凍えた夜も 雨の朝も この1秒のためにあったと
「春音アリス*グラム」の続き物でありますが、今作は続編という位置付けなのでしょうか。構成としては、各ヒロインのアフターストーリー、昇格ヒロイン梢の新規ルート、リリエト関連の新ストーリー、シェアワールドの旅行編、イフストーリーの異世界?編(兼ハーレムルート)であり、これだけ並べると充実のラインナップに見えます。が、中身がスカスカ。とりあえずいろいろやってみた感がありますね。
各ヒロインアフターと梢ルートに関しては無難な出来。各H2シーン程度なので、短すぎることもなく長すぎることもなく、キャラクターを生かす意味では、本編よりも良かったのかなと思います。シリアスや話が大それたものになることもほとんどないので、シンプルなのはいいことです。この本編ヒロインアフター&昇格ヒロインルートだけなら、ファンディスクとしても機能していたように見えますが………(もちろん価格帯は安価にする必要があるのだけれど)
リリエトは耶々アフターから永遠の白編の流れが真骨頂…………なんだろうと思いますが、これがいちばんの問題。先の続編としての位置付けなのかなと考えうる点に、永遠の白編があるのですが、これは明らかに未完成。創作において、ある程度の含みを持たせるような締めかたは、数多ありますが、これはそういうレベルではないように思います。何をしたいのかが全く理解できません。これでひとつの物語というなら、どれだけ高度な解釈力が求められているのか。作り手の自己満で終わってはいないのか、疑問でもあります。
シェアワールド自体を否定するわけではありませんし、ファンディスクならばそういう遊び心もいいと思います。引き続きのキャラもいましたので、こういうリンクを持たせるのは、世界観の広がりという面でもアリでしょう。ただ前作のヒロインを何故出してしまったのかが疑問。引き続きの声優さんがいればわからなくもないですが、声を当てられないキャラだけが登場しても、地の文だけで、会話を成立させなくてはならず、非常に違和感だらけです。これならば、無理にストーリー入れ込まず、キーワードだけでニヤっとさせるの十分なはずに思います。良かろうと思った話が足を引っ張っていました。
イフストーリーとしての異世界編は、切り口としてはおもしろいですが、主人公の突っ込みがあったにしろ、同一の背景の中でどれだけ独自ストーリーになっていたかは微妙なところ。RPGのテンプレを短くまとめた印象ですが、アホみたいな展開の連続で、これはひとつの形なのかなと思いますが、いろいろ中途半端。やるからには徹底的にイフの面を出しても良かったかなと感じました。
内容的には、フルプライス帯のそれではありません。無料アペンドで10個のシナリオが追加されるとかされないとか。開発室のトラブルがあったことを踏まえても、延期に延期を繰り返し、CGの使い回すところですので、きちんと配信されるのかも疑わしいです。コンシューマー版やWパック(完全版)などで、攻略ヒロインを増やしたり新規シナリオを入れたりとマイナーチェンジをしながら、今までも、そして今後も派生を見せそうですが、少なくとも今作を製品としてリリースするGOサインがよく出たなと思います。サブシナリオはアペンド等で補完されてもいいですが、続編という位置付けならば、今作は明らかに製作途中。体験版の形にすらなっていないのでは。ファンをファンとして見ていないファンディスクというならば、このタイミングでの発売も納得できるのですが……