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野菜炒めさんの僕と、僕らの夏 完全版の長文感想

ユーザー
野菜炒め
ゲーム
僕と、僕らの夏 完全版
ブランド
light
得点
85
参照数
216

一言コメント

テーマは決別。地味だけど恋愛ものの名作の1つ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ダムに沈む故郷への決別、純真な子供時代への決別。
ついでに言えば恋愛成就より別れのシーンのが心に残る作品。

ヒロインは一応3人いるけど実質1人のようなもの。
相思相愛の主人公と貴理が素直にさっさとくっ付いてれば誰も振り回されずに済んだのに。
この2人を中心に振ったり振られたり時には寝取られたりと色んな恋愛描写が楽しめる。
素朴で地味な作品に思わせといて出てくるキャラは妙に人間臭いんで案外ドロドロしてたりもするがそこがまた面白い。ただ修羅場とかそういうのは無かったと思う。

1つの恋愛を主人公&貴理、英&有夏、冬子の視点で見て行くことになるんであの時のこいつはこんなことを・・みたいな楽しみ方は出来るが、さすがに冬子あたりまで来ると展開自体そこまで変化ないせいでダレてくるのが欠点。

この作品やったのは随分前になるけど今でもはっきり覚えてるほど印象に残ってるシーンがある。
有夏に先を越されてそのまま主人公を盗られた貴理が主人公に別れを告げ最後に背を向けて歩き出すシーン。
そこの貴理の台詞と笑いながら泣いてる表情が当時余りに切なくて綺麗ですごいインパクトがあった。
ここの分岐で貴理の気持ちに気付いた主人公が追いすがる有夏を振り切って貴理に走った後で有夏との最後の別れのシーンも印象にやたら残る。
裏ルート屋上冬子さんもいいんだけどやっぱ貴理が一番好きだったなぁ。
今までやった作品の印象に残るヒロイン5指に確実に入るくらい好き。

ヒロインとは関係ないけど主人公が村に滞在してる間の下宿先の爺さんが村が無くなる前に遠くの町の老人ホームに行くらしいというのがなんかすごい寂しかったのも覚えてる。

心理描写に優れた恋愛ものやってみたいならお勧め出来るけど
起伏に富んだファンタジーみたいな恋愛を望む人。
ヒロインが主人公以外のものを選ぶことが耐えられない人。
は多分この作品は避けたほうが良さげ。
展開が地味でも構わないとかノスタルジックな気分に浸りたいとかならお勧め。