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比翼れんりさんのラズベリーキューブの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
ラズベリーキューブ
ブランド
まどそふと
得点
68
参照数
589

一言コメント

臆病と純情がケンカしてる 「キミのせいだ」って言ってみたい この心のヒミツ気付いてよ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

アニメ化にもなったワガママハイスペックに続くまどそふとの新作です。ワガハイで作品の傾向を異なったベクトルに導いたことで、個人的には良かったと思いましたが、以降の作品が気がかりでした。ただシナリオに近江谷さんですので、期待できる面と不安な面の混在したプレイ前の印象。結論は「悪くはない」でしょうか。

主人公がヒロインたちの中に飛び込んでいく、という王道も王道の出だしからスタートする共通。それ以降はマップ選択で好感度を稼いでルート分岐するスタイル。この場合、わかりやすい小イベントの重ねである反面、1対1のシナリオが多く、他のヒロインとの関わりが薄くなってしまうような感じもあります。これは各個別ルートに入ってもそうかなと思います。

瑠璃はオンオフのきいた子ですね。わかりやすいデレと冷静な生徒会長の顔を見せてくれます。あまり興味のわかない部類のヒロインでしたが、プレイ後の好感度は決して悪いものではありませんでした。個別ルートは主人公の暴力うんぬんの話と結びつけながら、懲悪するものですが、事実血が流れるような話にはならず、シリアスにブレーキをかけながら、幕を下ろしたのは正解でしたね。幾分か安っぽい展開になってしまいましたが、良くも悪くも瑠璃を中心にしたストーリーでしたので、このキャラクターが受け入れられるかが、ルートの評価に直結しそうです。

美琴のキャラクターは中の人の効果も絶大だと思いますが、随一の破壊力ですね。テンション高めでぐいぐい来る感じがありつつ、不快感を感じさせないのはさすがというべきでしょうか。設定のせいもありますが、美琴を中心にサブを含めてキャラクターがいろいろな方面に展開していくので、個別ルートの中では多様な絡みが見られたルートに思いました。ただアパートの存続や借金の問題、ヴァイオリンとこちらも争点が目まぐるしく変化し、逆に落としどころがなくなってしまったように見えました。キャラクターは良いけど話のピークがない、そんな印象です。

悠ちゃん隊長は戦前から予想どおりのヒロインで、かわいさだけは裏切らなかったです。悠のお店を通じて、だんだんと距離感が詰まっていく感じや恋人になってからのやり取りがかわいいことこの上ない。赤面悠ちゃんさん天使か。キャラクターだけは抜群のデレを見せる満足感があるものの、問題は悠パパが登場するあたりから。このキャラクターは必要悪なのかもしれないけれど、前提として合わなかったですね。ガスガンの事件を乗り越えて~の終盤も展開として嫌いではないですが、盛り上がるものではなく不発弾の印象。あくまでもお店を焦点に、下手なサブを入れずに、単なるいちゃラブに特化していれば個別ルートとしては十分だったのではと思いました。

みなとは畑に始まり畑に終わるヒロイン。本当に畑しか話がありません。年頃の後輩キャラというおいしい役どころながら、妹とのやり取りで乙女を加速させることもなく、本当に畑だけで話が構成されます。ある意味ストレートで潔いのですが、いいキャラクターなのだからもっと学生の恋愛日常を描いてほしかったなと思います。まあこれが彼女からするの部活動であり青春なのでしょうけれど。瑠璃ルートとの対比もありますが、後半のシリアスになりがちな傾向に蓋をしたのは印象的です。ただ悪く言えば話の頂点がなく、平々凡々としたルートに見えてしまいました。こういうタイプのヒロインは嫌いではないのが常なのですが、どうもストーリーに足を引っ張られて、言動の繰り返しがくどく、好感度が緩やかに下がってしまい、逆に珍しく思いました。

全体的に統一感はなく、独立した4つのストーリーというイメージです。ヒロイン間での関わり事もほとんど無いものと言ってよく、作品のテーマ性も過去作と比べて薄く思いました。(そもそもテーマなんてあるのか?) ヒロインのかわいさは前作から劣らずあると思いましたが、それをどう魅せるか、に関しては上手くハマらなかったのかなと感じます。シリアスに限らず「ヤマ」がなく、全体的に単調な印象が残りました。