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畢竟マインドぴspringさんのBLACKSOULSII -愛しき貴方へ贈る不思議の国-の長文感想

ユーザー
畢竟マインドぴspring
ゲーム
BLACKSOULSII -愛しき貴方へ贈る不思議の国-
ブランド
イニミニマニモ?
得点
90
参照数
147

一言コメント

何処を見回しても狂気。早く全貌を知りたいと好奇心を煽られ、焦燥感を刺激された。 世界観は1から更に深みを増しており、考察好きにもおすすめできる。DLC3までプレイすることを推奨。 最後まで見て漸く、愛しき貴方へ贈る不思議の国を理解できる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

再びの不思議の国。前作を準えつつ全く異なる着地を見せ、他には無い独特の世界が構築されていた。


考察好きには堪らないなと思う。背景を辿るとかなり難しく私には分からなくて、考察は他の方に任せます。主観の感想を中心に。

DLC3は一度断念し数ヶ月放置したあと戻ってきてクリアした。
思い出しながら出来て良かったが、初見でいきなりハードルの高い壁を用意されて最初はプレイしにくいなと正直思った。(→追記)レベルをカンストしてもなかなか勝てない。



プレイした序盤
ホラーの上に死にゲーで経験から避けられたり、主人公の足が速く敵から逃げられることがプレイ中の救いだった。特に最初の数時間、幽霊に襲われる精神病棟、血だらけの屠殺場はあまりに怖い。

初めに首刈りウサギを倒して墜落部屋を抜け、精神病棟に辿りつく。ここでは怪奇現象、幽霊、悲鳴に正気が削られた。序盤なので当然透明手段は持っておらず、貴婦人に何をやっても脳髄を啜られた。精神病棟のボスに勝てずショートカットだけ残して、ひとまず市街を抜けた。
その後歩いていると人攫いに負け、屠殺場に連れていかれる。肉を割くチェンソーの音が聞こえ、誰と戦っても死んでしまうので当たらないようお祈りしつつ、ずっと緊張していた。
その後なんとか魚市場でBORNFIRE LITしてようやく一息つけた。このゲームの洗礼を存分に食らったな、と。

他に船捨て場の超巨大魚から逃げる場面には別種の怖さがあり、印象に残っている。
ウオォオオオォオアオオオ!!!!という唸り声とどしーんと強烈なタックルが忘れられなかった。



戦闘
コマンドにブレイクが加わった。敵の攻撃が痛いので、ひるみや溜め技のキャンセル、回避、防御と長期戦を慎重に戦うのが面白かった。
必ずしもレベル上げれば解決することばかりではなくて、武器や防具と敵の相性をしっかり考えなくてはいけないバランスも良かった。
武器にはそれぞれ個性があり、敵ごとに頻繁に持ち替えていた。例えば初期武器の強化版である騎士王の剣も最後まで使ったりしていた。
ただ、前作のチーム戦が面白かったから、ボス戦の助っ人を除きソロであることは寂しくて不満だった。アリスを探さなければ、と繰り返し先を急ぐ主人公に肩を並べるのは難しいということだったのかな、と。




↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ネタバレ多め↓↓ ↓↓↓↓↓↓↓↓↓

















ヒロインについて
誓約は関係の変化が分かりやすくて画期的だった。
他人から愛する人へソウルを捧げ変えていく。簡易ではあるものの順序立てが楽しい。
キスコマンドも良かった。最初は嫌がったり、少し期待があったり、照れ始めたり、とヒロインごとの個性がありhだ。

ロリーナ
一番好きなヒロインを挙げるならロリーナだ。
最初は見るなり首を刎ねよ、だったのが
「アリスの事は忘れよ。魔獣にもなるな。ずっとずっと、私の傍にいなさいよ……」
「....見て分からぬのかっ?早う私を抱っこしろっ!そう、もっとよっもっと………えへへ〜っ♪」
になる。可愛すぎる。トランプ脱衣バトル♡

ビル
とにかく印象的だった。擬態を知るのが誓約レベルの一番最後だから、スカートを覗き、
えっち…えっちだ…えっ????と思った。
彼女?のイベントが何気に充実しており、出てきたもう一人にかわいいね…かわっ…!?と更に困惑した。よく考えるとカマホモクソトカゲ(asshole)、と忠告されている。

