未来を照らしている 私の魔法…
はぴねすの発売が2005年だそうなので、15年近くの時を経て、ナンバリングタイトルが発表されました。完全新作との触れ込みでしたので、無印が未プレイでも手が伸ばせました。実際にやってみると、世界観や作品の方向性はリンクしているようですが、話は独立して読めるのかなと思いました。
「幸福」と引き合いに出される「不幸」にどう立ち向かっていくかが、大まかなストーリーの流れ。魔法モノがお得意のういんどみるブランドですが、今作は異世界ではなく現代の学園が舞台で、魔法が大人になると消えていくという設定ですね。あまり話の大勢に影響はないかもしれませんが、毎回少しずつ視点がずれるのがおもしろいです。
珍しく最初はルート固定で、攻略可能なのは花恋。物語の中枢になる人物であり、作品の大まかな骨組みを表した個別ルートであります。主人公との過去、珠州子との関係など、ベースの世界観が明かされるものですね。ボスが見えてしまうのもある程度想定の範疇なのかもしれせんが、あまり魔法でのバトルに熱が入っているわけではないかなと思います。小さな外堀から埋めていくのは、派手さはないものの、トラップとしては有能だったように見えます。ただ、珠州子の力で勝ったような印象は強く残り、確かに花恋と主人公のタッグが決定打にはなったのでしょうが、そもそもの瑞月の不幸が先延ばしになっているだけで、根本的に解決には至っておらず、一時的なエンディングなのかなと勘繰ってしまいます。しかしながら、花恋とのルートと考えれば、大きな困難もなく、無難にラストへ持っていったようにも思いました。
以降解放される3ヒロイン。まずは璃乃。作中ではいちばん好きなタイプです。幼なじみ…とまではいかないけれど、非常に距離感がいいですね。他ルートでも、存在感があり、よき理解者というか、作中では花恋以上に中心になるキャラクターかもしれません。個別ルートでは、シンプルに魔法の試合での勝利を目標に展開されます。主人公のワンドの伏線は残りましたが、璃乃のワンドに連なり、主人公との過去まで掘り下げがなされているのが、十分な出来に感じました。急転直下のようなイベントはなく、純粋に璃乃自身を楽しむのが正解かなと思いました。元々の性格もよかったですが、付き合い始めてからのデレがすさまじく、とてもよかったです。久しぶりに成瀬未亜さんが正ヒロインの作品をプレイしましたが、思った以上にキャラクターに馴染んでおり、期待以上の完成度でした。
楓子は遥そらさんの十八番かなと思うほどの黒髪大和撫子系。それでいて、冗談のわかるような、凝り固まっていないキャラクターが印象的で、ぷくっと頬をふくらませた顔がかわいいです。やはりというべきか、家である神社が個別ルートではキーになります。魔法を使えないという設定をどう使っていくのかが、見物かなと思いましたが、主人公とのバランスもあまり良いようには感じませんでした。ストーリーは、珠州子以外にも、呪いにみんなで立ち向かう構図が出来ていくのはおもしろいなと思いましたが、結局は二人での解決になってしまい消化不良は否めません。思った以上に、固定観念にとらわれない、いいキャラクター描写や設定だっただけに、オチがそれでいいのかな?と思ってしまいました。ひとつ作品の中では回収すべき展開だったのかもしれませんけれどね。
双子の妹のひとり熾月。メインヒロイン枠に入ってくるだけあって、意味深な行動が気になるキャラクターでした。個別ルートでは、母親のことを調べ、追いかける姿が印象的です。作中では、悪役なのか?とも思ったことがありましたが、このルートを進めながら、はじめて熾月というヒロインの形が見えたように思います。瑞月のためにと、ひとり先走った展開もありましたが、それも想う力が強すぎるせいなのかなと感じました。もちろんというべきか、主人公を想う描写も気合いが入っており、共通ルートや他の個別ルートではそこまで感じませんでしたが、じわじわと好きになっていけたことろもあります。その個別ルート肝心のストーリーは、端々で伏線迫っているようですが、回収しきるとまではいかず、含みが残っているように見えます。最終的に大団円にならないのは、このルートもそうなのかなと。
グランドルート。4ヒロインのルートをベースにしつつ、幸せな結末を探ります。伏線回収はある程度されていましたが、ここに来てさらに回収が進み、一通り綺麗に繋がった印象です。真白がキーパーソンなのは明らかなのですが、まさかそうオチがつくとはねえ… 元々近親相姦バンザイのストーリーですので、瑞月のシーン回収含め、みんな平等に、の精神は最後まであったのかなと思います。エンディングとしては、万事解決とまではいかないようですが、ひとつの決着はついているので、長い目で見れば作中に登場する誰も不幸にはならなかったと言えるのでしょう。
"はぴねす"のタイトル通り、明らかな敵はおらず、そこまでのシリアスはありません。存在意義が薄かったり、出番が少なくなりがちなキャラクターもいましたが、要所では比較的立っていると思いました。ういんどみるの十八番である魔法モノですが、前作の二の舞になることなく、原点回帰を図ったテーマと構成がハマった作品に思いました。