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比翼れんりさんのSugar*Styleの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
Sugar*Style
ブランド
SMEE
得点
72
参照数
701

一言コメント

想い出よ あと少ししたら逢えますか そこにあの人はいるかな

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

SMEEならば安定したキャラゲーを提供してくれるブランドの筆頭ですが、今作はどうでしょうか。前からの特長でしたが、最近特に顕著だったギャグへの振り方が大きく出ているように思いました。このブランドの売りだった丁寧な対ヒロインとの出会いからのやり取りが幾分か薄れ、主人公の性格もあるのかもしれませんが、勢いで進む場面が目につきます。言動が気持ち悪いと思わせる部分がどうしても気になりますね。もちろん共通部分から、個別ストーリーを回収しながら好感度をあげたり、他のヒロインやサブキャラと絡みがないわけではないのですが、どうも内面に入っていかない感じで、まるで表面上だけの作業みたいです。心情描写は大まかな部分では、恋の芽生えから恋愛のステップを踏んでいく流れが見えますが、例えばあるひとつのイベントに対してどう気持ちが揺らいでいくのかが見えてきません。告白イベントも分岐点がなく、一本道な個別ルートはもったいないなと思わざるを得ません。

初楓は、真面目なのだけれど、ちょっと危なっかしいところもある部分が後日には好き。パン作りにのめり込むきっかけでもある、ひふみんの送別会イベントに取り組むルート終盤が唯一無二の見せ場。裏を返すとそれ以上に特徴あるストーリーがありません。実はかなりのむっつりさんなので、濡れ場が見せ場とも言えるのでしょうけれど。寮の料理番であり、母性溢れる部分も見え隠れしますが、それを踏まえたエッチシーンがあるだけで終わってしまった印象ですね。

真央はかわいい反面ウザさも孕んだヒロイン。ツンツンしてる共通部分が多かった反動か、個別ルートではこれでもか!というくらいにデレまくります。オンオフの切り替えもバチっとハマっており、非常に破壊力のあるキャラクターなのは間違いないでしょう。個人的にも4人の中では一番好きでした。ストーリーはイチャイチャがメインながら、保育士を目指す彼女らしいイベントやバックグラウンドが時おり見えて、キャラクターを生かすためにシンプルにまとまった印象です。家族の話がラストに出てきますが、そこまで掘り下げなかったのは、逆に良かったかもしれません。

晴はプレイ前はあまり気にならなかったのに、終わってみると良かったなと思うヒロイン。親の影響でテニスを~という設定から、最終的には選手ではなくインストラクターの道に進むわけですが、それなりに理解のある親で、そのあたりのシリアスがなかったのはさすがSMEE、わかってるなと思いました。晴のテニスでの"悪い癖"について、主人公のおかげで克服していく流れに繋がるベースストーリーは、方向性としては肌に合わなかったかなと感じましたが、恋愛面での成長という点ではそれが実感できる個別ルートかなと思います。

先輩キャラといいつつも、わりと好きなタイプのキャラクターだったかなめ。晴とは違って親のプレッシャーが出てきてしまうのが難点といえば難点ですが、火消しも速やかで最後まで尾を引くようなシリアスでなかったのは好評価。地味な伏線で最後まで和やかに進んだのはキャラゲーの醍醐味をストレートに感じました。当初はピアノで押すのかなと匂わせておきながら、イラストレーターに寄っていったのは、どこまで必要な設定なのかなと疑問でしたが。シンプルにキャラクターが生きたルートには思います。

コンプ後の読感では、やはり一番最初に書いたように、ギャグへの振れ幅が大きく、ネタの多さが気にかかります。ここ数作でも保っていたSMEEらしいバランスのウェイトが少し寄ってしまった印象です。前作はいい意味で各ヒロイン独立性のあるストーリーでしたが、今作は学園ものとして横の繋がりがあるストーリーでした。どちらが作品としていい設定というのはありませんが、切り口として前作より残念な設定には思います。各ヒロインの選択肢と役割の選択肢が別に存在するも、特に互いにリンクしていないのも気になります。どうしてもヒロインとの温度差を感じ得ません。

反対に、相変わらず高いクオリティだと思ったのは歌もの。特にOPはエンディングのようであって、実は力強い曲に思います。BGMや挿入歌など、どの場面でも抜群の相性でしたね。