過去の記憶連れて未来へ行く 神と悪魔の物語
Navel15周年のひとつとして、デビュー作「SHUFFLE!」の世界を引き継いだ本作。続編というよりも、ワールドを共有した新作の立ち位置がふさわしいでしょうか。SHUFFLE!本編が同梱されていますが、未プレイのまま本作を始めましたので他の方より視点は少しずれるやもしれません。
まずは人界、魔界、神界の三世界が存在する設定をどう見るのか。少なくとも本作においては、蛇足まではいかないまでも、ひどく中途半端に感じました。主人公サイドが神界で人界に溶け入っていくのは導入として掴みはまずまずに思いました。ただヒロインがみな人間なのはもったいないですね。確かに各ルートで掘り下げるものはいくらかあるものの話が広がらず、大きな世界観のわりには、驚くほど小さなストーリーでした。メインヒロインに注目してもわひとりひとりにそこまで立ったキャラ付けがあるわけではなく、むしろ(中の人の影響もあるけど)リードやレニの方が魅力的に映りました。
珊瑚ルートが一応主になるストーリーでしょうか。珊瑚の神族や魔族を苦手という意識がキーポイントのように見えますが、そこまで重要だったかと言われるとそうでもない。そもそも人間以外のキャラクターの登場がほとんどなく、話が進展しないですね。理事長である母親がひとつターニングポイントになる人物ですが、ルート中盤からの山場で盛り上がるほどのパワーもなく、ラスボスというボスもおらず、フェードアウトするようにエンディングになりました。小さな場面やワードのひとつをとれば、派生しそうな部分もありましたが、過去を踏まえて未来に向かうというありふれた幕引きには、物足りなさがありました。
茨子は反対に人間が嫌いな人間。珊瑚との対比という意味ではおもしろいキャラクターだなと思いました。では、その理由がルートを肉付けできるだけのものかと言われると全くそんな気配はありません。終盤のシリアスは彼女の過去をベースにすると、回避できなかったものかもしれません。そうすると、キャラゲーとしてこのルートの良さが必然的に見つからず、ミステリアスぽさや感情の起伏が少ないキャラで終始通してもいないので、悪い意味ではブレてるように見えます。散々、将来が~といってたわりには、取って付けたようなエンディングで、最後までよくわからないルートに思いました。
みずきのキャラデザは刺さるのですが、もう少し精神年齢が高めに描かれると、なお良かったのにと思います。出自に関係があるにしろ、魔法少女はじめ、幼く設定しずきたかなと。個別ルートの彼女そのものの存在に関わるストーリーは、他のルートは色が異なり、謎のように扱われているのが特徴かなと思います。が、人間というカテゴリーは変わらず、急に現れた理由が、時間の転移というのは「あれ?」と感じます。ただそれでも現在と過去の繋がりや、それを踏まえたみずきの心情を表面にあぶり出す展開があれば上手く転びそうだったのですが、中盤から終盤の流れが形容しがたいほどお粗末。無理に悩ませるような要素はいらなかったなと残念に思います。
そうするとローズがキャラクターを総じて見るといちばん好きでしたね。核心を突くような言動や笑みの奥の心うちが読みにくいのが味のひとつだったように思います。ローズ自身がストーリーを転覆させるほどの存在ではなかったのは嬉しい限りで、純粋にキャラクターを楽しめる個別ルートでした。これはどのルートでもそうなのですが、明らかなバトル描写がまったくといっていいほどなく、本ルートでも平和的な解決になっています。確かに何もそこまでバトルにこだわる必要はないのですが、ルート後半の場面を転換させる演出としては、少なからずの"派手さ"があった方がよかったのではないでしょうか。散在するパーツはおもしろいものがあったのに、繋げる技量がないからか、全体的に停滞していると感じ得ません。(どのルートでも言えること)
いち作品と見れば、久しぶりに胸を張って言えるほど、絵だけのゲーム。ボリュームだけがすべてではないですが、スカスカなのも限度があります。SHUFFLE!関連で次作はepisode2だとか。さすがに本編の予習は必要かもしれませんが、シナリオにテコ入れはあるようですし、さすがに同じ轍を踏まないようにしてほしいですね。