赤らむ頬にひとつ舞い落ちる 白い羽根に命を繋いで
Laplacianの3作目は、また少し雰囲気の違った作品でした。前作がかなり異質ではあったものの、ベースがきちんとあったので、ある程度の流れは作りやすかった側面がありました。今作は、骨組みとなる世界観からの作り込みが重要に思いました。これは緒乃ワサビさんが他ブランドに参加した効果もあるのかもしれませんが、暗めのカラーを下地にしつつ、退廃的に見えていて、実はそうでもない絶妙なライン引きになっていると感じました。要は前段はかなり好みでしたので、あとはそこから。かぐやというヒロインをどうポイントにするか、主人公の運命をどうねじ曲げるのか。最初にエンディングが流れる所までは、少し描写が薄く思う部分とありましたが、導入としては上手く引き付けていたと思います。
最初のエンディング後は、主人公が助かり、かぐやは死んだ…との世界で、今作もここからの階段分岐。
メインストーリーではないのかなと思いますが、最初の分岐は水雪。Laplacianのお約束である、下ネタを全面にしたヒロインです。落ち込みそうな時に話を明るくさせる重要な役割を担う彼女も、義妹というテンプレは個別ルートで報われますね。馬鹿なことを言っても、やはり主人公を思う気持ちは誰にも負けていません。短めながらも、気持ちと向き合う機会を与えたのは良かったですね。このルートで、ちゃこんくんとオナリくんを忘れずに回収したのもスッキリ。
秋奈ルートは、自らも事故に合っているという当初の設定を意識したお話です。助かった秋奈の父親が短期記憶しか持てなくなってしまい、一人で決まりきった生活を送るところに、秋奈や主人公が関わっていく、というものです。主人公の記憶喪失ともリンクし、急ぎすぎないエンディングもいいと思いますが、生き残りは2人?や機器のメーカー?など伏線を残したままの閉幕であり、派生ルートに見えて、実は道半ばの話なのだろうなと感じました。
椿姫ルートが階段の終演。未来ラジオという作中のツールを生かすための伏線たるお話です。伊耶那にかかる回想などもありますが、明らかに尺がたらず、椿姫との過去やどういう経緯で「今」に繋がるのか、がどうしてもモヤモヤします。主人公と人工鳩の真実や、秋奈ルートのフラグも回収しているところは、さすがに及第点ですが、壮大な設定の種明かしの一端をこんな描写だけで、いいのかなと思いました。椿姫の人間らしい一面とあくまでも中継ぎという意味のルートというなら、エンディングにも価値があるとは思いますが。
3人のルート後に分岐するかぐやルート。例によってかぐやが生きるお話となります。それには主人公の犠牲があるにはあるのですが、かなり強引に持っていったなと如実に感じられます。時間が限られた中での、個別ルートということもありますが、メリハリを付けるのもかなり駆け足で、非常にもったいないです。最終的なオチも面白味は薄く、作品全体を使ったストーリーのわりには、どんどん尻すぼみなるように見えたエンディングです。
Laplacianは1作目からプレイしていますが、CG面は格段によくなっているように思います。シナリオも三者三様、毛色は違うものの、とてもおもしろい設定を作るなと思います。今作の世界観や雰囲気も非常に期待値の高まるものでしたが、1作目のような粗削りながらも読み手を引き込むようなストーリーでもなく、2作目のように史実をベースにしながらもあった創意工夫のポップさもなく、大きな世界を作ったわりには話が広がりませんでした。加えて共通も個別もストーリーは簡潔に、言い換えれば描写が極端なほど薄く、キャラクター間の意志疎通や関わり、過去の繋がりまでもがそうでした。水雪ルートあたりの突き抜けた感じ等おもしろい部分はもちろんありましたので、すべてそのテンションで、とまでは言いませんが、長所を残しつつの工夫は必要に思いました。