Fight for save all people in this world
DMM系列の新ブランドとのことで、最初はよくある創作スポーツバトルもの(+異世界ファンタジー)だと思いました。
導入は既視感があるような、ないような、主人公の異世界転移ですね。お約束のヒロインとのハプニングエッチも盛り込みつつ、なんやかんやで魔法を使うバトル「レイヴ」の監督として、ヒロインたちと優勝を目指していくのが、おおまかな方向性です。途中、当初の世界の知識をフル活用しながら、徐々にまわりの信頼と理解を得ていくのが成長を感じさせますが、かなりテンポが速く、裏を返すとダイジェストのように進む場面もあり描写不足に感じるところもありました。ただ逆にスピード感は出ているのでこれはアリだと思いますけどね。初戦を突破した後に個別ルートに分岐します。
アズーリアは、おっとりしてるのかなと思えば、実は周りをよく見ているなと感じさせるヒロイン。彼女の防御寄りの魔法が、自身の葛藤を産むことになる展開は、描写としては上手いなと思いました。ストーリーは、婚約者がいるという設定をストレートに表現するもので、これもファンタジーもののお約束か、地位あるクズ貴族の妨害を華麗に交わしながら、レイヴを諦めることなく準優勝までこぎつけることになります。シンプルながら、アズーリア以外にも各ヒロインの持ち味を生かした展開が見られ、大きく話が広がることはなかったですが、素直に世界観には浸れたルートに思いました。
主人公の「無色の魔力」が周囲にバレて争奪戦になるのは、どのルートでも突入する展開ですが、特にミアルートで強く出ていたように思います。妹キャラの位置付けもあって、お兄様独占欲が色濃く出ており、アキナやアズーリアとの絡みもありますが「一番は私!」という気持ちは、このルートのミアが最強(いわゆるひとつの伏線)に思いました。ブリットアニアとの準決勝もリリリと主人公をかけたバトルにシフトしていき、全体的にこのルートならではのオチはないように感じます。けれども下手に新たな要素を入れなかったからか、恋文大会のようにボケをかますだけのイベントもあり、個人的にはこういうネタっぽさで固まったルートのひとつは、あってもいいのではないかなと思います。
ユズリハルートは少し毛色が違います。彼女自身の"謎"であった、出世の秘密や魔族のことなどが中心に展開されます。通常はダイジェストのようになってしまったミズガルズ戦はレイヴとしては描かれない代わりに、レイヴ外での戦闘シーンが目立つのも異質な点でしょうね。勘違いが至るところに散っているように思いますが、根底にあるのはクレハの私怨。これがラストバトルに繋がります。試合ではない実践が描かれるのは、この段階ではユズリハにまつわるこのお話だけで、単調になりつつある(異世界においての)日常シーンを緊張感をもったものにさせていた印象です。このルートでは後日談も少し異なり、レイヴを棄権した反動で、翌年まで飛びます。唯一の妊娠エンディングでもあり、家族を欲していたユズリハにはふさわしいなと思います。
アキナが4人の中ではメインヒロイン感が出てますね。ツンツンしてたのがデレデレしていく過程が楽しいです。個別ルートでは、主に2つの山があり、恋に気付くまでのスランプ、そして実家で気付かされる真の闘い方。前半のわりと平和なパートは「はよ、くっつけよ」的な気持ちでプレイできたのでよかったですね。後半、アキナ母が登場するところで、さらに一山。過去の戦争に関係するランドール家の矜持を保つために、アキナを成長させることが目的なのかなと思います。これは世界観だからか、貴族の親が"いい人"に描かれているのも、ひとつの個別ルートとしてはシリアスさがなく純粋なキャラゲーとして楽しめるように見えました。感情の浮き沈みのあるヒロインですが、やっぱり元気に飛び回るようなアキナがかわいいなと思わせるルートでした。
とまあ、ここまでのSORCERESS編までは前段。作品のスタートはここからと言ってもいいかもしれません。もちろん各ルートのエンディングを踏まえて、それぞれが意味のある話なのですが、ALIVE編をクリックすると、ほぼ平穏と言ってよい世界が豹変します。「反逆」というキーワードが個人的には好きで、確固たる信念がぶつかり合う描写は熱くなりますね。ここで「反逆者」として敵対することになるミアとユズリハ。ユズリハが魔女の落とし子だという可能性は前段で示されていましたが、ミアに関してはルートが平々凡々だっただけに虚をつかれた感じです。主人公はアキナ、アズーリアからのバッドエンドとミア、ユズリハからのバッドエンドを「未来視」し、本当に生まれ変わり、真相を知った上で最後の闘いに繋がっていくという流れ。ここで世界の全貌が分かってきて、おもしろく感じますね。
しかしながら、ロードがハーレムルートと言ってからは緊張感が急になくなりましたね。平行世界ではなく、連続した世界での転生が要因ではあるのですが、これが箸休めの時間なのかなと思うくらいコメディタッチになりました。熱い闘いの中の束の間のクールダウンといったところでしょうか。その中で前世を垣間見たり、縁を上書きしながら、打倒母法石に向かう展開はいいですね。みんなで力を合わせて、ひとつの目的を達成するために、というのが物事の大小はあれ好きです。ここで魔女?とも思われ敵対する格好になったミアによって、ひとつ選択肢が示されますが、ここで派生するノーマルエンドはオチとしてはアリなのだろうなとも思いました。
ただそこで結論を引き伸ばさず、突き進むのが物語としては正解なのもわかります。世界の格子が見えたところで、魔女の正体がわかってしまうのは致し方ないにしろ、正ヒロイン+サブヒロインで最後の敵に対峙するのは熱いです。ヒロインごとのエンディングにもなりますが、やはりTRUEエンドが、皆が救われたと言えるのでしょう。美由紀自身も母法石に狂わされた1人だと思いますが、この転生した未来こそが、世界のあるべき形なのかなと思います。ただユーミが好きな自分としては、赦されないとしてもユーミとしてエンディングを迎える選択肢があってもよかったなと思いました。
何度言っても、やはりALIVE編が始まる中盤以降の爆発力がこの作品そのもの。もちろん使い回される設定や展開があるのは否めませんが、適度な粗さと盛り上がり所を上手く配置した効果が相乗し、作品として「楽しかった」と思えました。次作も期待が持てそうな世界観ですし、このブランドには注目していきたいですね。