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風間さんの祝福の鐘の音は、桜色の風と共にの長文感想

ユーザー
風間
ゲーム
祝福の鐘の音は、桜色の風と共に
ブランド
すたじお緑茶
得点
68
参照数
3441

一言コメント

絵柄や雰囲気は良いが、話の膨らみが小さかった事と、何より短かった事が残念。(普段は長文は極力ネタバレ無しだけど、今回はある程度内容に言及しないと書く事が無くなるのでそれなりにネタバレあり)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ブランド作品プレイ経験:片恋いの月・片恋いの月えくすとら・恋色空模様・恋色空模様FD(+購入のみまだ未プレイでマジカライド)

父親との貧乏暮しが限界に近付いたある日、自分が名家の血を引く唯一の男児である事が分かり、借金と引き換えに跡取りとなるものの、1年で嫁を探さなくてはならなくなった主人公の物語。

まず良い点を挙げるなら、何と言ってもヒロイン勢が可愛い事にある。
無理やり婚約者にされた従姉妹、音楽家の家系に生まれた後輩、当主同士が敵対している家の娘な先輩、ハプニングをきっかけに一目ぼれされたクラスメイト。
この四人が全員絵柄も声も可愛らしく、興味なしなヒロインがいなかったのは個人的に良い点だった。

ただし、残念ながら今回は名作だった恋色空模様と比べ、というか前作が名作兼大作だった恋色空模様だからこそ悪い点、前作より悪くなった点というのが多く見受けられた。
まず、何と言っても各ルートが短いという事。「えっ、ここで終わるの!?」という終わり方が殆ど。
正直一人を共通から個別までクリアするのと、恋色空模様の共通ルートの第一部を終わらせるのとでは前者の方が早いのではないかと思うほどだった。
プレイ時間も短いが、物語の時間経過も短かった点も欠点。
鳳家の当主である祖父から1年の猶予を与えられているのに、共通ルートが終わるまで僅か1か月、個別が終わるのに更に1か月程度しか時間が経過しない。
選択肢によってはバッドエンドとなり、またそのパターンもそれなりにあるのだが、(バッドエンドがある事自体は良いが)そこに力を入れるなら本編に力を入れて欲しかった。
片恋いの月や恋色空模様では食卓を囲むシーンなどはキャラの立ち絵が使われ、一部で顔アイコンが使われる形だったが、今回はそういったシーンでも顔アイコンだけという事が多く、全体的に手抜き感があった事は否めない。
(追記:そういえば、今時二重敬語で誤用の代表格となっている「仰られる」を使っているのはどうかと思った。特にこういう執事とかきちんとした言葉遣いをするべき人物が言っているのを見るとガッカリする。仮にもプロの物書きだというのに……)

もっとも、全体の雰囲気は悪く無いし(だからこそ短いのが惜しいのだが)、フルプライスに見合うかは些か疑問ではあるものの、買って後悔したという出来では無かった。
体験版プレイ後の購入前感想に書いた「狭い範囲での物語になりそう。名作では無いがメーカー買いの人には外れにはならない」という予想がまさにドンピシャだった。


セーブ:セーブ数無限?(片恋いの月と同じく、フォルダを作ってそこに保存する形)+シーン切り替え時・終了時等自動セーブ20箇所

  シナリオ:3 設定は悪く無いものの、それを活かしきれていない。
キャラクター:5 ヒロイン勢はみんな可愛い。今作を外れにしていない貴重なポイント。
   BGM:4 突出して良い曲がある訳では無いが、今作のイメージに対する親和性が高い。
    OP:3 悪くは無いが印象に残らない。二周目以降は選択肢から始めるから特に。
  システム:2 「未読でもスキップ可」にチェックを入れないとCtrlで文章を飛ばせないのは面倒。
   主人公:3 親を大事にする点は好感触。全体的には悪く無いのだが、ほいほい覗きに参加する軽さや、友人である隼人への扱いが悪い事が前作までと比較して減点対象。

プレイ順:奏音→紗夜→まりあ→うらら
好きな順:まりあ>他三人>七歌(とはいえそこまで差は無く全員好み)


