全体的に説得力に欠ける。(長文は前半は体験版部分までの軽いネタバレまで。スペース後の後半は本編のネタバレあり)
ブランド作品プレイ経験:いな☆こい!・MagusTale・MagusTale Infinity・77・涼風のメルト・舞風のメルト・竜翼のメロディア(未クリア:いな☆こい!ファンディスク・ねこ☆こい!)
「勇者になりたかったが魔王がいなくてなれなかった」という父親の下に魔王候補として育てられた主人公が、魔王養成学校(と、勇者養成学校が合併した学園)に入れられ、来る両者の対抗戦とも言えるイベントへと挑む物語。
まず良い点は、絵が可愛らしく、ヒロイン全員がそれぞれ違った方向性で魅力的だという所。
何か最近の作品の感想ではこればっかり言っているが、そもそも絵が好みじゃなかったら買わないんだから仕方が無い。
特に水鏡まみずさんの絵はその中でもかなり好みの部類と言える。てんまそさんの絵も好みだが、どちらか、というなら水鏡派。
ただしこのブランド、シナリオの出来としてはてんまそ系列が良く、水鏡系列は駄目駄目という特徴を持つ。
そして残念ながら今回もその傾向からは逃れられなかった。
また、このブランドは前作の竜翼のメロディアを除き、全て世界が繋がっている(シェアワールド)のだが、今回はそれが足を引っ張っている。
というのも、これまでは(いなこいの様な神の力を別にして)魔法といえばマギウステイル世界からもたらされた新技術のはずだったのに、今作では登場人物の多くが特殊能力という形でそれに類する力を手に入れてしまっているから。
これじゃあ魔法を正しく学ぶというフォーティア魔法学院(マギウルテイルで登場した魔法学校)の立場が無いと思うのだが。
これが竜翼のメロディアと同じ世界、ならまだマシなのだが、シェアワールド世界だと明らかに外部の世界と比較してこの学園は浮きすぎている。
他の人の感想でも良く言及されているが、この学園を卒業して、この世界でどう生きていけというのか。
上記以外にもとにかく説得力に欠ける箇所が多すぎたのが残念だった。その辺は後半のネタバレ部分で言及。
その他、ライターの趣味なのかは知らないが、ゲームと酒を推し過ぎなのも欠点。
特に酒。こんな所に力入れるくらいなら本筋に力入れろよってくらいしつこく出てくる。学園物にそんな物求めてないって事くらい常識で理解して下さい。
ゲームにしたって趣味やちょっとした遊び心で入れるならいいが、ゲーム脳かよってくらいに出すのは余計。
体験版の時点では少なくとも日常では楽しめるかと思ったがそんな事も無く、一応クリアまでやったという点で超絶駄作のねここいよりはマシだったなというレベルの評価に落ち着いたのが残念。
セーブ:150箇所+オート30箇所分+クイック5個分+止めた所からの再開機能付き
シナリオ:2 部分部分を切り取れば3でも良いが、一つのシナリオとして並べると色々お粗末。
キャラクター:4 外見なら文句無しに5。後述する薄っぺらさが減点の原因。
BGM:4 ここは無難。特にどれが好きという事も無いが、微妙と感じる曲も無かった。
OP:4 曲は好き。ムービーは普通。
システム:4 竜翼のメロディアと変化無し。「次の選択肢へ」があれば5なのにやはりつけてはくれないのか。
主人公:3 ゲーム脳過ぎるし少しやかましい。駄目主人公という訳では無いが歴代主人公と比較すると劣る。
プレイ順:真奈→果林→みかる→響→霧江
好きな順:真奈・みかる・果林>響>霧江
■小野瀬真奈(キャラ4)
勇者を目指す正義感の塊。
外見はかなり好みなのだが、人の話を聞かないのと、霧江と毎度毎度胸ネタでケンカしてるのがしつこくて減点対象。
■黒木霧江(キャラ3)
楽という理由で魔王側(悪)につく少女。
実際には色々と考えているのでその点は高評価。
(好きな順が一番下なのは単純に外見的好み)
■神威みかる(キャラ4)
主人公の義妹。
可愛いし良い子なのだがマギウステイルの小雪などと比較するとどうにもインパクトが弱い。
■加賀美響(キャラ4)
ちくわ姫。もとい、みかるの親友。
大人しいけどインパクトとしてはみかるよりある。
■大槻果林(キャラ4)
怪力求婚大和撫子。
インパクトはあるし外見も好み。ただし果林に限らず全員、シナリオに足を引っ張られている。
■松原紫苑(キャラ3)
自由奔放な教師。
特に好みでも無し。
■天空城流比寿(キャラ4)
座敷わらしなロリババァ。
ロリババァでも可愛いのが水鏡絵の怖い所だが、出番に恵まれていないのが残念な所。
~~~~~~ネタバレ度小はここまで。以下、スペースを空けた後、ネタバレ前提のシナリオ評価~~~~~~~
~~~~~~ここからネタバレ全開放~~~~~~~
まず全体の総括として、前述した「説得力の無さ」が挙げられる。
・「母親が大魔王で父親が倒せなかったから、主人公を魔王候補というカムフラージュの下勇者として育てた」
→母親が大人しくなったなら養成する必要無いじゃん? てか学園作るほどの話じゃ無いよね?
