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比翼れんりさんの恋愛、借りちゃいましたの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
恋愛、借りちゃいました
ブランド
ASa Project
得点
74
参照数
564

一言コメント

当たり前の日常だって特別になっていく 君に 君に届け

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

アサプロらしいキャラクターの掛け合いが今回も光りました。過去の作品の中には三角関係を扱ったものもありましたが、むしろ今作の方が上手い描写が目立ったように思うくらい、それぞれのキャラクターたちの関係性がおもしろいように繋がり、そして広がっていったように感じました。

守銭奴の主人公は正直どうかなと思いましたが、シンプルなほど妹のためであり、そこにそれほど違和感はなかったかなというのがひとつめのハードル。以降、レンタルの仕事を通して、ヒロインたちと偽の繋がりを作りながら、話が派生していき、それがとてもいいですね。あまりここまで割りきった作品に出会わなかったこともあるのですが、通常のボーイミーツガールとは違った導入に思いました。

椿は年上のお姉さんで、予備校の先生。それでいて引きこもり。あまりこういうタイプを好きになることは少ないのですが、落ち着いた感じに見えて、かなり気持ちが乗ってくるヒロインでした。元々のストーリーが、いまいち入ってこなかったので、エンディングまでの流れはそれほど響かなかったのですが、このキャラクター性に惹かれた部分はあるように思います。普段は大人らしくリードを取ろうと画策するところもあるけれど、主人公と二人きりになると甘える面もあって、このギャップがわりと病みつきになります。ルート後半、ヒロインたちで主人公がどう喜ぶか考えるくだりが何気に大好きでした。

ちなつとこなつには単独ルートがなく、二人でひとつのお話です。そもそも双子ヒロインだと別ルートになることは意外に少ないかもしれませんけれどね。双子なのだけれど、性格の異なる二人ですので、通常シーンに限らずエッチシーンまでも、何かコントを見ているようで、あまりストーリーラインは意識せず、ノリで最後まで突っ走るルートに思いました。それぞれの特性を生かし、交互にシーン回収が進み、単調にならない配慮がされているのが大きいのかなと思います。双子ヒロインといえば定番の入れ替わりネタに関しては、モロバレという、ある種、彼女たちらしい展開で案外好きでした。何も特別なことは起きませんが、逆にそのシンプルさが売りなのなと。

今回の構成は脱落方式で、メインルート、サブルート含め、いずれにも分岐せずストーリーの後半までたどり着くと、八純と絵未のどちらかを選ぶことになります。それぞれの個別ルートに分岐以降もこの三角関係がハマっているので、ある程度割りきりを持てれば、最後までノリ良く楽しめるのかなと思います。

八純は印象的な笑いかたと、少し体型を気にするようなヒロイン(過去作ほどではないが)。面倒を見てくれる彼女自身の本質が感じられるパートは、また違った良さを感じました。金で解決というのが、どうも好かないので、キャラクターはそんなに嫌いではないけれど、ルートが楽しめるか不安でした。ただ、個別分岐後のいちゃラブは徹底的に1対1のシンプルさで、絵未をネタにしながら、純粋なキャラゲーをしてくれていたので、想像以上に満足感があります。エンディングも何か二人だけのカタチを求めたものではなく、妹のためにと1人で抱え込んでいた主人公を外に連れ出すようなCGで締められ、良かったと思います。

絵未がそもそもレンタル関係の始まりでしたね。最終的には、絵未と八純の一騎討ちという具合で、絵未ルートにも関わらず八純の出番もそれなりにありました。作中通してですが、何も大きなことは起こらず、こと個別ルートに入ってからは恋愛描写に重きを置いているので、退屈に感じる内容もあるかもしれません。ただ、ここで飽きさせずテンポよく場を繋いでいるのが、さすがというべきか。絵未というキャラクターは、八純とは違った意味で面倒くさいヒロインだと思っていましたし、それはルートが終わってもそう思います。しかしながら、ただパワーで押しきるだけではなく、変化球の表情や言動も見せるわけで、じわじわ好きになっていくのが不思議な印象でした。

今作に関しては、月が中心に居るのは確かなのですが、やはりストーリーの中心は絵未と八純のツートップ。ここに主人公や個性的なサブキャラたちを加えた関係性が見所。ストーリーで「良いな」と思う部分はそこまで無いのですが、一強のキャラクターが居るわけではないのですが、それでいて、最後までニヤニヤ出来たのは、ツートップの個性と構成が上手くいった成果かなと思いました。