一粒で何度もおいしい作品だった。FDとは本来はこういう形であるべきなのかもしれない。
本編で語りつくせなかったエピソードが満載。
SIDE-FAMILLEでは玲愛の可愛さ、里伽子のあのエンドに至るまでの苦難があった。
SIDE-TUGUMISEVENではつぐみセブンができるまでと、あの約束の日を目前にした寮生の姿が描かれていた。
クイズは難問も多かった。クイズで、里伽子の口癖は?回答の選択肢に「もぅ、生姜うまいなぁ。」は面白すぎた。
おまけのCGはありえないものが多くてとても楽しめました。(海己のあのCGは…)
~SIDE-FAMILLE~
なんといっても、玲愛の可愛さ…は置いておいて、『里伽子抄』は別格。
FDなのに、ほのぼのとした後日談ではなく、あのエンドに至るまでの苦難が描かれていたことに驚愕。
自分の中に閉じこもる、里伽子。
腕が治ることを信じられない、里伽子。
ファミーユのみんなと顔を合わせられない、里伽子。
強いようで弱くて、でも本当は強くて、やっぱり弱い、里伽子。
そんな里伽子に、
「もう、しょうがねえなぁ、里伽子は。」
そんな“しょうがない”里伽子を見守るのは、ファミーユの“家族”、最強の“ライバル”、そして“義姉”と、“最愛の人”。
「あなたの周りの世界は、あなたが思っているよりも、ちょっとだけ、優しいんだよ。」
・・・そんな物語。
いやあ、最後にはハッピーエンドがあると分かっていても、里伽子の葛藤を知ってしまった身としてはどうしてもこの場面に感情移入してしまいます。
みんなのビデオレターのシーンは筆舌に尽くし難いものがあり、感動してしまいました。
あと、『迷える羊と魑魅魍魎』にゲスト出演された辻崎先輩、お疲れ様でした(笑)。これは奈緒子ルートのあの出来事の前の出来事なんですね。彼はいつまでも“いいひと”で、いつも“ハズレくじを引く”人でした。いつか彼にも良い人が見つかることを祈ってます。
~SIDE-TUGUMISEVEN~
これは、いいエピソードがたくさんありました。
まずは、個人的に好きなキャラである茜がメイン?の、『わたしのかけら』
本編のおまけルートでまあ予想できていた、航が“逢わせ石”を渡した相手。
その彼女が、自分が傷つくとわかっていても、航の現在の恋人であり、自分の友達でもある凛奈のために開催した、“シンデレラ”を見つけるための大会。
当然、該当者が見つかるはずもなく、凛奈と航の確執はなくなった。
・・・彼女は知っていた。これが最良の形であるということを。
だから、昔から“ちょろっと”想い続けてきた、“ある感情”とともに“欠片”を捨てようとした。
そのとき、突然現れた“王子様”。
・・・“ガラスの靴”の持ち主が誰か分かってしまった航は、そんな彼女の決意を無駄にしてしまった。
結局、“シンデレラ”は自らを“シンデレラ”と証明できる唯一の手がかりを捨てることで、過去の想いにけじめをつけた。
“ガラスの靴”を持ったままの王子と、自らを“シンデレラ”と証明できないシンデレラ。
二人は“運命で結ばれる恋人”ではなく、ただ過去に渡した“逢わせ石の欠片”を持った少年と、“その片割れ”を持っていた“かもしれない”少女。
二人を結びつけるものは何もなく―――
過去に果たせなかった思い出を、ただ、このひと時だけ、ともに過ごす。
茜は報われないなあ、と思いつつプレイしました。まったく、モテる航は女泣かせだなあ、と。
メインのシナリオは何と言っても、『この冬空に歌声を』
本編の“約束の日”を迎えるまでの日々、その日常のシナリオ。
今まで頑張ってきたことの意味。
そして、航の決意が描かれる。
・・・みんなは“別れの日”を目前に控え、それぞれの思いを胸に、あの歌を練習する―――
本編をクリアしたがゆえに、このシナリオを進めるたびに涙が出てきました。
『この青空に約束を』で最大のテーマとなる“別れ”がこれをプレイすることでさらに引き立ちます。
また、APPENDEDをプレイすることでさらにつぐみ寮のメンバーに感情移入してしまう。
初めは、奈緒子、1人。
そこへ島へとばされた、紗衣里がやってきて、2人。
海己と、航が入寮して、4人。
航が、静を連れてきて、5人。
宮穂が、“先輩”に翻弄されて、6人。
そして、島へ来たときに絶望を味わった凛奈が入って、6人と1人。
6人と1人が本当の“7人”になるには、まだ、時間が必要で…。
そんな風にして、本編へとつながる。
この“フォセット”には本編の、始まり、そして最後をつなぐ物語が描かれていた。
決して本編が未完成なのではない。ただ、本編のAPPENDED(おまけ)としてより深みを与える作品となっていた。
物語としては、
『この星空に思い出を』(回想)
↓
『この青空に約束を』(本編)
↓
『この星空に思い出を』
↓
『この冬空に歌声を』
↓
『この青空に約束を』(約束の日)
そして、願わくば、
『この約束の日に再会を――』
やっぱり、『この冬空に歌声を』での航の決意はかっこ良かったなぁ。
そして、航が“現在の航”に変わったきっかけが描かれている、『この星空に思い出を』。
・・・凛奈と静は似ていると言っていた航。でも、そんな航も同じだった。
島で生きる人たちはみな、優しさにあふれていた。
やっぱり、南栄生島でも、
「あなたの周りの世界は、あなたが思っているよりも、ちょっとだけ、優しいんだよ。」
でした。
最後に少しだけ。
まず、『陽だまりのヴァージンロード』で茜が言っていた、「やっぱり青い髪のお金持ちよりも、金髪の幼馴染だよね。」
・・・おいっ、それはドラ○ンクエストのフ○ーラとビア○カのことじゃねえか!!
ゲーム世代の私にとっては笑えるシーンでした。(クイズでは選択肢にブリッツボール(ファイ○ルファンタジーⅩより)があるし…)
さえちゃんの学生時代の話では、“秋島”の名前が出てきて、ショコラをプレイしたひとにとってはおもわずニヤリとしてしまったのでは?
そして、究極の迷言。
雅文「あんた嫌ぃ」
これを聞いた皆様の反応は次の5つに分かれると思います。
①「それは玲愛にのみ許された言葉だ。貴様ごときが気安く口にするな!!(怒)」
②「男のツンデレは可愛くないぞっ。(笑)」
③「おまえが言うのかよ!!(爆笑)」
④元ネタを思い出せず、次の航の発言を理解できない。
⑤「いや、別にお前に嫌われても何ともないし。(冷静)」
私は①+③でした。(玲愛は大好きなので…)皆さんはどうでしたか?
まさかここでこの発言が来るとは誰が予測できたであろうか?いや、できない。(反語)
とにかく、これで懐かしさ、泣き、感動、萌え、そして笑い、全てが含有された作品となりました。
ショコラ、パルフェ、この青空に約束を、すべての物語にありがとう。
・・・これからもこの作品をプレイするたびに感動が“ちょろっと”心に残るだろう―――
(注:「“ちょろっと”は“ずっと”の南栄生島弁なんだぜ?」 by航)