・「経営難だから創聖学園と造魔学園が合併しました。でも校舎新築とか、本当に経営難だか怪しいよね」
→回収せず放り投げっぱなしですか? FD出すほどの良作じゃないよ? これ。
・果林の家訓は他ルートだといつの間にか無視ですか?
どうせなら家訓に「裸を見た相手に伴侶や恋人がいた場合、その女性が果林に勝てれば殺さなくても良い」って内容もあった事にして、果林以外のルートではヒロインが勝つイベントを入れれば円満に解決したのに。
・NANAの欠片を出した理由は? FD出すほど(略)
・「小競り合いがエスカレートし過ぎない様にガス抜きとしてジャスナスがある」
→あっても結構派手なやり合いが常時ありますが? 霧江ルートに至っては「ジャスナスの前哨戦」って理由で仕掛けようとすらしてますよね。
・「アトリアは真奈の体調ややる気にもよるが、全ての物を切り裂ける」
→カマキリを中心に刀身の当たる音がしてるのは何で? 何でカマキリ折れないの? 一応霧江ルートでは「本気でやってない」とは言ってるが。その割にはジャスナス本番でも同じ感じなんだけど。
とまぁツッコミ所があるある。
その他、全体の感想としては、7章の各ヒロインごとの日常パートが一番駄目な出来だった。
過去作など、大体の作品なら日常といっても章ごとのテーマがあり、その大きな流れを前提として日常を過ごすのだが、今作は本当にただ日常をブツ切りにして詰め込んだだけだった。
話の進み方が過去作なら1→2→3→4→5と進むのに対し、今作は1→1→1→1→1といった感じ。
あと、同じ話題ばかりを振り過ぎな点も減点対象。
特に真奈が霧江に対し胸が小さい事を言い、霧江がそれに怒って斬りあう、というパターンがあまりにも多すぎた。
そもそも霧江は別に胸が小さめではあっても小さくは無いし、1ルートで5回も10回も同じオチを見せられたら飽きるに決まっているだろうに。
普段はある(ねここいは共通で投げたしルナリスフィリアは体験版で消しだったので水鏡系列に普段からあるのかは知らないが)トゥルールートが無かったのも残念だった。
清春の能力の覚醒がどのルートでも唐突過ぎたので、各ルートでは各ヒロインの能力がクロシェットのカミカゼエクスプローラーみたいにセカンドに進化して問題解決。トゥルーでアマオト覚醒とすれば良かったのに。
各ルートごとの感想については以下の通り。
■小野瀬真奈√(シナリオ3)
付き合い始めて最初の日くらいは窓を突き破って来てもいいんだが、それがずっと続くのはどうかと。
しつこいほど突撃が続いて、いざ最強の窓を用意した頃に扉から入って来て「常識的な私はどう反応すればいいの」的な態度を取られても説得力が無い。
ジャスナスの決着がついた後、唐突に流比寿との戦いが始まるのも意味不明。
■黒木霧江√(シナリオ3)
霧江の善悪観と、それに対する考え方は良かった。
ジャスナス当日はちゃんと戦っていたのも他ルートに比べると高評価。
ただ残念なのは父親がポッと出て来てそれでお終いという所。
その辺にちゃんとスポットがあたるかと思ったのに。
■神威みかる√(シナリオ2)
くっつくのが唐突過ぎる。
これまでの流れを見ている限り、みかるが清春を一人の男性として意識している様にはとても思えなかった。
小競り合いがしょっちゅう起きてるのにジャスナスだけ止めたいというのも甘っちょろいし、その為の第三軍とかどこのシードだよと言いたい。
止め方も論破された後に泣いてハプニング起こしました→強い気持ちのお陰でハプニングじゃなくて奇跡が起きる様になったよ!
……馬鹿?
あと夢風車、あれだけの登場なら無くても変わらん。出すならちゃんとジャスナスを止めるのに有効な使い方、くらいは見せて欲しかった。
■加賀美響√(シナリオ3)
付き合うまでの前後、響が自身の能力を怖がっていた事と、それに対し清春が動物の協力を得ながら勝負に勝って響を受け止める所は良かった。
ただ、唐突にNANAの欠片が絡んだせいで微妙な展開になったのが残念。
■大槻果林√(シナリオ3)
怪力と重力制御じゃ全然能力違うよね? その違いに終盤まで気付かないってどうよ?
あとジャスナスは生徒のガス抜きのはずなのに、代表戦にしちゃったのもどうかと。いくら真奈からの提案とはいえ。
元々面白くなりそうな素材ではあっただけに調理失敗というべき成果になったのが残念。
次回作ではいい加減ハズレの水鏡ラインという悪評を覆して欲しい。