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比翼れんりさんの黄昏のフォルクローレの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
黄昏のフォルクローレ
ブランド
Citrus
得点
71
参照数
336

一言コメント

手につかんだ勇気とほんの少しの愛がアバウトな色になって

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

Navelの新ブランドからのリリースとなる今作は、本家の流れを汲みつつ、ダークさを表に出したロープライス作品でした。企画シナリオに森崎さんでしたので、期待を持って臨むことができましたね。

シナリオの雑感としては、相変わらずテキストと独特さはありますが、世界観を形作ることと、雰囲気を持たせた展開が巧いなと思いました。人ならざるヒロインが、主人公を"食べる"ことで生きていくことに対して、葛藤し、それを乗り越えながら進んでいくのが、大まかな骨格ですが、設定という意味では、そこまでの新鮮さは感じませんでした。ただ、脇を固めるサブキャラがとても良く、特になぜ麦と月子に分岐ルートが無いのか疑問に思うほど、好きなキャラクターでした。

しかしそこは、1強メインヒロインの強さというか、そもそものストーリーがすぴか中心だったなという印象です。どうも同じ鈴平ひろ先生原画でお嬢様の白髪ヒロインという点で、あのヒロインを思い起こすところもありますが、そこはキャラクター性や言動ひとつとっても異なり、新しい感覚で受け止められたかなと思います。

ストーリーでは、一本道ですので、いくらか派生があってもおもしろかったなと思いました。もちろんバッドエンドや舞台裏はあるのですが、そうするとやはりサブヒロインルートがあってもいいなあと。メインストーリーは、どうしても生の対極に死が付いて回るものになりますが、それほどシリアスに感じさせないのは、サブヒロインのおかげだなと思いますので。結局立ち絵が存在するキャラを死なせることはなく、綺麗に収まった印象が強いのですが、悪い意味では世界観の掘り下げがもう少し欲しかったですね。あまりダラダラ長引かせても意味がないのかもしれませんけれど。あとは現代までエンディングを引っ張ったのは、賛否両論ありそうですね。個人的には、あくまでその年代だけで切って、ある程度の余韻を持たせた引きの方が、いい意味での"未完"だと思わせてくれる気がしました。

ブランドを分けたのが、今後もこういう方向性という意味なら、次も気になるなと思わせるほどには、好きな部分がいくつかあったように感じました。