少期の苦痛。
そして、麻智の母親の自殺を知り、
その過程で祥ちゃんも死んでしまい、
孤独と恐怖に苛まれる彼女。
しかし、彼女は麻智が持っていなかったそれに打ち勝つ力、
罪を償おうとする想いを持っていたために試練を乗り越えることが出来たのではないでしょうか。


元の時代へと戻り、麻智にちゃんと謝らないといけない。
そして許してもらわないといけない。
もしも、許してもらえなかったとしても麻智が元気になるように自分が出来ることはなんでもしないと...と。


元に時代へと戻り、麻智に謝る逢瑠
許してもらえるとは思えない
だからこそ、謝らなければと
しかし、それに対し麻智は
怒っていないと、突き飛ばさせたのは私だから悪いのは私だという麻智。

いじめ対象になることにより自分が存在できる居場所を作っていたのだと告白し、
逢瑠もまたそれを聞き自分と同じただ居場所が欲しかっただけなんだなと知るシーン。
ここでやっと互いに歩み寄れていたようにも感じました。






4章


この章でもまた新たな人物が出てくるが、
その人物もまた後々できちんと交錯し合っていました。

大きくなったあおばと消えた世界からやってきた希さんが出会い、
親子としての距離を取り戻そうとする場面もあった。
同じ人物でもやはりそれぞれの思い出の人物とは違うのだと戸惑いつつも、
それでも互いに歩み寄っていく姿がよかったです。


希さんが、自分に残された時間を出来る限り使い、
あおばのために未来への希望を紡いで行こうとする、
1章とはまるっきり違う姿が描かれていました。
その為にもかつての友人に協力してもらったり、
自分に出来ることは何でもしようという強い決意が見られました。

あおばが住みやすい街を未来を作るためにただただ動き回っている姿には、
母親としての強さを改めて感じることが出来ました。

未来へ新たな希望を託すために最後まで一人の親として人生を全うする。
それは彼女にとってまったく悔いのない人生だったのではないだろうか。



新しく芽吹く“あおば”のために彼女は自分からその養分となることを選んだのだから...。



麻智と優作の出会いに関しては、初め優作にあまり良い印象を持てませんでした。
麻智の父親のこともあり、チャラチャラした人物だとまた何かあるのではないかと不安になったからですが、優作は見た目や言動こそチャラいが、人を馬鹿にしたり貶したりする様な最低の人種ではないのだと徐々にわからせてくれました。

付き合い始めるまではあっさりしてたようにも思ったが、ふたりの互いに心の底から信頼しあっていく姿をみてその辺は気にならなくなりました。

このふたりがこの作品の中で一番好きなカップルでしたね。




麻智をもうひとつの世界へと送るために儀式を行うシーン。
未来を向いていなかった自分に、前を向かせてくれた麻智を精一杯の感謝を込めながら送り出そうとする優作の姿には感動しました。


優しい嘘をつき、約束をする。
その約束が守られる保障はどこにもない。
それでも彼は、大切な人の未来のために、嘘をつく。
最初で最後の優しい嘘を...。


テルサを初めほかのキャラもまたそれぞれがそれぞれに信じる者に未来を託し、自分を犠牲にすることにより、
儀式を成功へと導いていく。
全員の決意を感じられるこのシーンは感動しっぱなしでした。


未来への希望を託された者たちは、犠牲になった者たちのためにも、
前を向き未来へと希望を持ち、新たな物語を紡いでいかなければいけないのだろう。
彼らが、犠牲になってくれた者たちを忘れることは決してない。
なぜなら、未来へと歩みだし希望を常に抱いている彼らの心の中には、
未来を作ってくれた大切な人がいつまでもいるのだから...。


隼人との決着もきちんと描かれていたし、
彼がなぜそのような体になったのかなどもきちんと回収されていて
謎を残さないようにとしてるのはよかったです。

終わりのほうであおばが過去で何をして何を感じたのか知り、干渉し、
それが後の生まれてくる優作に繋がる出来事になっていたのも素晴らしかった。

また、麻智の母親に対する気持ちの整理もつけられていたのが終わり方として最高でした。
母親に伝えたかったことはたくさんある。
あおばという親友が出来たこと。
逢瑠ともいろいろあったけど、仲良くなれ友達になれたこと。
優作という大好きな恋人が出来たこと。
あおばと一緒にライブをする夢ができたこと。
ほかにもたくさんある。

それでもひとつ、ずっと聞きたかったことを聞く、
聞きたくても聞けなかったこと。

「麻智ちゃん(自分)のことは好きか?愛しているか?」

それに対し母親である栄さんは、

「大好き。抱きしめても抱きしめても、足らないぐらい愛してる」

笑顔でこう言ったのである。
子育ては辛くはないかと聞かれても、

「産みたくて産んだのだから辛くても頑張れる。麻智は世界でたった一人の、かけがないのない宝物」であると

この言葉は心の底からの思いなのだろう。
だからこそ笑顔ではっきりと答えられたのだと思う。
彼女の心の闇はこれでしっかりと晴れたに違いない。

逢瑠の過去を償うという問題は残ってはいたが、
ここで物語のひとつの終わりとして綺麗に描かれていたように感じました。




5章

この章では託された希望によって作られた未来で一歩一歩幸せに向かって歩いていくそれぞれの姿が描かれていました。
逢瑠の父親との決着。
子としては複雑な思いもあったに違いないと思います。
それでも、彼女は大好きな祥ちゃんと共に住みやすい街を作り上げるべく、頑張ることでしょう。
一緒に暮らし幸せな日々を共に過ごしながら...。

またあおばの出産も描かれていて、晃司があおばに呼びかけるシーンなど、かなりくるものがありました。

ただ、出産の後遺症か、声が出なくなる
これがあおばの時を遡った罪なのではないかと気づいた逢瑠がその罪を償うために、
自分があおばの代わりに声を失う決意をする。

ここで、前章で残っていた問題も解決し三人のヒロインの幸せな日々へと繋がっていく
また赤ん坊である優作くんが「・・・・むち」と喋ったのには感動しました。

これからどんな未来が彼女たちを待っているのか、それは誰にもわからない。
ただ、その未来で全員が幸せな笑顔をしてくれていたらいいなと感じました。




まとめ

布教されアステリズムと共に購入したのですが、想像以上に楽しめましたし、同時に感動することが出来ました。
様々な視点から描かれていたこの作品。こういう作品は久しぶりにやったのでまたこういう作品をやってみたいですね。



最高にロックな歌を未来に向けて・・・