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比翼れんりさんの抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?
ブランド
Qruppo
得点
74
参照数
766

一言コメント

So I'm still alive

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ふざけたタイトルでしたので、発売当初は完全なノーマークでした。「抜きゲー」とタイトルに入れてしまうあたりどうなのか?と思っていましたし、パロディてんこもりで大丈夫か?と心配になる部分もなんとなく感じていたのは事実です。蓋を開けてみると、アウトなんだけれどスレスレを行っているストーリーがなんとも痛快で、キャラクターひとりひとりが立った非抜きゲーでした。

常識が逆転した島が舞台。主人公とその妹アサちゃんが、愛のないセックスから逃れ、戦うお話です。途中仲間にビッチや貧乳、影の薄いのなどが加わり、徐々に逃げから戦いにシフトしていく展開がおもしろかったですね。

セックスはじめ、なんでもござれの世界観ですが、個別ルートの概念はあります。ヒナミは一応タイトルにある通りの貧乳ヒロイン。敵に立ち向かう展開はどのルートにもあれ、このルートでの肝は、実はヒナミではなく、礼なのでしょう。このふざけた島のシステムで、性によって生を得た者も居たわけです。生きるために身体を売るというのは、世界のひとつの暗黒面かもしれません。受け入れたくはないが、受け入れなくてはいけない葛藤の果てに、礼という人物が出来上がった回顧シーンを経ると、ヒナミを守ろうとした理由と綺麗につながり納得できます。ヒナミがパイプ椅子を携えていることが、ラストバトル前のヒナミと礼のCGと昔のエピソードともリンクし、あそこはグッと来ます。このルートはヒナミだけではなく、礼のためのルートだったのだろうと深く思います。

奈々瀬は3ヒロインの中ではいちばん好きでした。当初から主人公と行動を共にするというのもあるのか、非常に好感の持てるヒロインです。そのネタばらしが彼女の個別ルートにあるわけですが、主人公の過去とリンクしながら、恋人になって以降は、それほど設定としては活きてこなかったように感じました。もちろん、イチモツがでかいことが、その時から最後まで伏線のひとつだったのは、おもしろいと思いましたが。ビッチだけど実は処女なのも、主人公のためととらえれば、ヒロイン力はかなりあると見えます。この作品のカテゴライズをどうするかにもよると思いますが、個人的には純愛ゲーの側面もあると踏んでますので、公衆の前でのセックスはなかった方がよかったなと思います。奈々瀬自身と主人公にまつわる個別ルートになっていたのはそれでいいのですが、その分、文乃を中心としたメインストーリーが後半モヤモヤしてしまった印象があります。

美岬は影が薄い、デブなど叩かれまくるヒロインも珍しいなと思いますが、ルートに入ると主人公並みにキャラクターの良さがわかってきます。いい意味でのボケキャラなのかなと思います。他のルートでやはり存在感がない活躍の反動をくらっているのかもしれませんが。各ルートでは、SSの敵役がそれぞれ配されていますが、このルートでは郁子。いちばん得体のしれない強キャラの印象でしたが、実は根が良いというギャップが好感度を上げました。ボスが仁浦ではないというのがあるかもしれませんが、SSが味方につくという点は、敵味方関係なく力を合わせて戦うのが好きなので、いい描写だなと感じます。ただ、アホみたいな展開の連続で、主人公と美岬で無双の勝利になってしまうのはもったいないなと思います。しかしながら、このふざけた感じが嫌いになれないのはなんか悔しい。(褒めてます)

文乃が4人目のヒロインで物語の中心。どのルートでも少なからず関わりがありますが、やはり自身のルートになると存在感が増しますね。ベースには他3人のルートを用いているようで、各ルートで敵になったSSや手嶋、仁浦のボス戦が連続していくのが見物。案の定というべきか、ラスボスは防人老人で、その根底にあった恨みつらみが明かされていくので、TRUEルートの側面的にも充実していた印象です。最後の三つ巴の闘いに突入するまで、敵だったキャラたちが集合してくるのもわかってはいてもアツいですね。最終的な結末は、共存共栄を選んだものでした。主人公や文乃の過去を鑑みると、収まるところに収まったエンディングなのかなと思いました。

ネタかなと思っていましたが、案外シナリオの緩急がよく、ノリで乗り越えていく場面の展開でした。全体的な傾向は、好かない人には好かないかもしれませんが、ときおり来る爆発的なパンチ力は良かったですね。荒削りに感じるところもありましたが、想像以上に楽しめたなという印象です。