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風間さんのあえて無視するキミとの未来 ~Relay broadcast~の長文感想

ユーザー
風間
ゲーム
あえて無視するキミとの未来 ~Relay broadcast~
ブランド
ALcotハニカム
得点
70
参照数
999

一言コメント

コンセプト倒れではあるが、内容としては良作。(長文は前半は体験版部分までの軽いネタバレまで。スペース後の後半は本編のネタバレあり)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ブランド作品プレイ経験:無し
関連ブランド(ALcot):幼なじみは大統領


未来視の能力を持つが、視た未来は変えられないという理由で無気力に生きていた所、同じ能力を持つ少女と出会い、放送部の活動を通じて青春の為に交流して行く物語。



――と書いたは良いが、実際の所主人公は別に無気力でもなく、むしろハッチャケ系主人公だったりする。
その他色々コンセプト倒れな所があるので、体験版範囲までをプレイして想像した流れにはまずならないだろう事は先にお伝えしておく。
それでも各ヒロインごとの話自体は悪く無いし、ALcot系列お得意のギリギリまで踏み込んだギャグを楽しめる人なら日常部分も面白くプレイ出来るだろう。
さすがに幼なじみは大統領ほどアウトギリギリでは無いが、この辺のセンスはさすがALcotと言った所か。


セーブ:80箇所+クイック+止めた所からの再開機能付き


  シナリオ:4 各ルートの整合性や、コンセプトを反映しているかという点を考慮するなら3。
キャラクター:4 全員悪く無い。特に計はかなり好み。
   BGM:4 最近の他作品の感想と被るが、全体的に悪く無い。
    OP:4 悪く無い。インパクトの点では若干他作品に劣るが。
  システム:3 可も無く不可も無く。セーブ数がもう少し多く欲しかった所。
   主人公:4 暗い過去を背負っているというのは好きな系統。未来視をもっと上手く使って欲しかった。

 プレイ順:七凪→南→計→爽花(一部ルート制限あり)
 好きな順:計>七凪>南>爽花
 


■三咲爽花(キャラ4)
 未来視の力を持つ転校生の青春娘。
 悪くは無いのだが自分のルート以外では影が薄いのが難点。

■沢渡七凪(キャラ4)
 ちょっと毒のあるブラコン義妹。
 ブラコンの徹底具合は見ていて気持ち良くなるほど。
 ブラコンになった理由もきちんとはっきりしているので、その点も良い。

■橘南(キャラ4)
 おっとりぽやぽやな先輩。
 悪く無いが爽花同様自分のルート以外では一歩下がった立ち位置の為影が薄いのが難点。
 七凪と計(と流々)が濃すぎるのが原因なんだが。

■真鍋計(キャラ5)
 夫婦漫才じみた関係の幼馴染。
 可愛い、スタイル良い、声も良い、ノリも良い、それでいて察する所は察して手を差し伸べる所は差し伸べて見守る所は見守ってくれる。
 この作品に限定しなくてもかなり上位に来る好みのキャラ。
 少なくとも桐谷華さんが出演している作品を最近良くプレイしているが、彼女の演じるキャラの中では一番声がハマっていて好み。

■田中流々(キャラ4)
 もう一人の転校生兼もう一人の幼馴染。
 計同様(ややイジられ側だが)ノリが良い。
 正直サブキャラなのが残念。せめて計ルートの派生で二人共、なルートがあれば良かったのだが。


~~~~~~ネタバレ度小はここまで。以下、スペースを空けた後、ネタバレ前提のシナリオ評価~~~~~~~





















































~~~~~~ここからネタバレ全開放~~~~~~~

まず全体に対してだが、「コンセプトが活きていない」という点が挙げられる。
確定した未来を嘆く主人公は努力を虚しく思い、何事にも熱心になれないという事だが、本編ではそんな事は全く無く、計達とはっちゃけたり日常で色々と努力をしている。
また、未来視が本編の重要なキーになりそうだったのに、実質それがちゃんと活きたのは爽花ルートのみだった。
というか爽花以外は過去(七凪は幼少時、計は10年弱前と1年前、南は1年前)の出来事がメインで絡むので、未来よりもそちらに比重が置かれてしまった印象。
「爽花と付き合う未来を視た」といってもそんな物はルート選択で他人のルートに入りましたよ、という程度の物だし。
この未来を覆した事によりどうだ、というのが無いなら視る必要も無かったのではなかろうか。
自分はASa Projectという毎度コンセプトぶち壊し(ただ面白い)というブランドの作品をやっているのでコンセプト自体はそこまで気にしていないが、気にする人だと微妙な気持ちになるかも。

後はブルマ師匠の存在が微妙に終わってしまった点が残念と言える。
爽花がブルマ師匠と瓜二つ、しかも年の離れた姉がいると最初から話しているのに、そこに喰いつかない主人公には違和感を覚えた。

ちなみに本編で良く挙がっているアンテナだが、フォールデッド(折り返し)では無くただのダイポールアンテナ(Wikipediaを見た限りだと八木・宇田アンテナのUHF用?)に見える。


各ルートごとの感想については以下の通り。


■三咲爽花√(シナリオ3)
 未来視の力がメインテーマとなる、本来のコンセプトを活かしたシナリオ。
 ……なんだが、それ以外の三シナリオが未来視何それ状態な為(しかもルート制限の関係上このシナリオが必ず最後になる為)、「あ、今さら未来視っすか、そうっすか」と言った蛇足的なイメージを持ってしまったのが残念。
 未来視が出来るという事を他メンバーに公表するという点は好きだが、どうせなら過去の両親の死を止められなかった事も何だかんだで皆が知った方が更に好みの展開ではあった。
 欠点としては爽花が船で沖に流される点が少しお粗末だった所か。
 EDで姉から爽花の未来視の方が姉より詳細が分かると言われているのに、主人公が死にかけている未来では周囲の地形は分からなかったのだろうか?
 仮に海(砂浜)が視えていなかったのなら高性能な未来視とは言い難いし、視えていたのなら海に行った爽花の行動があまりにも軽率と言える。
 EDでの転校の理由としてはしっくりきていただけにそことの矛盾が残念だった。
 ED自体はサブタイトルを含めていて良い終わり方だと思う。
 

■沢渡七凪√(シナリオ4)
 自身が主人公の両親を奪う原因となってしまった、という定番といえば定番なシナリオ。
 この展開の場合どれだけ主人公側がヒロインを受け入れられるかという所がポイントだが、幼少期の七凪の存在が主人公が沢渡家で暮らす理由になる等、互いの存在が良い形でまとまっていた。
 七凪√では語られないが、その後事故の根本的な原因を知った主人公と、それを計が支えた事によって乗り越えたという過去も、七凪を受け入れる点で良かったと思う。
 

■橘南√(シナリオ3)
 1年前に既に主人公と南が肉体関係にあったというのがちょっと唐突過ぎる様に感じた。
 後、このルート以外では水泳部の奴らの妨害は無かったんだろうかという疑問も。
 主人公や小豆先生が守りたいものの為に啖呵を切る所は好き。

■真鍋計√(シナリオ4)
 計と流々のある種優しすぎる友情が良いルート。
 まぁ南ルート同様、他ルートでは流々は再転校しないんですか? という疑問も。爽花の方もか。
 主人公(や、付き合う事により環境の変わったヒロインや周囲)が原因で起きた事では無い事柄が根幹を占めるとモヤっとする所が出てしまう。
 とはいえルートの内容自体は好きだし、計の良妻っぷりを見ているだけでも楽しいのだが。
 出来れば流々込みでの派生ルートも欲しかったけど。