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比翼れんりさんのEスクールライフの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
Eスクールライフ
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
75
参照数
344

一言コメント

私達は手を取り合ってチャンスを掛け合わせよう 始まりは何度だって

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

学園ものには定評のあるHOOKの前作IxSHE Tellに続く本作。前作のようなフルスロットルの勢いはかなり軽減され、わりと大人しい構成になっていました。良くも悪くもキャラクターとのコメディタッチの掛け合いが持ち味でしたが、それをある程度残しているように思いました。スクールライフと言うように、学園が出会いの場で、そこからヒロインとイベントを重ねることで好感度を上げる、王道も王道のスタイルで、下手な冒険をせず、シンプルな展開を見せたことは、さすが実績を重ねているだけはあるように感じましたね。

瑛美は幼なじみで、シェアハウスすることになるヒロイン。後輩であり、時おり妹であり、アクセル全開ながら、たまにわたわたするキャラクターがストライク。付き合い始める前もかわいかったですが、恋人になって以降はさらに磨きがかかりました。ひとつの山場であった、同じくシェアハウスする実兄(主人公からは親友)にどう関係を打ち明け、距離を作るのかが、かなり初期の段階でクリアされ、それ以降ただのいちゃラブがエンドレスで繰り返されるだけになりました。だらだら引きづらなかったのは正解でしょうが、彼女ならではの設定がそれほどストーリーに直接絡むことはなく、最終的な二人だけで半ば同棲になることについてが、強いて言うならば大きなポイント。それも理解ある互いの両親のおかげで無駄なシリアスもなくエンディングまで流れ、キャラゲーとしてはやることはやった印象。

先輩のメインヒロイン美里。とにかく突っ走るタイプで、かき回しまくります。それでいて常識も備え、引き際の見極めや家族を大事にする姿勢もあり、そこまで嫌いになれないのが長所なのかもしれません。というか、ぐいぐい引っ張るキャラクターがとても好きになっていく、そんなヒロインに思いました。ストーリーはエンディングからもわかるように、美里が純粋に学園生活を楽しみながら、恋愛も全力で向き合い、卒業していくもので、いちばんコンセプトにはハマっていたのではないかなと思います。終始テンションが低くなるシーンはなく、時おりアンニュイな表情になる美里もいますが、基本スタンス、自分で元気を取り戻すのが印象的で、あれ主人公の役割はそんなに無いのでは?とさえ思うほどでした。初体験以降、エッチシーンでマウントを取る美里ですが、逆に膝枕で甘えるカットで恥ずかしがるのがツボでした。

望愛は同級生枠。クラス委員長で図書委員で世話焼きというとてもいい子。特に彼女らに関しては、いち異性の同級生から学園での日常を通して恋心が芽生え、告白未遂からの仕切り直しでの屋上シーンと、ツボを押さえた展開が良かったですね。付き合いはじめても、最初は周囲にはバラさず、秘密にしていくのが甘酸っぱくて僕は好き。あまり、まわりが囃し立てることもなく、日常の1コマに溶け込んでいる恋愛模様もシンプルで良かったです。 ストーリーとして、望愛と主人公それぞれの両親への挨拶というか紹介が、事故っぽい演出で済まされてしまっていて、それならばそれはいらなかったのでは?と思いました。さらに後半の急なバイト強要からの将来を見据えた展開は、まったりした空気が淀む原因に見え、エピローグもしあわせな未来なのでしょうが、取って付けたように感じてしまいました。

もう1人同級生で登場するのが莉佳子。他ルートではほとんど登場もないので、好かないタイプのヒロインかなと思いましたが、関わっていくとデレがわりとあるなという印象。隠し事なしのストレートさも魅力なのかなと思います。女子力が無いわけでもなく、成長していく側面も感じ取れますので、いちヒロインとしては好きになれた感じです。そして個別ストーリー、そのメインを占めるのはやはり陸上になりますね。仲を深めるのも陸上部に顔を出してからですし、後半からエピローグも陸上漬け。主人公との恋愛で陸上とのパワーバランスが崩れかけるけれど、それも主人公の支えでV字回復するという終盤がありますが、それほど見せ場でもなく、非常に淡々としたルートに見えました。良くも悪くも陸上のために、デートシーンのバリエーションが少なく映ったので、シナリオをどう配分していくかは難しいところだなと思いました。

サブヒロインが充実しているのもこのブランドの特長。純粋後輩属性(兼お嬢様)としてキャラ立ちしている裕香は、黒服とセットで個別ルートも進みます。このまま黒服ルート入ってもおかしくないくらいに笑。裕香に関しては、お嬢様ならではの束縛と押し付けから解放され、恋を知っていく典型的な攻略スタイル。特に情報量の多い展開もなく、サブルートとしての収まりは良かったように思います。

凛は時おりHOOKに登場する、モブかと思ったらサブヒロイン。クラス的には髪を上げるとかなりかわいいというのもお約束ですね。男が苦手とのことですが、それもルートに入ってから改善されていき、じわじわ良さが出てくるタイプかなと。ストーリーはだらだらっとしたもので、ぼやけたエンディングなので物足りなさは感じます。

こういう学園もので何故先生が攻略対象になるのか実はよくわからない。ですが恵梨奈は、年齢を下げさせるためによくあるドジ気質はそこまでなく、きちんと先生と生徒に線を引いているので、そこまで共通部分から不思議となかったのが幸い。立場があり秘匿の恋愛が、卒業と同時に次のステップに移ったエンディングは案外好きなカタチ。

ただ、全体的に気になるのは、もちろんひとつひとつのターニングポイントは押さえていると思うのですが、いわゆる大イベントの修学旅行や季節行事に重要度がほとんどなく、時の流れもかなり駆け足で一年間があっという間に過ぎてしまいます。距離が詰まっていく過程や、これも王道でしょうが、個々の季節イベントをいくらかは盛り込んで欲しかったなあと思います。