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比翼れんりさんのきゃらぶれーしょん! ~乙女は恋してキャラぶれる~の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
きゃらぶれーしょん! ~乙女は恋してキャラぶれる~
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
63
参照数
556

一言コメント

表裏反対にしても変わらない君が好きだよ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

傾向としては同ライターさんの「まほ×ろば」のような、ちょっとお馬鹿でエッチなラブコメディかなと思ってプレイしましたが、お馬鹿を通り越した、キャラクターが天井を突き抜けたような印象を常時受ける作品でした。ある意味では、タイトルどおりと言うべきなのでしょうけれどね。確かにキャラゲーで重要なヒロインたちの設定が、時折歪んだり、共通や個別の差異やルート間での"ブレ"は少なからずあるのは確かにそうですね。今作は逆手にそれをとって、表に出るキャラクターと裏の本質たるキャラクターがブレブレになるクセのあるヒロインたちと、女装メイドがなんやかんやを乗り越えていくお話です。

ま、設定からしてお腹いっぱいみたいなところがありますが、それなりに長めの共通と個別ルートの配分かなと思います。共通ルートは主人公が雪亜と出会って、ひょんなことからヒロインたちの寮"監獄"にメイドとしてやって来るところから始まります。男としての顔とヒロインたちとイベントもこなしつつで、問題を契機にしながら、個別ルートに分岐していきます。

雪亜が核たるヒロイン……というか、物語のスターターとなったヒロイン。できる姉(妹)の代わりに生徒会長を演じるわけで、これまたその代わりに主人公がメイドになる構図で、入れ替わり立ち替わりという具合で、途中からよくわからなくなりました(笑) そんなこんなで主人公の正体を知っているベースがあるからか、恋人になる流れは、自然に見えますね。美麗とセットで話が進むことが多いですが、美麗の振り切れぶりがまた重いですね。オチは美麗に代わって雪亜として生徒会長になる、のですが、そこまでのアプローチが疑問符。何故その流れになっていくの? 「台本」を破り捨てて、雪亜が雪亜らしく、成長したのはとても良かったと思うのですけれどね。

個人的には灰がタイトルの「きゃらぶれ」をいちばん反映してるのかなと思います。最も振れ幅が極端で分かりやすいのが理由かなと、個別ルートに入ってから特にそう感じました。六花のために自分を演じていた灰と、灰のために自分を演じていた六花の対比が、至極馴染んだのもあり、ルートとしての「きゃらぶれ」要素は抜群に見えました。中の人のキャスティングも大成功と言ってよく、振り切れた演技から大人しめな演技までこなす北見六花さんの良さが存分に出ていたと思います。ひとつ欠点なのは、ルート終盤の山場に、学園長に身バレするシリアスじみた展開が待っていますが、それがどうも合わない持って行き方かなと。最終的には灰のマンパワーで痛快なオチにはなるのですがね。

姫芽はネタになるヒロイン。灰のオモチャにされてますね(笑) 男装ヒロインと女装主人公というおもしろい組み合わせですが、話がそれほど複雑になることもなく「普通に」恋愛できているのでは、と思います。姫芽自身にスポットを当てていくルートは、わりと好感で、女の子らしい可愛さを引き出そうとする主人公視点も良かったように思います。ラストに持ってきたコンテストはありきたりで、他のルートでは触れられてすらいないのに、いきなり?と思わせるものですが、ストレートに個別ルートを総括するなら、こうするしかないのかなとも思います。おおかた姫芽の優勝でエピローグかなと思ったあとの、ユキがかっさらっていくオチが何気に好きで笑いました。

アリスに関しては、最初から最後まで合わないキャラクターでしたね。中の人は好きな方ですし、別にロリがダメなわけでもないのですが、言動の低年齢さがどうも肌に馴染みません。個別ルートは、エッチシーンをエッチシーンで繋ぎ、最後に微シリアスという具合。シーンについては、キャラクターを変えながらで、ある意味で「きゃらぶれ」らしく、バリエーション豊か。終盤の過保護な親も、目に見えた不穏因子ではなく、全般的にキャラゲーらしく、落ち着いたストーリーという感じです。裏を返すと、キャラクターに依存したルートであり、アリスが好かない自分からすれば、つまらないルートであったわけですが。

コロナは裏にあたる人格のあかりとセットで話が進みます。それぞれのキャラクターとのエッチがバリエーションを豊富にしている部分もあります。わりとネタと割りきるべき展開が多く、明るく楽しく騒いでいるのが特徴になるのでしょうかね。あまりストーリーがあるという印象は受けませんが、多重人格ヒロインの王道である、裏キャラクター(あかり)が消える展開が後半です。そこからエンディングまでが見せ場にはなるのでしょうが、ここもネタっぽさのあるルートらしく、ふわっとした解決。コロナ&あかり3Pを含めて、最後まで割りきる必要のある個別ルートに思いました。

トータルすると、そもそもクセのあるキャラクターが多いのは当然にして、ヒロインとして好きになれる子がいなかったのは、正直、点になりませんでしたね。女装もののわりには、強引さはそれほど感じず、そのあたりは好感が持てましたけれど。