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比翼れんりさんの君とつながる恋フラグの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
君とつながる恋フラグ
ブランド
みらーじゅそふと
得点
53
参照数
1795

一言コメント

今日の偶然の出会いが 明日の運命的な恋かも

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「みらーじゅそふと」としての1作目です。原画については、他ブランドですが、すたじお緑茶でもお馴染みであった、るちえ先生とkakao先生という、安定感ある布陣。音楽についても、実績あるi.o.soundということで、目下の着眼点はシナリオ面ということになります。

タイトルにあるように、恋愛としての"フラグ"を立てるため、付喪神の桔梗が主人公のもとにやってくるところからスタートします。典型的なボーイミーツガールからのドタバタラブコメものであり、最後まで大きな特長はありません。

ヒロインのキャラクター性はキャスティングも合わせてよかったと思いますが、やはり主人公がネック。フラグをへし折って来ただけあり、ヒロインからの好意を土足で踏みにじったり、自分本意の言動が明らかに目立ちます。傾向としてある、不快な悪役はそれほど目につきませんでしたが、主人公がその役を担っているようにも見えます。

ストーリーはかなりコメディタッチに寄っているのかと思いきや、主人公中心にシリアス臭を漂わせており、余計なことをしなくていいのに、というのが正直なところです。この手の作品は、ヒロインを生かした純粋なキャラゲーでよいのです。そこに余計なストーリーや描写は不要に思います。それが主人公が主体的にストーリーを動かしたり、伏線を重ねた展開ならば、キャラクターを色々動かしたりしてもおもしろいですが、この方向性で作品を作るならば、明らかにシナリオが足を引っ張った格好に見えます。それでいて、イベントのシーンが地の文だけのダイジェストになっていたり、場面転換がモノローグ中心の説明で置き換えられていたり、とストーリーがぶつ切りの印象が強く、全体が酷く中途半端に思います。

各ヒロインと共通ルート。まず桔梗ですが、この作品のセンターヒロインです。キャラクターボイスは上原あおいさんで、妹キャラのイメージが強いですが、少し大人っぽさも感じ、なかなかよかったですね。だらけた感じがありつつも、家事をそつなくこなすキャラクターはおもしろいですが、ストーリーは2度の縁切りが山になります。結局はキスでハッピーエンドになる、同じことの繰り返しなのですが、そもそもの主人公の母親問題はここでは主になっておらず、この個別ルートの見せ場がどこだったか、僕にはわかりませんでした。

美咲は幼なじみということもあり、自然なやり取りはできていたように思います。個別ルートは、神社の娘ということもあり、お見合いが恋人になる上でのひとつの事象になります。しかし、そこからはkakao先生の原画だからか、濃いめのエッチシーンが中心で、エンディングに持ってきたのは、大したオジリナリティもない進路の話。あくまでメインはエッチシーンです。ただ、それがマイナスの側面を排除してくれたともいえ、4ヒロインの中ではいちばんよかったように思います。

中の人の効果もあるのか既視感漂う、同い年の妹ヒロイン悠香。うざかわの極地ともいえるキャラクターなので、ハマれば強さを感じるのだと思いますが、嫌いならば、それは共通ルートから無理そうです。個人的には、好きな部類なので、素直にキャラクターは楽しめました。ウィークポイントであるシナリオは、それほど我の強さはこのルートに限っては感じず、悠香のパワーで押しきった印象です。家族問題を掘り下げてシリアスに突撃しなかったのも正解でしょう。

汐織はクーデレを通り越して、かなり不器用なヒロインだからこそ、合わない人には徹底的に合わなそうな子です。キャラクター的には、個人的に好きなのでが、どうしても、病気持ちの設定が回り回ってバランスを悪くしてるように思います。主人公との馬の合わなさは共通からして顕著でしたが、人との関わり方が、苦手な者同士、話が綺麗に転がっていきません。喘息の発作を起こしても主人公は声を上げなかったり、意図せずにしても家族のことをお互いに悪く言ったり、ストーリーとして、汐織に関しては、非常に残念な部分が目立っています。本当にキャラクターはいいものがあるだけに、不運としか思えません。


おおかたの感想で、言いたいことは出尽くされてる部分がありますが、どうしてもメタ発言が目立ちすぎましたか。主人公の安定しない設定や感情を逆撫でするような言動の数々は、炎上商法を狙ってことなのでしょうか。仮にも看板を付け替えたわけではないでしょうし、新ブランドとしてのスタートとしては、明らかに印象が悪いです。せっかくのキャラクター(原画、声優)を、なぜ生かすようなシナリオにできなかったのでしょう。ライターさん個人の問題なのかはわかりませんが、需要に対して供給が明らかに見合っていません。ブランドとしての舵取りがどうなるのかはわかりませんが、シナリオ面で同じスタッフを今後も起用するのでは、正直厳しい感想がまた出そうです。