「どうかあなたの本が見つかりますように」 野望を持つ館長兼司書のアンジェラ、 「それはそれで、これはこれだ。」と態度の軽い召使いのローラン、歪んだ都市に生きる様々な人達の物語が図書館を通して複雑に絡み合っていくのが面白かった。 デッキゲで100hオーバーあるのに加えて、字が異常に小さく疲れ目になるのでプレイするなら時間があるときに。
物語としてはもう少し好きだが、デッキゲとしての苦痛が大きかったためこの点数になっている。汝は決して私から離れぬ故…
数箇所助詞の使い方が不安な日本語やボイスと文章が異なる点があったが気になる程では無かった。
移植の特徴であるボイスは良かった。advの良さがかなり上がったと思う。文章は変わらず小さく、psでもダイスの説明文が読み取れなくなるくらいだったのでSwitchなら尚更きつそうである。
デッキゲ、ノベルゲどちらとしても後半からが楽しい。デッキは都市の星、advは上層の司書達が起きてからくらい。
デッキは前半は勝つたび新しいコアへ変えていくことが正攻法で退屈だったが、後半では工夫次第で中盤のコアやページを一軍として使えたりする自由度が楽しかった。(戦闘準備は序盤からずっと強い)
また、ページやコアの付け替えが毎度面倒で、UIがもっと最適化されていれば100時間も長いと感じずに済んだのでは、とそれなりに不満がある。
前作未プレイは世界観という点なら詳しく説明されるのでゲーム単品として楽しむのには問題ない。ただネタバレが強いので今作から前作をやるという順番は難しく、前作をやるかどうかでキャラへの愛着や幻想体への思い入れは異なる。私は本来の意味で前作主要人物達の気持ちやL社がやりたかったことに近づけないと思うと少し惜しい気持ちがある。
ネタバレ多め↓↓↓↓↓↓↓↓
・物語について
今作ではアンジェラとローランが様々な目的を叶える本のため入館した人達へ接待をしていく。だが実際の様子はというと、良い人も悪い人も含めごった煮に次々と本へ変えられていく。
その接待が胸糞が悪く、最初は到底感情移入できなかった主人公達だと思ったが、後半はこのローランとアンジェラの立ち位置がこの暗い図書館の物語の面白さへと変わっていた。
「それはそれで、これはこれだ」
都市を生きるため他人の事情と痛みを見過ごし、自分と他人とを疎外するローランの信条は、妻を喪うことで自分にその痛みが降りかかったとき、他人に責を求められず、ローランをある種のジレンマに陥らせた。
そんなローランが直面した自分と他人の幸福の在り方が、一見関わりの無さそうに見えたカルメン達がしてきたことと深いところで交わっている。
アンジェラの人間的な成長も今作の見どころだった。ローランのアンジェラへの態度の変化も効果的だったなと思った。開幕時のアンジェラなら他人のことを考える余裕も無かったから、きっと何を言っても無駄だったのだろうが、アンジェラが易々とは比べられない様々な都市の苦しみを見て成長した後に、苦しめられる人の痛みを本当に無視できるのか、自分の為に他人を害せるのかと詰問するローランの目線の合わせ方が良かったなと。(そしてそのローランの強い口調は自身にも向けられているように見えた。)
接待した人や司書達もローランやアンジェラを刺激していた。プレイヤーにとって馴染み深い、愛の町のトラウマもそっくりそのまま二人に還元されているわけだ。
特に都市を変えようと全力を尽くした記憶を持つ司書達や最後までパートナーを喪っても最後まで自分を見失わなかったシャオ達の言葉は二人にとって自分と他人にとって何が正しいのかを問う、抉るものがあったのだろう。
振り返ると、司書達は意見が会わなくても腹の割った対話が必要だ、結果の為に過程を犠牲に目を瞑るのか、等初めからピンポイントで二人にぶつかっていたのが良かった。
また、社会科学の階開放戦のケセドとローランの会話がとても好みだ。これがあったからローランがアンジェラを赦せたのではないかなとも思う。
「そしてどうしようもないことはこれからもきっとあるだろうね」
「そうするしかないことを今すぐ変えることは出来ないよ。それでも恥を知ることは出来るから」
「君が加わっている社会の中で1%の恥を知るだけでも沢山のものが変わると思うよ」
「....知るだけで?何かをやり抜く力もないのに」
「ローラン。知ってるって事実で十分なんだよ」
「今は人生に追われて奥深くに埋まってしまうかもしれない」
「でもそれはいつでも引っ張り出せるんだ、君にそうする意思さえあれば」
「そしてまた引っ張り出すとき1回じゃなくてもいいんだ。何度も引っ張り出せるから」
「君も、この都市も…誰もその力を軽んじることは出来ないはずだよ」
「恥……俺はこの都市で苦痛の反復に加わっているという羞恥心……」
この苦痛の反復を一度でも断ち切ろうとする勇気がトゥルーエンドに繋がるのだと思うと感動した。
「それもこれ、これもそれ」
と最終的に二人が都市らしくない人の温かみを手にし、良き友達になるのが本当に喜ばしい。
・好きな戦法について
ユジン複製連続切断
元の体力がおかしいのでセシルコアでの体力回復が凄まじく、アントンコアで混乱値を回復するという後半戦特化型。戦力の足りない残響戦で一人で全部持っていってくれた。
ねじ剣ループ
説明の要らないユンの広域連打。開放戦でもギミック無視して敵のページを一つ消せてどこでも強かった。
防御耐性紫の涙
過充電の行動不能を無効化しながら充電を10溜められる。他のキャラから忍耐を貰える戦闘準備とも相性が良く、カウンターでマッチに勝てるのも強い。付け替えが面倒だが状態異常+、ダメージ増加、混乱ダメージ増加等他の体勢も使いこなせれば強そう。
バフを配るオリヴィエ
ミリネコアを付けたオリヴィエ。12フィクサーとハナ協会コアでマッチに勝ちながら毎ターンバフを配れるので、ミリネを工夫するよりも汎用性がありそうだった。
・好きなキャラ
イェソド、ケセド、ユジン。
みんな違ったクールさを感じる。あとユジン部長が4444日連勤しているかもしれないと考えると元気が出る。
・戦闘について
どこかの階に特化したデッキは一軍として使えなくなるので幻想体とのシナジーを考えることができなかった。コアの付け替えに適したUIをしていない。また、戦闘やadvよりもデッキを考える時間が一番掛かったので5(最大)×4デッキ必要な残響戦は投げそうになった。しかしやり甲斐はしっかりあったと言える。
ねじれに関わる『声』や頭の動向、都市のこれからと気になる要素も沢山あるのでリンバスをプレイするのも楽しみだ。