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比翼れんりさんのてんぷれっ!!の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
てんぷれっ!!
ブランド
CIRCUS
得点
63
参照数
960

一言コメント

二人の未来はお約束ハッピーエンド

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

サーカスのシリーズっぽいものではない、完全な新作です。作品を作る上でどうしてもついて回る「テンプレ」を逆手にとって、それをベースにしてしまうという、あるようでない、おもしろい切り口に思いました。

ストーリーはシンプルに、主人公のまわりにお約束の属性を持ったヒロインたちが集まり、部活動を通しながら恋愛をするという、本当に普通のお話です。

詩央は義妹になった女の子ですが、出会いから妹になるまでが、超特急の描写で逆に笑えてしまいます。わりとすんなりと受け入れてしまうのも含めて、あまり設定を掘り下げる気はないんだな、と思いました。キャラクターとしては、いちばん好きなのですが、幼少期の描写もほとんどなく、とりあえずの現状だけで、個別ルートは終わってしまいます。これは他のルートでもそうなのですけどね。

星七は幼なじみらしく、距離感の近いヒロインで、好感が持てます。少しベタベタな感じもありますが、世話焼きの性格を随所に生かしていたように思います。個別ルートに関しては、断トツにテーマが絞られていなく、花澤さくらさんのボイスに浸るくらいしか見せ場はありません。オチに天体観測を持ってきたり、エンディングで進路の話になったりで、それをもう少しストーリーに馴染むように持ってこられなかったのかなとは感じました。

未依の属性はメイドでお嬢様で、と、茉理とセットでストーリーも固められていたように思いました。細かい部分はやはり目をつむるにしても、個別ルートには変化を持たせようとしており、茉理エンディング分岐があることからも、他のルートと比べ、違いはあると感じます。テンプレのお嬢様の父親は、それほどシリアスに作用せず、無難ながらまとめた印象がありました。

凜音のキャラクターは、黒髪委員長系遥そらさんの、これでもか!というほどのテンプレヒロインですね。良くも悪くも「いつも通り」であり、逆に没個性に感じてしまうのが、残念といえば残念。学園でのキャラクターも立っていたように見えましたが、思った以上に学園での時間が割かれておらず、結局はストーリーに差異というのは、ルート間にはあまり感じられなかったように思いました。

いちおう4人のエンディング後に、ひとつルートが解放されますが、あまり強い意味のあるものではないように感じます。前作D.S.ほどとは言いませんが、不思議な世界を見せつつ、あまり回収しようという姿勢を出さないのは、このメーカーの方向性なのかもしれません。キャラクターは安定感があるだけに、シナリオの土台の弱さが、いまいち盛り上がりに欠ける要因なのでしょうか。そのあたりも鑑みて、今作のようにテーマを絞ったのは、逆に潔くて個人的には良かったのかなと思います。あくまで前作からの比較の話ではありますが。