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比翼れんりさんのメルキスの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
メルキス
ブランド
戯画
得点
69
参照数
1140

一言コメント

君以外の誰かとじゃ…I miss it 口づけて叶えてよ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

戯画のキスシリーズ最新作、なんだかチョコレートみたいなタイトルですね。

このシリーズでベースにあるのは、ヒロインとの出会いから段階を踏んでいきながら恋をするというもので、今作もテンプレのボーイミーツガールに加えて、仲の良い同級生、先輩、後輩とバリエーションあるラインナップとなっています。

実はSNS上の知り合いがリアルで転校してきた美少女だった!なんて現実ではあり得ないことを体言化するのが、ゲームの良いところ。ある程度の人となりがわかっているとはいえ、恋人になるまでのながれが少し短めに思うのは、他のルートとの兼ね合いもあるし仕方ないのかな。キャラクターとしては三代眞子さんらしい優等生すぎない優等生タイプで、とても好感の持てる感じです。ストーリーは、過去よりも未来に向いていて、主人公のために何かしてあげたいという彼女そのものを表した個別ルートに思いました。

いちばん好きなヒロインは楓でした。年上なんだけれども、あじ秋刀魚さんの絶妙な演技とキャラクターの良さ、キャラデザや控えめな胸と、すべてにおいて作中トップクラス(対抗できるのが陽菜子くらいしか)。思い出のある屋上が閉鎖されてしまう~というのが後半の山かと思いましたが、さらっと流されてしまい、そこは着眼点ではなく、やはり戯画らしい構成だなと感じます。ルートとしての盛り上がりには欠けます(このルートに限ったことではないけどね)が、楓に執心ともなれば、楽しめたひとつではあります。

ゆずは距離感の近い異性の友達。この「好き」が恋愛の意味に変わっていく様を楽しみに、ある意味これが王道のルートに見えます。キャラクターも明るく楽しく、料理というキーから体重を気にする、さりげなくも等身大の女の子の気持ちを描写しており、個人的にはよかったです。あまり過去を見せないのが、このシリーズのポリシーに思いますが、ゲームを通じて深めたであろう仲も気になり、そういった面も見たいなと感じました。

つづりは後輩キャラながら、実はそんなに好きじゃなかったヒロイン。理由は、と聞かれると難しいのですが、あまりモチベーションが上がりきりませんでしたね。アナログ気質というのがひとつあるのかもしれませんが、それはストーリーとしては上手く溶け込み、面と向かって気持ちを伝えるシンプルな恋愛模様となっていましたので、その点ではコンセプト通りのルートに思います。ちなみに主人公のサポートという面で服飾がもっと題材になるかと思いましたがそんなこともなく。

あまりシリーズとして括るのは意味がないのかもしれませんが、キスを題としているわりには、ターニングポイントとしてはそれほど機能していないように思え、過去作と比べても大きく違いがあるようにも思いません。これがこの系列の傾向と言うのであれば、確かにそうなのでしょうが、それであれば、例えば過去作品とのリンクを持たせてみるのもおもしろいように思います。