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野菜炒めさんのCROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-の長文感想

ユーザー
野菜炒め
ゲーム
CROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-
ブランド
CROSS†CHANNEL
得点
90
参照数
381

一言コメント

本編だけで完成してると思った。後のおまけはすべて蛇足になりそうな気がする。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

無茶苦茶面白かった。
人は人無しじゃ生きていけないし成長もない。
そんな感じのテーマだと思う。

確かに主人公にはほぼ共感は出来そうもない。
他人を傷つけてしまう衝動が抑えられなくなる。
人を理解出来ないけどだからこそ普通の人間になりたくて人を欲してしまう。
その辺の葛藤がはっきり分かるようになるまでは好きになれるタイプではないと思う。
セクハラも酷いしね。一部もうセクハラレベル越えてるし。

主人公にやっと共感・・・出来るようになるのって部員を全員元の世界に送還するために奮闘し始めてから
それから心が壊れてしまった原因が分かってからになるような気がする。
なのでほとんど終盤になるのかな。

でもこれがあるからラスト付近で自分が母親に愛されてたこと思い出した主人公が今までどうしても流せなかった
涙を流すとこですごい泣けるんだと思う。
恥ずかしながら結構涙腺に来たんよね、このシーン。
そしたらずっと疑問だった七香がなんで度々出現することが出来たのかみたいなのがどうでも良くなってきた。

ここでようやく自分の中の狂気が消え去る?(ほんとに完全に消えたかはなんともだけど)んだけどその時は
すでに全員送還済みで周囲には誰もいないという皮肉。
そういう切なさ、寂しさがあるから余計印象に深く残るんじゃないかと。

ただこれだと余りに救いがないのではないかと思ってしまうが最後にはあれだけ欲した
まともな人間にようやくなれたんだからそれだけでも十分救われたんだと自分は思う。
一応部員たちとのそれまでの交流(特に送還編)も無駄では無かったんだよね。
と言うより無駄だったとは思いたくないだけだが。
そういうのがあって最後は母親の愛?を思い出せて存在を肯定された、存在してもいいんだよみたいな感じ
で普通の人間に戻れたのかなと。
元々曜子(状況的に曜子が100%悪いとも言い切れないが)のためにしたことが曜子に存在を否定(恐怖)されて
心が壊れてしまったらしいので。

そんな主人公の放送を元の世界に戻れた部員達が聞くエピローグも完璧だった。
でも2つだけ疑問が残る。
1つは飛ばされた先にいた世界の黒須君がどこに消えたのか。
他の部員含む人間達は全部黒須君が消したはずだけど当の本人が見当たらない。(見落としたのかもしれないが)

もう1つがラストで眠る主人公の元に飛んだ先の世界で殺された部員たちの霊が現れた後に蝉が鳴くシーンで
物語が終わるんだけどこれはどういう意味なんだろう。
生き物がすべて消えた世界で蝉が復活?ということはあの世界にも生き物が復活してきたんだろうか。
言うても死んだものはさすがに蘇らんだろうけど。
あるいは元の世界に帰還出来たのか。
これは都合良すぎる解釈のような気もするけど。
でもまぁこっちなら完全にハッピーエンドになるよね。

キャラについては一番好きだったのは七香でw
部員でもなんでもないんだけど。見た目込みのあの性格が好きで。

後の面子はほぼ等しく・・・って感じかな。
嫌いなキャラはいなかった。
と言いたいんだけど曜子だけはあんまり好意的に見れなかった。
なんか機械みたいで人間ぽく見れなくて。
この子がちょっと好きになれたのって曜子送還エピソード見てからになるんよね。
ああ、ちゃんと人間だったんだみたいな感じになって。

送還エピソードは多少冗長なとこもあるけどどれも良かった。
一番心に響いたのは眼鏡先輩と友貴の姉弟の話。
元々眼鏡先輩が最初に主人公に声かけたのが始まりだから自分の中ではこの人は他の面子より
ちょっとだけ特別だったてのもあるけど。
友貴て多分この面子の中では一番まとも?だよね。
群青送りなのは足のケガが原因なのか。
まさか極度のシスコンで群青送りはないだろう。

次に好きだったのが桜庭かな。
短めだったけど意外とグッとくる。
男の友情は素晴らしい。
エピローグの「久しぶりだな親友」がいい意味でやばい。
多分彼は大体のこと察してたような気がする。
それでも親友だと言えるのが泣ける。

送還後のその後は霧だけ普通の学校に編入で残りはそのまま残留なんかな。
正直な話、霧はここで美希と離れたのは幸運だったと思う。
美希というキャラ自体は嫌いではないんだけどかなり危ないでしょこの子w
生まれついてのサイコ。相手を道具にしか見れない人の近くにいてもいいことなんも無いと思う。
黒須君は特別としても次に危ういの間違いなくこの子だと思うんだがどうなんだろう。

そして送還後に一番やっていけそうもないのが冬子。
主人公に代わる新しい依存先を見つけたとしてもすぐ逃げられるだろあれは。

物語全体で最も印象に残ったのが実は新川豊。
最初に黒須と会話してた時はまさかあんなことになるとは思わんかったけど。
黒須との会話・・・関係が好きだったのもあるからショックだった。
同時になんか考えされられるキャラでもあった。
このキャラは幼少期に黒須と因縁があったんだけどその頃の記憶が全部消えてて結構いい奴に
なってて今は主人公と友人関係にあるんだけどふとしたことでこいつが昔自分に酷いことしたの思い出し
ちゃうんよね。
その時どうするかみたいな話。
結果的に言葉で自殺させてしまうんだけどここがね・・。
勿論、主人公の制御出来ない狂気みたいなのもあるだろうけど意外とこの時のこと気にしてるのがね。
そういうのがなんか余計悲しいというか。
あの時にそんなんもう気にするなと言ってやれば良かったとかあいつ(豊)がいればもっとマシな自分になれた
かもと後に主人公が語るのを見ると色々考えてしまう。
自分だったらどうしたろうとかも考えるけど難しいよね実際。
ただそれでも生きていて欲しかったキャラなんだよね新川豊は。
少なくとも男連中とはいい友人になれたんじゃないかと思う。

18禁でも楽しかったり感動したり出来る作品て結構あると思うけどものすごく揺さぶられるような作品て
かなり少ないと思う。
人によってその作品がなんなのかは違ってくるだろうけど個人的にはこの作品がその1本だった。
やれて良かった。
この作品て人間関係(特に友人関係)でちょっとした後悔だとかあの時ああすればみたいなのがある人のが
もしかしたら心に響くものがあるのかもしれない。

おまけはトモダチの塔も含め迷いはあったけど本編の感動が薄れるのがなんか嫌でスルーすることにしようと
思う。