ErogameScape -エロゲー批評空間-

自分探し3級さんのStarTRainの長文感想

ユーザー
自分探し3級
ゲーム
StarTRain
ブランド
mixed up
得点
96
参照数
1860

一言コメント

全国のサブカル好きな少年少女や中年の皆さんにお知らせがあります。もうSTRやった? ゲームの一種なんだけどー、より小説や漫画や映画の文法に近くて自然に読めるっていうかー。 全国の悩める少年少女や中年の皆さんに繰り返します。もうSTRやった? 生きるエネルギーをもらえる、掛け値なしにいい作品のことです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

コピーに二度目三度目の恋ときてる時点でなんとなく期待できることがあると思います。なんか他のエロゲーで体験できないことがいろいろできそうだなー。と、そう思ったならばナイスジャッジ!! 業界内で誰より期待できるライターです。


◎まずは総括した感想。  

テーマも、それをまとめる力量も素晴らしいものでした。
テーマは青春です。恋愛もそうだが、主に探し物のほうです。「生き方」「自分の証明」「生きてく理由」などなど、中々にフルコースです。ご馳走様でした。
で、それらをどう作品全体のテーマとして総括してみたかというと「幸せ」らしい。タイトルに書いてますからね。まあテーマうんぬんはどうでもいいでしょう。なんとなく、プレイ後に生きる力が湧いてくる作品に仕上がってます。

そこはかなり重要なんですが割とどうでもいいです。魂に効く作品なら1つや2つあるんで。いや、ないかも
この作品が素晴らしいと感じたのは、テーマどうこうといったハートで感じる部分よりも、ストーリー構成に関する部分です。

物語って、筋が通ってなくて、すごい勢いで置いてけぼりにされると、げんなりしますよね。
特にエロゲーみたいに、暗黙の約束事が多いジャンルだと、いくらリアルな作品でも、むしろなまじリアルな作品だからこそ、ハズしてはいけない所で「何でそうなるん?妥協?」って期待を裏切られることになります。裏切られ続けてきました。
同じ原画家さんの「A profile」かなり面白いんですけど何がやりたいんだか分からない展開が多々あって、読者なめてんの?とか思いました。青春させたら最高峰「cross channel」なんかは、いやそもそもループする意義は?って感じだし。

私が言いたいのは、このライターが、テーマに沿って理屈にかなった流れ・シナリオを構成することに関して極めて敏感ってことです。
オープニングや奏の要所、モッチーの全て、七美も全編にかけて特にそう思いました。(七美終盤はそれでもムリした感があるが。飛鳥は私には意味不明でした。)
特に、モッチーなんかは1から100まで全てが予定調和というか、いちいち納得できる展開の中で伝えたいことを浮き彫りにしていると思います。ツッキー、モッチー、マイコがそれぞれの役割を完璧に担っていたと。アナルだけは計算外でした。
七美でも、扱うべきテーマを扱い、ムダに重いながらも作品全体としてまとめるべき方向にまとめていたと。
理屈をつけるなら、この作品で適用されてる文法は、エロゲーのそれとは一部異なります。二度目三度目の恋が許されるという、それだけでずいぶんシナリオの流れにおける不自然さをなくし、知ってか知らずかキャラに生きた感情をもたせたのかもしれません。

別にこのライターが凄いんじゃなくてエロゲーがおかしいんです。少なくとも、私が今までやった50本程度の作品の中では、最低限筋が通ってると思えたのは超短い「沙耶の唄」や、超単純なジャンルである「プリっち」「Fate」並びにその系統の話くらいなんで。
もちろん、それがいいってわけじゃないです。「cross channel」面白いから。「A profile」はやる度に夜中走り出してしまうし。他にも高得点つけたりしてるのは「車輪の国」「Fate」などなど、娯楽性の高いものばっかです。
エロゲーの可能性を一つ感じれたのが嬉しかった。それだけのことです。今後にも期待してます。


(一応補足しておきますが、ここで主張してるのは「リアルである」ということとは関係なく、「物語らしい」ということです。もちろん相応のリアルさを含むことになると思います。ついでに「物語らしい」とはいえ「王道」というほど不自然でもないです。その相応のリアルさというのは、エロゲの中だと随一ってだけの話です。
・・・・頭悪い言い方ですね。極めて端的に言うなら・・・・直木賞ねらってみない?ってことかな。普通ってことです。)


