運命線を焦がす粒子 力にして 風を切る痛みを勝利の熱に変える
ウグイスカグラの3作目は、過去2作と比較すると、王道の学園青春部活動ストーリーとなっていました。しかしながら、単純な熱血スポ根とはやはり一線を画しているわけで、下地にある暗さは隠しきれていないようにも見え、実はそれがこのブランドの特長なのかなと思います。
初心者同然のヒロインが経験者である主人公の元にやって来て、仲間たちとの練習や試合、時にぶつかり時に分かち合い頂点を目指す、という大まかなお話は、一時期様々な展開を見せ話題になった「あ◯かな」に通じるものがあります。創作のスポーツであるはずなのですが、あまり気にしたらダメなのでしょうね。
そんなこんなで紬、里亜、玻璃の3人と高みを目指して競技に取り組んでいくのが主題です。同じ部活動ながら第一、第二と対立関係があるのがバトルの構図としておもしろいですね。チーム戦であるので、キャラクターが豊富なのも同じ場面を作らせず効果的でした。と言いつつもキャラクターが合わないのがちらほらいたので、そこまで日常シーンに入れ込みできなかったのが、かなり痛いのですが。反対に試合になると、熱が入っていてそれも気になりませんでしたので、それは良かったです。試合の描写に関しては「あ◯かな」との比較がどうしても出てきてしまうのですが、もう少し演出がなんとかならなかったのかなと思います。せっかくの躍動感がイマイチ伝わってきませんでした。その分といったらなんなんですが、キャラクター心情描写が秀逸なのはさすが。メインヒロイン以外の散っていったライバルを含めて、合間に回顧シーンを随所盛り込むことが効果的になっていました。
メインストーリーはシナリオの大部分が共通ルートに取られていることからも、一本道でいいのでしょう。第二の決勝で勝利するところまでが確定されていますね。その先に進めるか否かで、各個別ルートに分岐するといった具合です。
個別ルートはそれぞれ短いながらも、各ヒロインや周りのキャラクターたちを掘り下げる意味では重要な部分を担っていて、もう少し尺があるとなお良かったかなと思います。
最終的に、話は数多のライバルたちを破り、優勝まで突っ走るのは規定路線なのかなと思いますが、どちらかというと結果よりも過程が重要なシナリオに見えます。ライターさんの過去作でもそうだったように。それでも今作は比較的"読みやすい"なという印象ら受けました。それは"先読み"でもあり、テキスト面でもあり。その分結果へのアプローチが所々弱く感じるのも確かで、特にストーリーの終盤がテンポ速かったですね。スピード感あるひとつの演出なのかもしれませんが。エピローグも嫌いではないだけに、もったいなく思いましたが、あえて読者に託しているのかなとも思います。
OPも良かったですね。歌詞も非常にリンクしていて、終盤に挿入されるのも効果的でした。歌が1曲だけなのは少し寂しいですが、エンドロールの演出は好きですね。
全体的に尖った部分はなく、入りやすい世界観でしたが、僕にはやはりどうもシナリオの相性は良くないようです。好きな部分があるのは確かですが、それが作品全体には広がらなかったのは残念。