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神月さんのレコンキスタの長文感想

ユーザー
神月
ゲーム
レコンキスタ
ブランド
コットンソフト
得点
84
参照数
440

一言コメント

生と死について考えさせられる作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 大切な人ともう一度会いたいというのは、大切な人を失ったことがある人ならばだれしもが思うことだろう。しかし、ほんとうにそれが可能かどうかは別として、正しいこのなのだろうか?今いる大切な人をおろそかにしていないだろうか?…そういったことに正解はないのかもしれない。この作品ではその回答の一例が描かれており、心に残るものがあった。

 私はこの作品の真の主人公はトオルであると思う。彼こそが最も人としての弱さ、愛するが故の狂気、大切なモノを失った悲しみで大切なことを見失ってしまうということを如実に表している。確かに彼は禁忌を犯したかもしれない。彼のやり方は間違っているかもしれない。過去に囚われて先に進めない愚かな生き方であるかもしれない。だが、人は、人の弱さは一歩間違えば彼のように狂わせてしまうことだろう。自分以外の他者(家族を含む)と深く関わってこなかった孤独で寂しい人間ではこうはならない。そう、彼こそが最も人間らしいのだ。

 個人的には、上条が渋いですね。牧師だからかやはり物分りがよすぎますが、TRUEの「死がふたりを分かつまで…」の結婚の誓いをまさに死ぬ瞬間に交わし愛するものとともに死に行く様がきれいでした。彼は最期まで言っていました、「大切なひとは常に心の中にある」のだと。使い古された言葉ですが、娘を幼くして喪い、妻とは死んだはずの娘の生と引き換えに死に別れ、その娘すらもほどなくして死に、絶望と常に向き合ってきた人間の言葉だからこそ、重みが違いました。

 家族っていいですね。