ジャブジャブ
主人公の裏でかなり暗躍していた彼女は、放置しているだけでヒロイン達に凄惨な末路を迎えさせる。本当に酷かったが、実際に会ったときの印象はそこまで悪くなかった。

「誰だって腹の奥底では欲望を孕んでやがる。
それを暴き晒すのは狂おしい程にたまらないねぇ」
根底にあると思われる気持ちにはある程度の共感ができた。
この国に於いては最悪な人物ではあっても、真相に近づいた状態で思い返すと彼女の善悪はよく分からなくなった。



Sen値システム
途中に気づいたSen値0の景色は青天の霹靂だった。

普通にプレイするだけでめちゃくちゃ怖かったので、sen値を下げることの躊躇いがずっと強かった。ヒロインとちゃんと話もしたかったのもあり、正気を失わないように!!と気をつけていた。
そろそろクリアかも…と思って初めてsen値を下げプレイし始め、ようやく現状を理解したのだった。認識の誘導が上手い。ジャックザリッパーが辻斬りを決心したのも頷ける。

血の落書きは存在に気づいてからは役立ったが、イタズラみたいな落書きもあり、話半分に聞いていた。気が狂っているだけ、と。思い当たる節は多かったのに、Senを下げてからまさかな…と素通りしてきた伏線がほいほい出てきてびっくりした。

周回初めには、
『〇〇(主人公)にはアリスしかいない』
という看板の後を見た後昇降機で上がっていくと死体がある。これには本当にゾクゾクした。

攻略メモにはネタが沢山仕込まれている。
Q.BGMが止まってNPCが文字化け語しか話さない。AそれはSEN値が下がっている危険な状態です!
というSen値の項が面白い。

雛鳥はSen0でも見た目が変わらない。
紅ずきんやノーデなどの例外的なキャラと同じになっている。
ジャブジャブと雛鳥のイベントでは、
「うんっ……また会える?」
「……勿論っ……い、いや……会えないかな。知らないヤツにはついていっちゃあ、駄目だからね……」
とジャブジャブは雛鳥を可愛がりながらも距離を置こうとしていた。
ジャブジャブは這いよるものによって産まれた化け物を殺していたのかなと思った。



真相について

多くの登場人物がアリスとして想像主に類する力を持ったグリムと交配し、何らかの結果を期待していたのは分かった。しかし肝心のアリス・リデルが何処に行ったかや時系列、星を冠する者達等分からないことが沢山あった。
Hエンドは実況である程度見てしまったのだが、
メアリーの言う
「一言で表すなら部屋の片隅で蟻んこの観察が好きな根暗なヤツ!」
な這いよるものもやはり分からないし、再プレイ時にDLC2、3を自分で確かめたい。



『少女は、いつまでも少女ではいられないのだ。』

『アリスよ。幼稚な御伽話をとって やさしい手でもって少女時代の夢のつどう地に横たえておくれ 記憶のなぞめいた輪の中 彼方の地でつみ取られた 巡礼たちのしおれた花輪のように』

この主人公の逃避と弱さと、いつかのアリスに向けた報われない恋心がblacksoulsの1で気持ちよく終わったと思い込んでいた私の心に深々と刺さったのだった。楽しかった。






↓↓↓↓↓DLC3を終えて、追記










DLC3までやっての感想
這い寄るものとアリスとキャロルの遥かなる恋物語だった。最初に感じていたアリスは狂気に憑かれた主人公の妄想なんじゃないか?という疑念が昇華され、次々と旧支配者の主要人物達から見たこの不思議の国が分かり、圧巻だった。
DLCの終盤は『終幕まであと数ヤード』の中、メイベルが主人公の手を引いていく。何が待ち受けているのかワクワクが止まらなかった。そしてhendではプリケットとノーデの恋をしている二人の後押しが愛だなと思った。
rpgとしてDLC3のエリアはレベルカンスト前提みたいなところはあるが、ステータスを上げすぎると簡単になると聞く。そのため混沌ダンジョンの潜りすぎは禁物だと思う。私のときは全ステ10000くらいで丁度良かった。最後までレベル1難易度9で装備だけ変えてDLC3までクリアするta動画がyoutubeに出てるくらいなので、いつか自分でも挑戦してみたい。