追記
>エロゲーがおかしいんです。

勢いでずいぶん独善的な書き方してますが(もちろん本心ですよ)、逆に言えばエロゲの癖にエロゲの解読法からやや離れてるのかもしれません。エロゲにしろ小説などにしろ不文律が一定でないと読みようがないですからね。
(例えば奈美ルートの有無、もしかしたら大半のエロゲー・一部の小説・わりと現実ではありえても、私の中では話的にありえなかった。
例えば七美ルートは私の中では「実は息切れしたでしょ?」なんてこともなく大筋的には何の疑問も持てなかったが、腑に落ちないという人が多数)

人を選ぶ作品であることは確かなようです(仮説①エロゲ歴短い人は受け入れやすいかも??理由:最近は「王道」が出尽くしたこともあり多少読者が筋を考える余地がある作品が多そう。)
あたりまえですが、いろんなレビューを参考にしてほしいです。

はやくこんな作品ばっかりになってくれないかなー。ひとり言ですが。






●各ルート一言感想というかメモ。 (注 疲れてきたんでぐちゃぐちゃ。やる気がでたら書き直す)


オープニング 91点
Hって痛いね・・・その人が近くなるのにすごく遠く感じる・・・
先輩がですね、キャラ的にも位置的にもたまらない人でした。彼女は初恋そのものでした。一言一言が心の語録行きでした。
こういう心情ぶっちゃけすぎなのって、人を選ぶんだろうか。確かに、スキルートに入れずナカヨシルートで終わってしまうわけだから、他のゲームではありえないことではあるよね。モッチーみたいなのってあまりいなかったですね。まあ、合う合わないは人それぞれかもしれないが、こういう洗練されない魂をそのまま削り出したような文体がクリティカルなんだよね。


奏 94点
エロゲーも捨てたモンじゃないじゃん。だってさあ、普通の恋愛小説じゃこうも大ボリュームでだらだらと心情を書き綴ったり、ラストの先輩の超笑顔を見て胸キュンできないでしょ? 
前半は大いにエロゲーらしくだらだらしてて、車に轢かれて死ねばいいいっそ死にたいくらい自意識過剰で(仮に主人公がモテモテでもみんな離れてくだろ・・・・と思うのは毎度のことだが)ずいぶん引っ張りましたが、それだけにあの完璧すぎるタイミングのキスから、ラストまでの流れが良かったです。


飛鳥 65点 
キモイですね。何も考えず何も感じず何も選び取らなかった、あの伝説の男TAKAYUKIを髣髴とさせるキモさでした。
もちろんツッキーは基本的にキモいですよ。ただ、他のルートみたいに、ヘタレモードで弱さを隠さないツッキーは悪くないんだけどね。本当は俺も人のことは言えないかも


モッチー 109点◎
あ、やべー臭いのキタ。でもこの臭さがイイんだろ? ほらよ、ご馳走だ!
それがまだの人にも、進行中の人にも、忘れられるものなら忘れたい人にも、青春のフルコース!! 俗に言う自分探しってやつです?

モッチーといて楽しい。寂しいからメール。うそっぽさを感じて別れる。弱い自分とか関係なしにぶつかろうとするべきなんだよ・・・言うべきことはマイコが言ってくれる。漫画を読んで体調を崩す。愛してるって誰に言う? 探し物はなんだろうか、見つけにくいものだろうか。深刻そうに悩んでたのに、旅して暗い暗い道を抜けた先には・・・。
いや、改めて・・・青春のぉおおおおおーーーーーーーっっフルコーーーーーース!!!!!
なにしろフルコースなので、誰もが通る青春の軌跡全てなので、どこかで心のフックにひっかるでしょう

ちゃんと奏告るシーンあって良かった。個人的にはそのまま奏と付き合い始めてエンディングでもありだったんだけど・・・二度目、三度目の恋ってあるし。いや、なしだな好きになったんなら仕方ない

「尿道炎になりませんように~」 ・・・・・・・・・・・・・そうか。まあモッチーだし。これからも何度かプレイするつもりだからまぁよろしく


七美 120点★
皆さんに重大なお知らせがあります。
モッチーでお腹いっぱいと思ったら、まだまだありました。青春の終着駅~生きてく理由~
「世界は綺麗だから」・・・・・といった電波の数々を敏感に受信してしまったら、なんとなく展開や伝えたいことは読めてしまうと思いますが。
まあ、向かうべき方向へ向かってくれたと思います。
あえてツッこむなら、ここまでツッキーに自分に浸ってもらうのがリアルかどうかが判断つきませんが。

エンディングいいですね。こーゆーのも好きです。
なんかまるで・・・・新しいスタートラインに立ったA君とBさんが付き合うべきか否か、新しい物語が始まる・・・・みたいな。実際2秒後には終わってるかも知れませんが。 

最高!!





つうか、愛してます

「StartingLine」には運命感じました。