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比翼れんりさんの金色ラブリッチェ -Golden Time-の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
金色ラブリッチェ -Golden Time-
ブランド
SAGA PLANETS
得点
73
参照数
607

一言コメント

猛ダッシュで Golden Route 見つけよう

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個人的には久々に大当たりしたSAGA PLANETS作品、金色ラブリッチェのファンディスクです。サガプラがFDを出すのは珍しいなと思いますが、本編の人気ぶりを見れば必然でしょうか。ただ、単にアフターストーリー集というわけではなく、作品の中心人物として活躍していたサブキャラにルートを与えたことですね。引き続きメインシナリオにさかき傘さんを起用しており、本編を補完する意味では続編に近いかもしれません。

絢華は本編でも理亜の正体を知る…というかそもそもマリア・ビショップのスタートを切らせた本人でもあるわけですが、その中枢に座る人物ながら、本編ではアナニーの人の印象しか残りませんでした。今作の個別ルートは、かなりマリアと絢華の関係性を補足するのに有意義なお話でした。理亜と絢華の出会いや絢華の役割に時間を割くのが本編では組み込めなかった部分であるのかなと思います。加えて絢華のキャラクター性を掘り下げる意味合いもありました。どうしてそういう性格なのか、貴族に固執するのか等。家の事情が絡む場面がありますが、シリアスに舵取りすることはなく、最後まで行ったのはよかったです。かなり攻めたエッチシーンも盛りだくさんですが、メリハリがあってそれもいいですね。ただルート読了後の感想はやっぱり尻しか残らないのだ。

ミナは妹的な立ち位置(というか妹なのだけれど)から主人公をビシバシ鍛えていたのが本編では印象的で、今作でも本人の個別ルート以外でも遺憾なくその強メイドぶりを発揮していました。彼女自身のルートとなると、シルヴィとの差別化が難しいところですが、それほど大きな問題にせず、単純に、妹ならではというべきか、幼さを武器にした恋愛面での気付き、そして成長を軸に展開されていたのがよかったですね。ミナを中心に物語は進み、サブがでしゃばりすぎずフォローする相関図もよかったです。ファンディスクの1昇格サブヒロインを、新たな爆弾を入れずにルートにしたのは、出来上がっている本編を崩さない意味でも大きかったかなと思います。関連して、原画さんの交代は残念ではありますが、立ち絵に関しては違和感はほとんどなくプレイできました。一枚絵になると、個性が出ているようにも見えますが、それもまた良さに感じます。

本編でのメインヒロインのアフターやサブヒロインのシーン回収がいくつかありますが、もうひとりピックアップしておくべきは理亜でしょうね。

本編とは違った道を進むことになる今作の理亜ルート。大筋から逸れた話に見えることから、IFストーリーと言っても間違いではないかもしれませんが、個人的には本編と今作、どちらが正解の話なのかはわかりません。それぞれの世界で起こりうる結末なのだろうと思います。本編の感想に残したように、「生」がすべてのハッピーエンドでもなく、「死」がすべてのバッドエンドもないと思っています。今作のエンディングは、とにかくエロゲ的エンディングの王道と言うべきか、困難を乗り越えた先の奇跡が終着点です。ひとつの終わりかたとしてはとても綺麗ですので、物語としてはアリだと思います。ただ、キャラクターの関係性や役割、話の繋ぎかたが秀逸な本編をベースにどこまで余韻に浸らせたかと問われれば、やはり本編のエンディングが個人的な「正解」に感じます。もちろん色んな捉え方があってよいとは思いますが。つまり、こういうタイプのアフターではないアナザーストーリーになったときに、対比されるのは宿命になってしまうのかなと。そういう意味では最も交差することの多かったシルヴィアと重なる部分が顕著で、今作では理亜がマリアを産んだことというのは、本編ではたどり着けなかった理想の結末なのかなと感じます。金のラブリッチェマークではなく、余った銀のラブリッチェマークを湖に投げ入れるラストは、本編を前提にすると、なかなかおもしろいなと思いますね。そんなラストのCGはストレートに良さを出ていました。コンプ後のEXTRAもさすが。

正直なところ、絢華にしろミナにしろ、そして理亜にしろ、ひとつの分岐としては、それぞれおもしろかったですが、あくまでも各々が欲した理想のエンディングを描いている印象です。もちろん世界観を含めて、キャラクターたちの存在感は健在で非常に楽しかったですが、それこそ「ゴールデンルート」を進んだのが今作という印象です。けれどもファンディスクなのだから、それでいいと思います。