■鳳まりあ(キャラ5・シナリオ3)
祖父に無理やり決められた許嫁兼従姉妹。
名家の娘として厳しい面があるが、その中でも相手の為になる事をしている出来る娘。
特にうららルートは個人的に好きだった。
まりあルートのまりあは何と言っても可愛いの一言。
ぬいぐるみを貰った後の反応は予想通りで良かった。そもそも八重歯がちらっと見える外見が可愛い。
シナリオも発生した問題を権力を使わずに解決し、更に言うなら自分を侮辱されても我慢するけど母親を侮辱されたらブチ切れるという、主人公の譲れない部分を見せた点は好きだった。
何だかんだで相手との遺恨を遺さなかったという意味でも良し。

……が、何故に中間テストなんて半端な場所で終わる?
最後の手作り結婚式は途中のイベントとしてやって、夏・クリスマス・新年といったイベントをイチャイチャで流しつつ、エンディングは卒業式で同時に結婚、となれば良い終わり方になったのに。

■西九条奏音(キャラ5・シナリオ2)
音楽家の家系に生まれ、将来を期待されているピアニストな後輩。
素直で優しい性格と声も相まって(全ヒロインそうだが)好きなキャラ。

シナリオとしては他ルートよりちょっと残念な面が目立つかも。
奏音自体は悪く無いのだが、主人公がうっかり告白とか残念な面が出てしまい、しかもそれが理由で奏音が指を怪我してコンクール辞退という展開が(良主人公が好きな自分としては)微妙だった。
まりあルート同様「休みに海に行こう」となって次のイベントかと思ったら終わり、という短さも減点理由。
奏音だけのコンサートをやったのは良いが、半年後くらいに別のコンサートに出て無事に賞を取る、といった形でエンディングを迎えても良かったのではないだろうか。
あと、せっかく音楽家なのだから主人公の父親にももっとスポットを当てて欲しかった。
一応父親なりの道を見付けてはいるのだが、あれではちょっと物足りない。

■北園紗夜(キャラ5・シナリオ3)
祖父同士の仲が悪く、敵対している家の娘という立場の先輩。
小さくて可愛いのにどこか妖艶な雰囲気を持つという、本編でも語られている特色が出ていたのが良かった。
ただ、恋人同士になった後のイチャつき具合にちょっと微妙な部分があったのは残念。
家出前のイチャつきは紗夜が述懐していた通り「どうせ引き裂かれる仲ならせめて精一杯イチャつきたい」という事で何もおかしい点は無かった。
……が、両家の問題が解決した後もホームルームを無視したり他ヒロインに見せつけるレベルでイチャつく必要は無かったのではないかと思う。
正直あそこまでいくといわゆるKYという感じがしてよろしく無かった。

シナリオはやっぱりあっさり解決し過ぎな印象。
一番話を膨らませられそうなルートがここなだけに勿体ない感じがした。
溝の深まった両家の問題を解決する為に主人公と紗夜だけでなく、他ヒロインや隼人、更には全員の親や家の業種をフルに使って立ち回る、くらい話が展開して最終的に婚約出来るのは期限の1年ギリギリ、早くても秋以降になるまで引っ張ってくれればかなり面白いルートになったと思う。

■東雲うらら(キャラ5・シナリオ3)
廊下で激突したのをきっかけに主人公に惚れたクラスメイト。
なら簡単に付き合えるじゃんと思いつつ、ルートに入ったら問題が起きて向こうが逃げるのはお約束。
もっとも、その引き金を引いた主人公の回りくどい言い方が微妙だったが。

個人的にこのシナリオで好きだったのはしおらしくなったうららだが、それ以上にまりあが良かったと思う。
「何故うららに対してキツい態度を取るのか」の理由(うららが親の仕事に思ってる事)等、まりあの信念、陰口を叩く卑怯者にならない強さ、それでいてうららを見捨てる訳では無い優しさはこのルートの一番の見どころだと思う。
あと、隼人が格好良いのも良かった。
……が、それだけに各ルートの隼人の扱いの悪さも気になってしまったが。主人公もうちょっと優しくしてやれよ。
やはり男の友人は片恋いの月や恋色空模様みたいに二人いた方が良いと思う。

とりあえず、このルートは(絶対量としての短さはあっても)終わり方としては他に比べれば妥当な形かと。

■青野七歌(キャラ5)
……で、何故ルートが無いのかね?
最初まりあ狙いでバッドに入った時、てっきり七歌ルートに入ったと思ったのに、まさか何も無く終わるとは。
各ルートの終わり方が半端だった事もそうだが、FDでも考えているのだろうか。
正直それならまず先に本編を充実させて欲しかった。