名作には一歩及ばずといったところ。いろいろと指摘すべき点がある
正直言って、結構良かった。それだけに、中だるみやすずルートの失速感・矛盾点が悔やまれる。
各ヒロインのルートはそれなりに良かった。そのルートでのメインとなるヒロインが中心に活躍して、サブキャラも活躍して、うまくまとまっていた。
個人的には刀子ルートが好みだった。“名無しの妖”強えぇぇぇーーーーーーーっ!明らかにすずルートでのラスボスである、“九匹”の尾を取り込んだ九鬼のレベルアップよりも、“一匹”の逢難を取り込んだ双七のレベルアップの方が強すぎないか?
すずルートでは納得いかない箇所が多々あり。
まず、「二度と近づくな!!」の言霊なら、遠くから“言霊を解放する言霊”を憑かせればいいのであって、尾を切る必要はないように思う。(たとえば、「言霊を解放せよ!」とか)
・・・まあ、すずの“あやかしびと”としての決心を表現したいがための描写だったのだろうけど。
次に、TRUEエンドと思われる『輝かしい日々』が納得いかなかった。
だって、このシナリオでは、“すず(と双七)が人間とともに生きて幸せを感じる”ことがテーマであって、“ふたりだけで掴み取る幸せ”を表現するものではない。
従って、このエンドは、生徒会のみんなとともに生きる“ふたり”にすべきではないのか?
三つ目は、すずルートで個人的に一番好きなエンド、『約束』について。
おい、すずの尾を切ったんだから、「武部涼一と如月双七および如月すずに関する記憶を忘れろ」という言霊の効果は切れているだろう!!!
なのに、「もうすずに力はないからおっちゃんの記憶を元に戻すことはできない」とか言ってるし。
・・・このエンドは、“妖と人妖”が“人”と共存するという、“あやかしびと”のひとつの形態であるはずなのに(だから好きなエンドなのだが)、矛盾があることだけが許せなかった。
四つ目。もうひとつのエンド、『あやかしびとふたり』について。
人での妖でもないふたりが、どちらでもない幽世で永遠に過ごす…というのはエンドのひとつの形態としては別に文句はない。
ただ、すずは“九尾の狐”と“八咫烏”の子供で、尾を切ったから“九尾の狐”としての資格を失ったわけだよね?なら、“八咫烏”としての資格はあるため、妖の幽世にいけるのではないか?
・・・その証拠に氷鷹一奈は“火車”と“雪女”の血を引いていても、“火車”の能力を持ち“雪女”としての性質を有していた。このことからも、すずが種族は狐であっても、“八咫烏”としての何かは持っていてもおかしくはないわけで…。
・・・といったことが納得いかない点だった。
すずルートについては、もうひとつ、“すずが戦うヒロインではないのだから、みんなを戦わせて活躍させよう”という点があまり満たされていなかったことが、残念だった。
刀子は戦ったが、怪我で後半は出番なし。
トーニャは空飛ぶ機械を渡しただけ。
薫も怪我でリタイヤ。
・・・あまりにもすずと双七と九鬼以外のキャラの扱いがぞんざいではなかろうか?
終盤~エンドでは、双七と九鬼しか出てこないし…。
九鬼との戦いもあっさりしていて、刀子ルートの“名無しの妖”ほどの強さを感じられなかった。
ここは、いきなり双七と戦うのではなく、
すずを捕らえて殺そうとする
→薫がすずを庇って負傷(=過去の罪の清算)
→刀子、トーニャ、虎太郎が参戦、敗北
→刑二郎、美羽、さくら、七海、狩人が怪我人の保護・逃走
→双七・九鬼の1対1の戦い “手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に”を実戦
→みんなを負傷させた九鬼に激怒するも、“悪鬼”にはならず“みんなを護るために”力を行使、九鬼も悪鬼化。
・・・という展開にすればよりよかったと思う。(さらに回収できていない伏線である、九鬼流の技の残り(焔螺子、焔錐以外)を使うべきだった。)
あと、視点切り替えが分かりづらい!!
いつの間に視点が切り替わったのか分からず何度か混乱した。せめてバックウインドウの色を変えるとか、一旦呼吸を置いてから切り替えるとかして欲しかった。
・・・とまあ、納得いかなかった点は多々あれど、総合的にみれば結構楽しめたし、バトルシーンも熱くてよかった。
また、一乃谷愁厳は愛すべきキャラだったと思う。あの照れる性格はなかなかカワイイものがあった。
なぜか不満点ばかり書いてしまったが、決して悪い作品ではなかった。
よって、“名作一歩届かず”。