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比翼れんりさんの恋嵐スピリッチュの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
恋嵐スピリッチュ
ブランド
Parasol
得点
69
参照数
486

一言コメント

何かが始まる そんな予感が 確信に変わってゆく

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

Parasolの約2年ぶりの新作です。シナリオ陣は少しばかりテコ入れをしつつ、原画はみけおう先生の単独。今までを踏襲しつつ、変化も感じられる作品に思いました。

今回のシナリオはいい意味でふっ切れた印象ですね。今までもキャラクターには原画や声優を含めてそれなりにいいものがありましたが、急な真面目話への切り返しや無意味なシリアス展開など、明らかに狙ったシナリオがことごとく外れるのが、このブランドのイメージでした。これが良くも悪くもスマートになり、中学生が机上で描くような、エッチなハーレムストーリーに持っていったのは正解でしたね。伝奇っぽさも内在しつつ、根底にある、触れ込みどおりの「愛する女の子たちを守り、みんなまとめて幸せにするADV」を体現するのに終始していたのが好感触でした。一応それぞれのエンディングがありますが、基本スタイルはハーレム寄りで、共通ルートから瑞穂以外にシーンがあり、3Pも規定路線に乗っています。これを貫くのであれば、ハーレムエンドをTRUEルートとして作ってもおもしろかったと思いますが。

糸世と牡丹はセットで行動することが多いので、スタンスの違いを見つけるのは難しいかもしれません。ただ、彼女の戦うモチベーションとして、父親が鬼に害されたというのがあり、これが根に張っています。鬼の範疇に居る主人公との距離の詰まり方がポンポンと行くので、それが気になる点ではありましたが、ストーリー的にはどのルートでもエッチで強化して敵に立ち向かうので、それほど伏線というのも無いのかもしれませんね。さすがにラストバトルで父親と再会を経てエンディングになりますが、あまり復讐やらを全面に出して、血生臭くしなかったのは大きなポイントに思いました。

猫をはじめとした人外ヒロインは数多いますが、牡丹は生まれるまでの過程が出会い以降もほとんど描写されず、これもエッチシーンとバトルで構成される弊害なのでしょうか。糸世ルートでいくらか拾う過去描写もありますが、原則としては彼女自身のルートで回収されるべきバックグラウンドは多いのではないかと思いました。それが期待外れと言うしかなく、里帰りとして京都まで上ったのは、動きが楽しみになる展開でしたが、その重要な部分をモノローグで終わらせてしまったのはもったいなかったですね。牡丹の汚れの過去を暗に示すような節だけ見せましたが、ここまでやるなら中途半端に引きを作らなくても良かったように思いました。

翼は上2人とは違う立ち場から戦うヒロイン。一人称俺のかっこいい系ですが、ボケというより突っ込み担当に思いました。カクシタンの側は1人しかキャラクターがいないからか、設定を詰め込みすぎたルートに見えましたね。純粋に彼女自身を取り上げる平々凡々なお話であれば、逆に良く映ったのではと思うほどです。組織の一部が暴走し、それに歯止めをかけるべく奮闘するのが、ルートの山場ですが、大したバトルや壮大な陰謀があったわけでもなく、内輪もめの延長で熱くもならない展開はどうなのでしょうか。モデルや声優といった職業設定も伏線のようで伏線ではなく、活かしきれない箇所はいくつか感じられました。翼ルートだからでしょうが、瑞穂のピンチに隣人が暗躍するのも、主人公のシスコンどこ行った?という印象です。

反対に瑞穂に特化したのはやはり個別ルート。実妹ヒロインはParasolの特徴のひとつですが、今回の妹は重すぎず、ちょうどストライク。作中でいちばん好きになりました。共通ルートでは唯一シーンがなく、貞操観念がそれなりにあるのかなと思いましたが、そこは個別ルートになってからストッパーが外れましたね。エッチシーンやイチャイチャに関しては文句はほとんどないのですが、元々主人公の右手はネタだよなと思っていましたが、それを上塗りするようなルート展開は笑うしかありません。兄妹を狙う敵やお隣さんのフォローなど、他ルートの小ネタを拾う場面もあり、流れとしてはラストに持って来た方が総括になるのかなと思います。いずれにしろ、瑞穂を愛でまくるルートで、それ以外が端役になっていたのが印象的です。エリーゼルートに繋がるのもあり、4人の中ではこのルートが収まりよく感じました。

「エリーゼのために」が作中で使われているのもあり、そこにある程度の含みがあるのかなと思いました。ただその事件以降のエリーゼは、昇天しかけるネタキャラになってしまい、掘り下げはまったくなかったですね。一応シーン回収を兼ねたルートがあり、幽霊らしく消えそうなフリがあります。ただそこは妊娠、世界に留まるエンディングと、翼ではないけれど、ご都合主義と思いますよね。

力を充填するために、エッチして胸を大きくするという頭が桃色な人が考えたようなお話も、胸の大小が選べるのは案外嬉しいかも。これだけハーレム推しのわりに、3Pのバリエーションがそれほどなく、それ以上の複数プレイもないのは、もったいないなと、やはり思います。