23年で死ぬ世界の"死神"が主人公の話。 どのルートでもキャラの描写が丁寧で、絶望に心を掴まれた。救われてほしいキャラしかいない。
普段美少女ゲームばかりしていることもあり、こういう男キャラの絶望が新鮮だった。
キャラが生き生きとしていて、傍観しているプレイヤーの心も穿つような絶望として最高のものが見られた。
好きなキャラはシアン、アドルフ、リュカの順。
主人公のセレスは攻略キャラ達に対して受け身で接することが多く、特に序盤では消極的、且つ落ち込みがちで感情移入しづらかった。彼女の成長も一つの主題として面白くなるまで少し忍耐が必要だったように思う。
それに対して家族のアドルフへは最初から遠慮がなく、二人の気の置けない会話が気に入っていた。
物議になったと聞いたBL要素について嫌悪を感じることはなかったが、特別に騒ぎ立てられることもあり、少しだけ目についた。
↓↓↓↓ネタバレ多め↓↓↓
シアン
控えめでよく気を遣うセレスと、傍若無人で天才なシアンがぴったりはまって相性がとても良く見えた。
「シアンさんが──延々と【時間稼ぎ】を続けているようにしか……見えません」
セレスがシアンの無意識の敗北を指摘して覚醒を促した後の、シアンの憑き物の落ちた笑顔が好きだ。
他人と自分をどうでもいいと扱いながら、人を救うことを第一に考え、世界を俯瞰するものの責務を果たそうとする。理想を真っ直ぐ見据えた魅力的な人物だったな、と。
他のルートでも彼なりに人を救おうとした痕跡があちこち見られるのが良い。
イヴ
優しく頼れるヒーロー。
セレスとの恋を求めてもやはり言動に博愛を感じる場面が多く、個人的にはセレスの方を向いていると意識できずにハマれなかった。しかし本当に良いヤツで、アンクゥがセレスと一緒になってほしい、彼女を任せたいと言ったのもよく分かる。
友人になってほしく、仲良くしたいキャラだった。
マティス
セレスとマティスの姉弟みたいな関係が素敵だった。しかし、全て知るとどういう目線で二人の関係を見ていいのかわからなくなる。
復讐に燃え、弱くも頑張る少年を応援するよりも真実に可哀想に感じる気持ちが勝った。
ただ、アドルフルートのエンディングの後日談がとても幸せそうで救われた。
この個別からジャンのことを苦手に思うプレイヤーも少なくなさそう。
リュカ
一番最初に攻略して、何でこんなに良い先生を曇らせるんだ…と絶望の洗礼を浴びた。
セレスが囚われている立場で尚、檻を超えて抱きしめて
「……もう、頑張らなくていい」
「あなたの【頑張らなくていい】に救われた教え子が──」
「全部、受け止めますから」
「一人で頑張るのが……辛い、苦しい」
のシーンがリュカ先生の表情とか声が痛ましくて辛くて響いた。
アドルフエピローグではリュカ先生がきちんと罪を被りながらも、ナディアとリュカ先生がようやく二人で幸せになれたんだなと嬉しかった。
アドルフ
進めても全然ルートが開かなくて、もうルートが無いのか…残念…と思っていたときに明らかにメインでありそうなアンクゥとセットでルート解放されて驚いたのだった。
他の攻略キャラではセレスが事件や事情に巻き込まれていく受け身になっているのに対して、アドルフとセレスはあくまで家族の様な対等で、しっかりお互いのことを支えていることが良かった。
アドルフの恋に落ちる瞬間の嘆きが大好きだ。
「温かな場所で眠りにつきたい。ただ、それだけのために…」
「俺はこの悍ましい国で……。他人の顔色を窺いながら必死に生きてきたのに──!!」
「お前のせいで……!お前さえ、いなければ……ッ!!」
言葉の重みと声優の演技が凄くて圧倒された。それを受け止めてしまったセレスへの呆然とした表情も印象的で記憶に刻まれた。
アンクゥ
どのルートの絶望もなかなか止められなくて、死の番人の割に実直に苦労してそうだなと思っていたら本当に苦労人だった。アドルフに抱えられて花束を贈るシーンでは、漸くアンクゥにとってのTRUEを迎えられたんだと感動した。