ラスボスについて
wikiにも書いてあるけど簡単に。クリミア墓地四階二番目の部屋にあるゴッドアンジェルの双剣を装備してバフり続けて叩くことが正攻法だと思う。注意するべき点は蝋人形が睡眠を付与すること、 "獅子と一角獣"のターンには強化無効なこと、"混沌"が無属性耐性を持ち、ターンを跨ぐと割合ダメージを複数回与えてくること(死ぬ)。
これには睡眠対策に黒騎士の指輪を装備し、強化無効時にバフアイテムと激憤をかけ、無属性耐性には属性松脂を沢山塗れば良い。自分はゲルダを抜いた三人で挑んだが、デコイとして肉壁が強かったのでフルパじゃなくても問題は無かった。



以下DLCの他の好きなキャラ
フローレンス
『しかし、不死化に成功した患者は皆、人でなくなりながらも私に賛辞を述べて絶大な信頼を寄せてくれる。ここに来て、初めて人を救えることができたのだ。もう悩んだりしない。私の救いを待つ患者が沢山いる。』

正直この人は頑張りすぎていた。ゾンビが襲って来たときは、ここで何やってるんだ!?と驚いたが、これだけ腐った国で全ての患者を救ってみせると決意し、未だ折れていない姿に格好良いなと思った。真なる幸福を祈っている、という別れ際の主人公への激励も素敵で、あのシーンの
「恐れないで……。
希望を掲げて進歩を続けるのです」
にはつい、涙が出たのだった。


劇作家ロルド
「メルヘンなんてクソくらえ。
現実を直視できないお飾りの瞳を叩き割ってやるよ」
とにかく癖になるような台詞回しが好き。ビジュアルと先行キルのイカれた性能もあってインパクトが大きかった。蛇腹剣を使ってみたかった…

スイッチを押すところで、後ろからのバックスタブ不意打ちdeathさせておいて、死体の横でぴょんぴょん飛び跳ねていて笑った。血文字は良く読まないといけない。


虚無の少女メイベル
個人的に夜空見せとか酔っ払い演技のエッチシーンとか一番エッチなキャラだった。喘ぎ声がよぐっ!なのは寿司勇者氏が天才だと思った。
寧ろ照れが良かったので問題なかったが、ヨグソトースの原典から元は男性らしい。ジジイの長話…

ウィンターベルでは、他の支配者とズレているからこそ主人公と対等に目線を合わせられている気がして、二人が合った組み合わせだなと思った。
混沌ダンジョンを
「レバーを動かして、扉を開けて、先に進むだけっ!ああ、なんて最適化された素晴らしい啓示なのかしら~!」
と言い切るズレは擁護できないかもしれない。

ADVで出てくるみすぼらしい少女は初めはホラーでしかないが、何周かしてメイベルであることが分かると感謝が込み上げてくる。メイベルが近くにいると分かると安心だった。

ぬいぐるみの「流石に傷つくわ」に笑った。
「陰湿陰険ジメジメクソジジイ!
そーゆうとこが嫌われんだよッ!!」
「結局、貴方も本質はメアリィ・スーと同じですね!」
しっかり正論だから仕方ない。
また『魂を釘付けにする女の子に成った』メイベルに会いたい。


blacksoulsは話として面白いのが1、導線を拾い集めて初めて面白さが一気に押し寄せるのが2という印象で、やっぱりメアリィの創作の手腕は確かであるので、Hエンドの最後にちゃっかり逃げだしたメアリィのこれからに期待だ。変わらず悪事を企んでるのかなと思うとパンチしたくなる。悪どさが消えた綺麗な彼女も少し見てみたい。

ウィンターベルのぬいぐるみでのぞいた
「そこからでたい?メアリィちゃん♥」
を言った人物が逃したはずなのだが、やはりバフォメットなのだろうか。
黒の裁判については黒山羊の動向が謎めいていて、次の布石になっていそうだ。寿司勇者トロ氏の次作を心待ちにしている。