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真龍さんの時を紡ぐ約束の長文感想

ユーザー
真龍
ゲーム
時を紡ぐ約束
ブランド
あっぷりけ
得点
82
参照数
294

一言コメント

期待値が低い状態でプレイ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

『紅吹雪』が収録されたCDを探していたら、サントラ単体を買うのもゲーム付きもほぼ変わらなかったのでゲーム付きを購入。ゲームの評価は高くなかったが折角買ったのだからとプレイ。大変失礼な表現だが、CDを買ったらゲームが付いてきた感覚。だが、実際プレイしてみるとそんなに悪くない。共通ルートはあっさりしているが、雪国某温泉作品と違い、スタッフでぎりぎり回せそうな最低人員を確保していて、温泉旅館っぽい描写もありそれなりに雰囲気は出てる。ファンタジー要素もあるが、多用や悪用をする訳でもない。主人公は割と常識人でしっかりしてる。まあ、他の作品にも言えるがエロゲに登場する人物の孤児院率の高さには驚かされる。自覚のない女垂らし設定もご愛嬌か。時折挟んでくるギャグ、割と好き。不満を言えば地の文でも台詞でも同じだが、描写が足りないと思わせる部分が多く、作品として薄く感じることがあった。苦悩や想いを深めればもっと楽しめるのになと惜しい気持ちになる。あと、里中さんルート、何故無いのだ。誤字が恐ろしく多い。助詞が二つ続く「をを」等がやたら目立つ。

水野心春
メインから一番外れてそうな心春ルート。力を持っている謎の生徒会は創作の中の存在で定番だから、この際は目を瞑ろう。お盛んな時期だからそれっぽいシーンで直ぐにやっちゃうのかと思ったら、意外や意外、暫くは我慢する。結局、学校も愛の巣にしちゃうけど、目標を決めてそこまでは我慢っていうのは新鮮で良かった。ただ、主人公と心春が力を合わせて生徒会長の選挙で勝つのがこのルートの盛り上がりなのに、メインヒロインルートでは主人公の力抜きであっさり会長になるのは別に主人公要らないじゃんと思えてならないのが不満。

沢村唯依
主人公にいじめから救ってもらったが主人公は転校して、本人も転校して偶然出会う。いやはやどの位の確率だろう。それは置いておいて、主人公は唯依のことを忘れていて途中で思い出すことになる。悲しいがそういうものか。デイトレで稼ぐお母さん、凄い。設定は色々飛んでるけど、母娘の確執を乗り越えるという王道の話ではある。絵で食べていこうとするが、会社に所属する形に収まるのは現実的。何でも叶ってしまうのは話として面白味に欠ける。敢えて現実に即した落とし所を作るのは個人的には悪く無いと思った。

碓氷穂乃果
期待その一。『紅吹雪』がどんな場面で使われるのかと楽しみにしながら進める。結果的にはこのルートでは無かったが、話自体は悪く無かった。ヤクザでは無いと言い張るがどう見てもヤクザです。ありがとうございました。歌手としてメジャーデビューしたのにアイドル路線で売出し、マネージャーに洗脳される。弱いところに漬け込む手口辺りが妙にリアル。主人公も穂乃果もお互いに別の大切な人の面影を見て、そして紆余曲折を経てそれらを乗り越えて本当の意味で相手と触れ合っていく。この辺りの心情は丁寧に描かれている。影の薄い魔法が一番役立つルート。

神宮美咲
期待そのニ。共通ルートではいまいちメインヒロインの美咲の魅力が伝わってこないが、個別ルート後の美咲は良い子だなと思える性格が台詞や行動から滲み出て、期待値がぐっと上がった。みりあと離れ離れになるとは全く思っていなかったので、ショック。衰退しつつある温泉街を如何に盛り上げていくかという部分は物語の中でも重要で絆を通して力を合わせて学園と温泉街の合同の祭りを成功させる流れは、純粋にいい話だなと思える。現実はそう簡単では無いと思うが斜に構えて行動しないより、粗削りでも行動を起こしていく姿勢は個人的には学びたい部分。待ちに待った『紅吹雪』が流れる演出は好き。でも、この曲の存在を知らずにゲームをプレイした時の感動はもっと凄いのだろうと思った。ただ、事前に『紅吹雪』を聴いていなければそもそも『時を紡ぐ約束』という作品をプレイする事は未来永劫無いだろうから、意味の無い仮定か。血の繋がりの無い家族というと有名な某計画が一番手だが、これが二番手といってもおかしくないと個人的には思う。最後に主人公が「子は親を恨まない」という信念のもと語りだす。これは賛否あると思うがこの主人公が生きてきた過程で得られた信念なので外野が云々いう事では無い気がする。

結論
初心者向けに勧められる良い作品。